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抗がん剤治療を行う事の意味

[管理番号:1068]
性別:女性
年齢:59歳
母59歳が乳がんとなり、7月に温存手術をしました。
腫瘍径23ミリ
リンパ節転移2~3個(リンパ節郭清レベル1~2)
ホルモン強陽性
HER2陰性
グレード3、ki67 30%以上
である事からルミナールbと言われ、抗がん剤治療も行う事になりました。
術後直ぐからアロマターゼ阻害剤を服用、現在母の希望で放射線治療を先に行っています。その後抗がん剤治療を半年行います。
母は抗がん剤治療にとてもストレスを感じているらしく、脱毛や副作用が恐ろしく、やりたくないと落ち込んでいます。
母の癌の状態から、抗がん剤治療をした場合としなかった場合の予後や生存率等はどれくらいなのでしょうか。
私も母に長生きしてほしい一心で抗がん剤治療を受けるべきだと強く言いましたが、母は糖尿病や以前に脳梗塞等を患っており、あまり体力もありません。
抗がん剤治療をする事で予後が悪くなるような事はないでしょうか。
主治医が半年の抗がん剤治療を選択されたのには意味があるのだと思いますが、このタイプや悪性度の高さや現在の母の状態からやはり転移再発は高リスクで、抗がん剤をするべきですか?
やるからには完治を望みたいのですが、無謀ですか?
不安でたまらず質問させて頂きました。
先生がお使いのアジュバントオンラインでも個人的に調べてみようと試みたのですが、断念してしまいました。
お時間がありましたらどうかお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 pT2(23mm), pN1, luminalBですね。
 抗がん剤は推奨されますが、「6ヵ月の治療=アンスラタキサン」が必要かという点に疑問があります。
 私であれば、「TC療法=3カ月間の治療」を選択します。(おそらく担当医はグレード3という点でアンスラタキサンを勧めていると思いますが…)
 副作用の点では大分いいとは思います。

回答

「母の癌の状態から、抗がん剤治療をした場合としなかった場合の予後や生存率等はどれくらいなのでしょうか」
⇒再発率 抗がん剤をした場合26.9% しない場合38.7%(抗がん剤による上乗せ効果は11.8%)
 10年生存率 抗がん剤をした場合70% しない場合61.2% (ここで再発しないのに生存していない数値となるのは10年後には他病死6.2%があるからです)
 
「抗がん剤治療をする事で予後が悪くなるような事はないでしょうか」
⇒大丈夫です。
 そんな事はありません。
 術後の補助化学療法は、「基礎疾患がある」方にも安全に行えます。
 
「このタイプや悪性度の高さや現在の母の状態からやはり転移再発は高リスクで、抗がん剤をするべきですか?」
⇒特に高リスクとは思いませんが、上術したように、化学療法による「上乗せ効果が11.8%」あるので抗がん剤すべきでしょう。
 
「やるからには完治を望みたいのですが、無謀ですか?」
⇒当然、狙います。
 根治を狙うからこその抗がん剤なのです。
 抗がん剤をすれば「4人の内3人は再発しない」という数字です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先生、お忙しい中ありがとうございました。
基礎疾患があっても抗がん剤治療は可能で安心しました。
母はホルモン90%以上陽性なのですが、先生に教えて頂いた
⇒再発率 抗がん剤をした場合26.9% しない場合38.7%(抗がん剤による上乗せ効果は
11.8%)
10年生存率 抗がん剤をした場合70% しない場合61.2% (ここで再発しないのに生
存していない数値となるのは10年後には他病死6.2%があるからです)
との事ですが、ホルモン治療でさらに上乗せになる事はないのでしょうか?
ホルモン治療は5年で終了との事ですが、10年に延長してもらいたいと思うのですが
あまり変わらないのでしょうか。
また、トリプルネガティブは術後3年、ルミナールAタイプは晩期再発に気をつけろと
いう話を聞いた事がありますが、ルミナールBタイプはどれくらいの期間再発に気を
つけたら良いのでしょうか。
再び沢山質問してしまい申し訳ありません。
お時間ありましたらお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「ホルモン治療でさらに上乗せになる事はないのでしょうか?」
⇒前回の回答は「ホルモン療法を行った上での数値」です。(ホルモン療法をしなけ
れば、当然全体にもっと下がるのです)
 
「ホルモン治療は5年で終了との事ですが、10年に延長してもらいたいと思うのです
があまり変わらないのでしょうか」
⇒変わると思います。
 閉経前の「タモキシフェンで5年より10年」という結果が出た様に
 閉経後の「アロマターゼインヒビターも、おそらく5年より10年と言う結果になる
だろう」と思います。(現在、試験は進行中です)
 
「ルミナールBタイプはどれくらいの期間再発に気をつけたら良いのでしょうか」
⇒ルミナールタイプは、やはり「晩期再発に気をつけるべき」です。
 ホルモン療法の「長期投与が重要」なのは、まさにその点にあるのです。