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抗がん剤は必要ですか

[管理番号:603]
性別:女性
年齢:42歳
4月に右乳房に2個の腫瘍見つかり、扇状部分切除(センチネルリンパ節生検は陰性)しました。
現在、放射線治療中(25回の予定)で、主治医からは放射線治療後、抗がん剤タキソテール6回とホルモン治療をすすめられております。
出来れば抗がん剤はしたくないと相談したところ、私の年齢とki-67 が50%と高いことから抗がん剤するべきと。どうするべきか悩んでおります。
先生からアドバイス頂きたくメール致しました。
以下病理結果です。(二個の腫瘍なので①と②)
①肉眼的には8×5mm大、灰白色調の不整腫瘍として認識できる。組織学的には腫大し
た楕円形~類円形、多角不整形の異型核、明瞭な核小体を持ち、弱好酸性の胞体を有
する腫瘍細胞が索状、小胞巣状を呈して浸潤性に増殖する硬癌の成分が主体。部分的
には不整菅状構造、癒合線菅形成を呈して浸潤性に増殖する乳頭線菅癌の成分も認め
る。Nuclear geadeは2(4=2+2)、組織学的異型度は2(6=4+2)。腫瘍細胞は周囲脂肪織
内に浸潤。D2-40の免疫染色にてリンパ菅侵略像が認められる。CD31では静脈侵略像
は認められない。
ER(+80%),PgR(+10%),AgR(+1%),FOXA1(+99%),GATA-3(+50%),HER2(2+),Ki67(50%)
②肉眼的に明瞭な病変として認識することは困難。組織学的には腫大した楕円形~類
円形、多角不整形の異型核、明瞭な核小体を持ち、弱好酸性の胞体を有する腫瘍細胞
が索状、小胞巣状を呈して浸潤性に増殖する硬癌を認める。Nuclear geadeは
2(4=2+2)、組織学的異型度は2(7=4+3)。腫瘍細胞は乳腺組織内に留まっている。
D2-40、CD31では脈菅侵略像は認められない。
ER(+80%),PgR(+20%),AgR(0%)),FOXA1(+90%)),GATA-3(+60%)),HER2(2+),Ki67(40%)
①②ともfish法にてher2遺伝子増幅なし(シグナル比1.5)
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 腫瘍径8mm, luminalB
 以前なら決して化学療法などしなかった筈です。
 Luminal A/Bの考え方が登場して「luminalBならば化学療法」という(頭の固い)意見なのだと思います。

回答

「抗癌剤をすべきか?」
⇒抗がん剤は不要と思います。
 そもそも8mmの腫瘍径 pT1b, pN0, luminal typeでは「かなりの低リスク」です。
 10年生存率は(無治療でも)95%あり、ホルモン療法単独で+1.0%, ここに化学療法
を加えても+0.6%に過ぎません。
○「抗癌剤をやるべきではない」とまではいいませんが、「出来れば抗がん剤はした
くないと相談」されてまで、行う必要はありません。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、早速お返事いただきありがとうございます。
主治医、最初に乳癌と診断されたブレストクリニックの先生、放射線の先生、乳腺専門の看護師 皆さんが「転移再発した場合、抗がん剤しなかったことを後悔しないか
「抗がん剤は転移再発後の治療で使用するよりも、予防として使用の方が効果がある
「今なら6回で済むけれど、遠隔転移した場合、エンドレスの抗がん剤治療になる」と言われ(もちろん皆さんが再発転移しないようにと言ってくださっているのは重々承知しております)ずっともやもやしていたものが初めて心にストンと落ちました。
ホルモン治療についても質問させて下さい。
ホルモン治療は必ずすべきでしょうか?ホルモン治療もしない場合、再発転移の確率はどのくらい上がるのでしょうか?
私の今後の治療は田澤先生ならどのような治療をされますか?
お忙しいところ何度も申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 pT1b(8mm), pN0, luminalBですね。

回答

「ホルモン治療は必ずすべきでしょうか?」
⇒「必ず」とは言いません。
 十分な低リスクなので、患者さん自身に「ホルモン療法ができない理由」があれば、無治療とします。
 ♯例えば妊娠・出産とか…  意外と、このケースは多いです。
 流石にハイリスクでは「勧めません」が。
 
「ホルモン治療もしない場合、再発転移の確率はどのくらい上がるのでしょうか?」
⇒10年生存率95%は「無治療の場合」です。
 ホルモン療法をすると生存率は「1%上昇」します。
 ただし、「生存に関係無い再発=リンパ節や骨など」のリスクは7%程度上がります。
 
「私の今後の治療は田澤先生ならどのような治療をされますか?」
⇒タモキシフェン(とりあえず5年)です。
 LH-RHagonistの併用はしません。(ハイリスクでも、35歳以下でもないからです)
 
 

 

質問者様から 【質問3 今後の治療、検診について】

田澤先生、先日は早々にお返事頂きありがとうございました。感謝申し上げます。
昨日 放射線治療(25回)終わり、主治医との今後の治療についての診療がありました。抗がん剤(タキソテール6回)は受けずホルモン治療になりましたが、注射LH-RHagonistの併用は必須と。閉経前でかつ抗がん剤も拒否しているのに、タモキシフェンだけではリスクが高すぎで絶対にだめと。
抗がん剤を拒否していることもあり(主治医の先生との関係を悪くしたくもなく)、注射LH-Rhagonistは受け入れざるを得ないのでしょうか?不必要な治療は受けたくないのですが、LH-RHagonistはメリットになりますでしょうか?
あと今後の検診についてのお話がありました。
来週第一回目のLH-RHagonistを手術を受けた病院(国立の総合病院)で行い、その後は別のブレストクリニックで二回目以降のLH-RHagonistとホルモン治療、血液検査、マンモグラフィを定期的に受け、1年後に手術を受けた病院でCT検査とのことです(1年後以降のことは聞いておりません)
私としては、手術した病院で継続して診て頂きたいと思っておりましたが、病院のご事情もありかと思いますので無理は言えず。。
田澤先生であれば、今後の検診はどのようにされますか? 血液検査、マンモグラフィ、超音波、CTなど、どのくらいの頻度で受けるべきなのでしょうか?
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 pT1b(8mm), pN0, luminalB
 十分な早期乳癌です。
「閉経前でかつ抗がん剤も拒否しているのに、タモキシフェンだけではリスクが高すぎで絶対にだめ」というコメントの意味が不明です。

回答

「注射LH-Rhagonistは受け入れざるを得ないのでしょうか?」
⇒不要です。
 SOFT試験では「タモキシフェンに上乗せ効果はない」事が解っています。
 ♯「35歳以下」「化学療法を選択する群」は別(質問者はどちらにも該当しない)
 
「LH-RHagonistはメリットになりますでしょうか?」
⇒メリットになりません。
 SOFT試験の結果を見れば一目瞭然です。
 
「1年後に手術を受けた病院でCT検査」
⇒不要です。
 
「pT1b(8mm), pN0, luminalB」という早期乳癌でCTを定期で撮影する意味など全くありません。
 担当医は「乳癌術後の方全員に毎年CTを撮影しているのでしょうか?」
 無駄な被爆、無駄な医療費…
 
「血液検査、マンモグラフィ、超音波、CTなど、どのくらいの頻度で受けるべきなのでしょうか?」
⇒血液検査、超音波:3カ月毎(タモキシフェンの処方にあわせて)
 マンモグラフィー:1年毎
 
 CTは不要(被爆させるだけで、全く無用の検査)です。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生、いつもありがとうございます。
先週金曜日よりホルモン治療が始まりました。
診察の際に、SOFT試験の結果で閉経前のホルモン治療ではLH-RHagonistの上乗せ効果
ないので必要ないのではと相談したところ、私の場合はやはりki67が50%で本来なら
抗がん剤必要→つまり化学療法必要なハイリスクの人にはLH-RHagonistの効果がある
と。有無を言わせず第一回目のLH-RHagonistを受けることになりました。
第二回目以降は別のブレストクリニックに転院になります。再度相談してみようと
思っております。。
そして腫瘍が小さいので初期でハイリスクと思っていなかったと伝えたところ、腫瘍
の大きさよりも腫瘍の性質(ki67が50%であることも含め)の方が重要で、血液や骨に
微小な癌細胞がある可能性が高くなると。
これは私の病理検査の「D2-40の免疫染色にてリンパ菅侵略像が認められる。」とい
うことでしょうか?
金曜日からタスオミンを飲み始めました。
ジェネリックで特に問題ないですか?
まだ始まったばかりなので、今のところホルモン治療の副作用(更年期の症状)はあり
ません。個人差あるかと思いますが、一般的にはホルモン治療始まって、いつ頃から
副作用の症状が出るものですか?
お忙しいところ恐れ入りますが教えて頂きたくよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 pT1b(8mm), pN0, luminalBを『化学療法必要なハイリスクの人』に含めるとされて、LH-RHagonist行ったのですね。

回答

「腫瘍の大きさよりも腫瘍の性質(ki67が50%であることも含め)の方が重要で、血液
や骨に微小な癌細胞がある可能性が高くなると」
⇒この考え方には反対です。
 腫瘍径が小さいことは「とても重要な事」なのです。
 
 以下に腫瘍径についての記載をNCCNのガイドラインから紹介します。
 『T1a およびT1b 腫瘍患者の予後は、HER2 が増幅または過剰発現している場合で
も、良好な場合が多い』として「HER2陽性やトリプルネガティブの場合でさえも化学
療法は必須ではない(考慮という記載にとどまっている)」となっている事を明記し
ておきます。
 
「リンパ菅侵略像が認められる」
⇒これは関係ありません。
 ただたんに、「たまたま微小リンパ管にガン細胞の像が顕微鏡で見えた」だけの話
です。
 
「ジェネリックで特に問題ないですか?」
⇒ジェネリックを選択する方は沢山いらっしゃいます。
 全く問題ありません。
 
「一般的にはホルモン治療始まって、いつ頃から副作用の症状が出るものですか?」
⇒副作用が強い人は2~3日で出ます。
 ただ、LH-RHagonistと併用なので、いずれ「いくらかは出る」可能性は高いと思い
ます。