Site Overlay

抗がん治療を受けるかどうかにつきまして

[管理番号:2806]
性別:女性
年齢:53歳
田澤先生
3月下旬日に乳がんで温存手術を受けた者です。
本日病理検査の結果が出て、下記の通りでした。
診断ー浸潤性乳管癌 (左・外側・下)
大きさー1.5 cm
しこりの数ー1つ
異型度ー2
ERー陽性90%
PgRー陽性70%
HER2ー陰性
ki67ー20%
リンパ節への転移なし
別の臓器への転移なし
今後の治療として、放射線療法を1ヶ月、ホルモン療法を5年から10年、これに先立ち、TC療法を3ヶ月行う方が良いのではと私の担当チームの先生が言っているとのことでした。
それは、ki67というものの数値
がボーダーであるからという理由でした。
最終的には自分で考えて決めて下さいとのことなのですが、素人の私には解らない事も多く、判断が付きかねます。
田澤先生は、上記のデータより、TC療法をお勧めなさいますでしょうか?
又、抗がん治療が必要かどうかを判断するのに、oncotypeDXという遺伝子検査があるがとの話がありましたが、これにつきまして先生はどのようにお考えになられますでしょうか。
全てが初めての事で、混乱してしまい、一生懸命聞きましたがよく解りませんでした。
どうぞよろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにには。田澤です。
pT1c(15mm), pN0, luminal, NG2, Ki67=20%ですね。
私であればKi67=20%は(定義上グレーゾーンですが)迷うことなく「ルミナールA」と判断します。
○ルミナールAであれば、(当然)化学療法はしません。
「TC療法を3ヶ月行う方が良いのではと私の担当チームの先生が言っている」「それは、ki67というものの数値がボーダーであるからという理由」
⇒(グレーゾーンとはいえ)Ki67=20%は(ボーダーではなく)「ルミナールA」と判断します。
 
「田澤先生は、上記のデータより、TC療法をお勧めなさいますでしょうか?」
⇒NewAdjuvant.comという統計データでは「化学療法の上乗せは僅か3%」となりま
す。
 私であれば(そもそもルミナールAと考えるし)化学療法は勧めません。
 
「抗がん治療が必要かどうかを判断するのに、oncotypeDXという遺伝子検査があるとの話がありましたが、これにつきまして先生はどのようにお考えになられますでしょうか。」
⇒どうしても臨床データからでは判断できない際に用いればいいと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
こんばんは。
今月上旬に管理番号2806で、先生に抗がん剤治療を受けるべきかどうかご相談させて頂いた者です。
先生から明確なご回答を頂き、心より感謝致しております。
貴重な質問コーナーで、この様に感謝の意を表すことをどうぞお許し下さい。
しかし、本当に先生のご回答で、心がすっきりと致しました。
結局術後の治療は、放射線(恐らく30回)とホルモン治療(ゾラデックス3ヶ月に1回+タモキシフェン20mg毎朝一錠を5年から10年)という事になりました。
主治医の先生に、詳しい病理検査データを頂きたかったのですが、その病院では患者には渡せないそうです。
先生にご質問をされていらっしゃる多くの方は、かなり詳細なデータを載せていらっしゃるので頂きたかったのですが、残念です。
これは、病院の方針という事なのでしょうか?
又、はっきりとステージ1aとかルミナールAとかそういった素人にも解りやすい診断名も聞けずじまいでした。
時間があまりない様な感じなのでそれもあるのかもしれませんが。
この間のデータより、私は「ステージ1a」で「ルミナールA」という診断でよろしいと田澤先生はお考えでしょうか?こんな事にこだわる必要もないのかもしれないのですが、
何故かすっきりしませんので、先生に仰って頂ければと思っております。
本当に先生のご回答や他の沢山の方のQ&Aで、沢山の事を学ばせて頂いております。
又、先生がご自分の貴重なお時間を使ってこの様なコーナーを開いていて下さり、心から感謝している毎日です。
私を含め多くの方に精神的安定や希望を、先生は毎日毎日与えて下さっているのです。
東京の方を向いては、頭を下げております。
これからも副作用の事などでお聞きしたいことがあるかもしれませんが、その際はどうぞよろしくお願い致します。
本当にどうも有り難うございました。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
化学療法の対象にはならないと思いますので、ホルモン療法単独となって良かったと思います。
ただし、53歳という「年齢」と「1期のローリスク」からすると、「LH-_RHagonistの適応はどうか?」というところですが、担当医は何故か「ハイリスクと判断したがっている」ようなので、そのような方針となっているのでしょう。
  ○LH-RHagonistの適応について
   SOFT試験
    ①35歳未満
    ②化学療法閉経となり月経が再開した群
   ASCOガイドライン(2016)
    ③ステージⅡ、Ⅲで化学療法が勧められる群
    ④ステージⅠ、Ⅱでも化学療法を考慮する様なハイリスク群
「この間のデータより、私は「ステージ1a」で「ルミナールA」という診断でよろしいと田澤先生はお考えでしょうか?」
⇒「pT1c(15mm), pN0, luminal, NG2, Ki67=20%」なので、その通りです。