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抗がん剤治療の必要性について

[管理番号:3907]
性別:女性
年齢:72歳
はじめまして。
72歳の母が乳癌を患っております。
私自身は臨床検査技師で、大学病院で超音波検査を担当しております。
多少の知識はありますが、やはりわからないことばかりです。
術後の抗がん剤治療の必要性について先生のご助言をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。
約2年前に同部位に違和感を自覚し、近医受診。
画像検査の結果、問題ないとのことで返されました。
毎年受けているMMG検診でもひっかからずに経過。
今年7月、同部位にしこりを自覚し、再度近医受診。
ABCの結果は良性
でしたが、触診硬く、年齢を考慮しても悪性否定できないため、大学病院紹介受診となりました。
画像検査上はMMG、USともに病変あまりはっきりせず、CNBの結果は悪性。
以下、病理検査結果です。
・免疫染色…E-cadherin陽性で、invasive ductal carcinomaと考える
・ホルモンレセプター…ER:Allred score = 5(PS) + 3 (IS) = 8 (TS) J- score 3b
 PgR:Allred score = 1(PS) + 3 (IS) = 4 (TS) J-score 2
・アンスラサイクリン系…HER2 = 0,MIB-1 index = 17%
 追加の画像検査として造影CT、MRI、骨シンチを施行。
結果、リンパ節転移なし、遠隔転移なしとの診断でした。
9月、胸筋温存全乳房切除術を受けました。
術中、センチネルリンパ節
生検1/2陽性で、腋窩郭清が追加となりました。
以下、手術標本の病理検査結果です。
Breast, R, radical mastectomy
Carcinoma of the right breast:
Location AB ca.=20×20×14mm,
Invasive ductal carcinoma,scirrhous carcinoma,
NSAS-BC’s nuclear grade=1,f,ly0,v0,surgical margin(see
description).
Skin
No invasion of carcinoma
Lymph node, R-axilla
Metastatic carcinoma, pN1a[0/14+(SN=1/2)=1/16] *浸潤部の最大径は3mm
脂肪組織に浸潤が目立つが、乳管内進展は目立ちません。
NSAS-BC分類では、核異形は中等度でscore 2,核分裂は6個未
満/10HPFsでscore 1で、NSAS-BC’s nuclear grade=1と考えます。
リンパ管侵襲、脈管侵襲ともに明らかなものはみとめません。
断端については、内側の水平断端において、きわめて近接している可能性を考えます。
経過観察をお願いいたします。
以上です。
【質問①】ルミナールAかBかを教えていただきたいです。
【質問②】術後の追加治療としてはホルモン剤のみでよいのか、それとも抗がん剤治療や放射線治療を追加した方がよいのかを教えていただきたいです。
 お忙しいところ恐縮ですが、ご助言をお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1c(20mm), pN1(1/16), pStage2A, luminalA
十分な早期乳癌です。
「【質問①】ルミナールAかBかを教えていただきたいです。」
⇒間違いなくルミナールAです。
 Ki67=17%、核グレード1(核分裂1)であれば、「全く文句無しのルミ
ナールA」です。
 仮に「Oncotype DXを受ける」と、「low risk」となる可能性が高い(high riskと
なる可能性は殆ど無い=抗ガン剤の上乗せなし)となります。
「【質問②】術後の追加治療としてはホルモン剤のみでよいのか、それとも抗がん剤治療や放射線治療を追加した方がよいのか」
⇒ホルモン療法のみです。
 ○化学療法の適応:ルミナールAなので「全く不要」です。 ♯化学療法による上乗せは「殆どなし」と予想されます。
 ○放射線の適応:リンパ節転移4個以上ならありますが、「1個なので不要」です。
   ♯もしかして病理のコメントの「断端については、内側の水平断端において、きわめて近接している可能性を考えます」を気にしているのかもしれませんが…
     全摘なので心配ありません(執刀医に確認してみてください)