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抗がん剤治療について

[管理番号:3035]
性別:女性
年齢:54歳
初めてご相談させていただきます
よろしくお願いします
私は昨年12月と今年の3月に乳がん検診(マンモと触診)を行いました
12月での結果は両胸に石灰化がみられるものの心配いりません、触診も同様の結果でした
3月の検診では、マンモは12月と同様でしたが、触診で腫瘍の疑いありで要精密検査と
言われましたその後エコー、生検を行い腫瘍1・5cm HER2+3との診断でした
5月(上旬)日に右全的手術をし、今日退院後初めての外来で、(下旬)日から抗がん剤の
治療を勧められました。
病理結果がでてからの抗がん剤治療開始と思っていましたので、
少々あせりましたが、早く治療にとりかかったほうがいいと先生に言われ、決断しました
治療内容につきましては、
EC3週に1度を4回
TC3週に1度を4回とハーセプチン
ハーセプチン3週に1度を12回
病理結果を待たず、早く治療にとりかかることについては、田澤先生も賛成ですか?
治療の内容は病院や先生によって違うとも聞きました
が、私の場合、病理結果には関係ないものでしょうか?
12月になにもなかったものが3月に1・5cmということはかなり進行の早いがんなのでしょうか?
治療内容については先生のご意見も同じでしょうか?
ご回答よろしくお願いいたします
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
HER2陽性であれば、「抗HER2療法は必須」となります。
①ただし、「浸潤径>5mm」の場合となるので本来「手術病理結果の確認」が必要となります。
②また「早期=低リスク」では「非アンスラサイクリンレジメン」が一般に使われるようになりました。
 (参考に)
 非アンスラサイクリンレジメン」
   ①パクリタキセルとハーセプチンを毎週投与(12回)⇒ハーセプチン単剤(14回)
     これは、スタンダードレジメンとは異なり「AC療法を行わない」やり方です。
     「最初の12回の毎週通院」は「通院は大変」ですが、「副作用は格段に楽」です。 
     その後のハーセプチン単剤には副作用はありません。
   ②ドセタキセル+エンドキサン+ハーセプチン(4回)⇒ハーセプチン単剤(14回)
     これは、「全て3週毎通院」となります。
      ①と比較すると「通院回数が少ない」ことが利点ですが、「副作用は①よりは、やや強い」と言えます。
      効果に関しては①との直接比較はありませんが、「パクリタキセル(毎週12回)=ドセタキセル(3週投毎投与4回)」と考えると②の方が「エンドキサン分」上乗せされると思います。
   ③ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチン(6回)⇒ハーセプチン単剤(12回)
     これも「全て3週毎通院」となります。
     カルボプラチンが唯一乳癌の適応を通る使い方です。
○質問者が提示されているような「ゴールデンスタンダード(アンスラサイクリンレジメン)」は(心毒性を嫌う欧米を中心として)避けられるように時代は推移しています。
 
「病理結果を待たず、早く治療にとりかかることについては、田澤先生も賛成ですか?」
⇒上記①及び②の理由から病理結果がでてからでいいでしょう。
 
「治療の内容は病院や先生によって違うとも聞きましたが、私の場合、病理結果には関係ないものでしょうか?」
⇒担当医は②を用いない主義なのかもしれませんね。
 それであれば、「病理結果にかかわずら」アンスラサイクリンレジメンとなるでしょう。
 
「12月になにもなかったものが3月に1・5cmということはかなり進行の早いがんなのでしょうか?」
⇒違います。
 「12月に何も無かった」とありますが、「超音波検査をしていない」ので単に「見逃された」可能性の方が高いでしょう。
  ♯超音波であれば「診断できた」可能性が高いです。
 
「治療内容については先生のご意見も同じでしょうか?」
⇒違います。
 病理結果を確認し「low risk」であれば「非アンスラサイクリンレジメン」を用います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

丁寧なご回答をありがとうございました
ひとつ、教えていただきたいのですが
病理結果を確認し「low risk」であれば、非アンスラサイクリンレジメンを用います
とありましたが、low risk とは、具体的にどのような
結果の場合がlow riskとなるのでしょうか?
私の場合はエコーで腫瘍1・5cm、her2+3までしかわかっていませんが
病理結果で、タイプ、波及度、グレード、センチネル、など、詳しく出た結果の
数字など、具体的な例を教えていただけたらお願いいたします
また、病理結果を待たず、治療開始について、手術においてなにか緊急な事態が発生したとは考えられますか?
私の病理結果がlow riskではなかった場合、今回の治療のメニューは推奨されますか?
よろしくお願いします
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「具体的にどのような結果の場合がlow riskとなるのでしょうか?」
「私の場合はエコーで腫瘍1・5cm、her2+3までしかわかっていませんが病理結果で、タイプ、波及度、グレード、センチネル、など、詳しく出た結果の数字など、具体的な例を教えていただけたらお願いいたします」
⇒「グレードや波及度などは無関係」です。
 あくまでも「リンパ節転移がない(少ない)」ことを基準にします。
 「センチネル」とありますが、「術中迅速診断は陰性だった」のですよね?(もしも陽性だったなら、その旨をお話されている筈です。そして追加郭清も)
 ○というように、考えると「ほぼlow risk」と考えられます。
 
「また、病理結果を待たず、治療開始について、手術においてなにか緊急な事態が発生したとは考えられますか?」
⇒考え過ぎです。
 乳癌の手術で「緊急な事態」などありません。
 
「私の病理結果がlow riskではなかった場合、今回の治療のメニューは推奨されますか?」
⇒そうなります。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

お世話になります
何度も質問、すみません
「センチネル」とありますが、「術中迅速診断は陰性だった」のですよね?
私はセンチネル検査の説明を受けて、手術に望みましたが、術後に聞かされたのは、術中迅速診断は設備がないので行っておらず、センチネル及びリンパの生検は術後病理検査の結果ではっきりすると言われました。
術中、見たところリンパは綺麗だったので心配ないと思うといわれました
病理結果の前に抗がん剤開始といわれたときに、病理の結果がher2 及びER PGRなど
術前の生検との誤差で内容が変わってくるのではないか?
内容が変わった場合、抗がん剤の内容も
変わることがあるのではないかと、主治医に質問したところ、Her2+3には間違いない。
Her2+3は術前に抗がん剤を先に始めるケースもあるくらい、進行が早いので、出来るだけ早く治療にとりかかったほうがよいといわれました
今心配なのは、病理結果を待って、センチネル他リンパが陽性だった場合、追加郭清手術となることもあるのでしょうか?また、結果を待たず抗がん剤を始めた場合は、抗がん剤が終了後、
追加郭清手術となる可能性があるのでしょうか?
よろしくお願いします
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「私はセンチネル検査の説明を受けて、手術に望みましたが、術後に聞かされたのは、術中迅速診断は設備がないので行っておらず、」
⇒術前と術後で「話が違う」ということになりそうです。
 術前には「敢えて詳しい話はせずに」(あたかも術中迅速病理診断でセンチネルリンパ節生検を行うかのような)曖昧な説明とし、術後に「実はうちには設備がないので迅速はしていない」と打ち明けられたような感じですね。
 
 ○センチネルリンパ節生検は「術中迅速」だからこそ「意味がある」ものです。
 本来の目的は『迅速診断で異常が無かった際に、(無用な)追加郭清を省略できる』ためなのです。
 
「センチネル及びリンパの生検は術後病理検査の結果ではっきりする」
⇒「センチネルリンパ節生検の結果、転移陽性の場合には追加郭清します」と術前にきちんと説明されていますか?
 
 「センチネルリンパ節」とは「追加郭清するのかどうか?」を決めるためのものだから、「それが後日に判明するのであれば、追加郭清も後日となる」わけです。
 
「今心配なのは、病理結果を待って、センチネル他リンパが陽性だった場合、追加郭清手術となることもあるのでしょうか?」
⇒それは事前に説明されてあるべきです。
 「そのために、センチネルリンパ節生検がある」のです。
 
「また、結果を待たず抗がん剤を始めた場合は、抗がん剤が終了後、追加郭清手術となる可能性があるのでしょうか?」
⇒担当医は(見た目で)「その可能性が低いと判断している」ようですが、「その可能性はある」と思います。
 
「Her2+3は術前に抗がん剤を先に始めるケースもあるくらい、進行が早いので、出来るだけ早く治療にとりかかったほうがよいといわれました」
⇒そんなことはありません。
 
 普通で大丈夫です。
 
「病理の結果がher2 及びER PGRなど術前の生検との誤差で内容が変わってくるのではないか?」
⇒サブタイプ(ER, PgR, HER2)は殆ど変わらないでしょう。
○ 但し、「浸潤径」や「リンパ節の状況」によって「抗HER2療法」のメニューを考えるべきと思います。(ゴールデンスタンダードであるアンスラサイクリンレジメンか、非アンスラサイクリンレジメンとするのかの選択)