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抗がん剤をどうするか

[管理番号:1719]
性別:女性
年齢:51歳
今 答えを出せずに悩んでいます。
先月上旬に片側を全摘しました
核グレード1 大きさ1.5㎝ ステージ2 AかBか迷うと
ころ(と言っておられました)
ER +  PgR +(やや弱い)
HER2 2+  FISH法 -  Ki-67 14.1%
センチネル生検で 転移あり 1本に1.5mm
腋窩リンパ節郭清 8本 転移なし でした
ホルモン療法(アリミディックス)を5年内服で
抗がん剤治療をどうするか 微妙なところなので、どうするか自分で決めるよう言われました。
先生の 過去のアドバイスを拝見すると やらなくてもいいのでは と思えますが 少しリンパに転移があったことと14%は微妙と医師の言葉
そして そもそもFISH法の検査の値も信憑性があるかどうか
との意見もあり 不安になりました。
先生の ご意見を伺いたくメールさせていただきました
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
質問者の直感は実に正しい
「抗がん剤はやらなくてもいい」と思います。
pT1c(15mm), pN1mic, pStage2A, luminal A
★「ステージ2AかBか迷う」とは何故でしょうか? どこにも「迷う要素はありません」が???

回答

「抗がん剤治療をどうするか 微妙なところ」
⇒「微妙なところ」など、全くありません。
 luminalAで「微小転移」のみですね。
 「luminalAで微小転移で抗がん剤を使う」など考えられません。
 
 St. Gallen 2015では「luminal Aでの抗がん剤の追加」とする条件は「リンパ節転移4個以上」が圧倒的多数を占めました(専門家によるvotingです)
 「リンパ節転移1~3個」では「抗がん剤はしない」が多数を占めているのです。
 
 ○リンパ節転移3個なら「迷っても当然」と思いますが、「微小転移」で迷うのでは「困ったもの」です。
  浸潤径「15mm」「核グレード1」であれば「上乗せは殆ど期待できない」と思います。
 
 
「14%は微妙と医師の言葉」
⇒14%を微妙とするのは「完全な誤り」と言えます。(3年前ならまだしも、現在の
基準においては)
 「Ki67をluminal typeのAとBに分ける」という考え方が生まれた最初の時代には「14%をcut off値」としていました。
 しかし、St. Gallen 2015では「明確な基準値を設けることは困難との結論」とは言え、『cut off値は20-29%の間にある』とする意見が最も多かったのです。
 「20%」ならば「微妙」と表現しても許容範囲と思いますが(私個人的には25%でいいと思っていますが…)「14%を微妙」というのは全く賛成できません。
 
「FISH法の検査の値も信憑性があるかどうかとの意見」
⇒正直、これは「かなり酷い」意見と言えます。
 FISHを信頼できないのであれば「何を信頼するのか?」という位、信頼性は高いです。
 「FISH結果と(抗HER2療法の)治療効果」は相関する事が証明されています。
○担当医はHER2 2+の75%は「FISH陰性」となる事実を知っているのでしょうか?
 また「核グレード1、Ki67 14%」より、当然「FISHは陰性だろうな」というような認識はあるのでしょうか?
 ♯核グレードやKi67の値からはFISH陽性だったら、かなり意外な結果と言えます。
○私には正直、担当医の「病状全体の把握に疑問」を持ちます。
「微小転移の取り扱」や「Ki67値の解釈」「FISH法の結果が病状全体と矛盾していない事実」
 どれ一つと言って、私は賛成できません。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

お忙しいところ お答えくださりありがとうございます。
先生のキッパリとしたお答えに霧が晴れたように
気持ちが決まったのに
再発すると 完治できないと聞き また不安に襲われ気持ちがゆらいでしまいます。
先生のおっしゃる 今はki-67が25%位とは
医学の進歩で 数値が上がったということでしょうか
リンパ節に少しでも転移が見られると すでにがん細胞が流れ出ている
可能性はありませんか?
私は 放射線治療をしていません (同時再建だったためか必要がなかったのか)が もし がん細胞が流れ出
ていても ホルモン療法で消滅させることが出来るのでしょうか
大変な誤解をしておりました FISHではなくki-67の値の信憑性でした
申し訳ありません。
再度の質問で申し訳ありませんが どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「今はki-67が25%位とは医学の進歩で 数値が上がったということでしょうか」
⇒違います。
 「Ki67という概念が最初に世に出た時点での暫定値が14%だった」というだけです。
 実際に検証がすすみ、その結果St.Gallen 2015では専門家のvoting結果で「20-30%位」が最も多かったのです。
 
「リンパ節に少しでも転移が見られると すでにがん細胞が流れ出ている可能性はありませんか?」
⇒「リンパ管を介する」リンパ行性転移と「血管を介する」血行性転移は全く無関係です。
 
「もし がん細胞が流れ出ていても ホルモン療法で消滅させることが出来るのでしょうか」
⇒ホルモン療法を行う事で「再発リスクは間違いなく減少」します。
 そのことが「質問に対する」答えです。