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抗がん剤治療の必要性について

[管理番号:4719]
性別:女性
年齢:62歳
はじめまして。
62歳の母の抗がん剤治療のことで、本人も大変不安に思っていますので急ぎご意見伺いたく質問投稿させていただきました。
人間ドックで乳がんと診断され、(ステージ0、石灰化がまばらに広がっており、一部浸潤があることから左乳房全摘出となりました。)全摘出後、リンパ節への転移もなかったとのことで、担当医2名から抗がん剤治療等の必要はない、よかったですね、と、こちらから聞く前に言われ安心していました。
ステージも0、ない、と。
ところが、病理診断の結果がもらえる予定日に、「診断に時間がかかっている、結果によってはホルモン療法の可能性もある」とのことで延期となり、その後あらためて結果がでた際には、術後に言われたことがなかったかのように、まず抗がん剤治療の話から始められました。
診断結果は
核グレード3、pN0、ER(-)、PqR(-)、
HER2(3+)、MIB-1(+.60%) 、浸潤径6㎜ pT1b、切除断端陰性
浸潤性乳管がんで、腫瘍の大部分は乳管内病変で左乳房の広範囲に広がり大型異形細胞が増殖し壊死を伴っている、繊維化を伴う間質浸潤成分も少量あり、一部は脂肪組織に浸潤している、とのこでした。
がんとしては早期であるものの、顔つきの悪い細胞があり、これにはホルモン療法は効かないので、将来がんになるかは分からないけれどもその可能性を防ぐために、まずはドセタキセルを使いその後ハーセプチンの抗がん剤治療を勧められました。
浸潤径が5㎜以下ならよかったとですが、と。
ステージ0というのに、今後のため、ということで本当に抗がん剤治療が必要なのでしょうか。
担当医はしなくても良いという感じもありつつ、協議を重ね病理学的にその方針でとなったようなのですが。
先生はどう思われますか?全摘出し、現在悪いところはないのに、強い薬で逆にからだを痛めつけるのではと副作用含めとても不安で心配です。
1㎜で抗がん剤を使う必要性が大きく違うのでしょうか。
長々申し訳ありませんが、ご意見お聞かせください。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(6mm), pN0, HER2タイプ
完璧な早期癌です。
本来は抗癌剤の話なんかしたくはないのですが…(という担当医の心の叫びが聞こえ
てきそうです)
NCCNのガイドライン
①浸潤径≦5mm 無治療
②5mm<浸潤径≦10mm 抗HER2療法を考慮する。
質問者は②となります。
(我々)「ガイドラインを順守を心がけている」乳腺外科医としては「抗HER2療法のお話をする」ことは必須となります。
ただし、あくまでも「考慮する」なので、(私であれば)『患者さん側が消極的ならば、無理に勧めることは絶対にありません。』
「浸潤径が5㎜以下ならよかったとですが、と。」
⇒上記①のことを言っています。
「ガイドラインにある以上…」という担当医の苦渋の現れです。
「ステージ0というのに、今後のため、ということで本当に抗がん剤治療が必要なのでしょうか。」
⇒ステージは1となります。(pT1b, pN0, pStage1)
ただ、(おっしゃるように)あまり必要性は感じません。
実際に②のケースでは「エビデンスがない」のです。
「1㎜で抗がん剤を使う必要性が大きく違うのでしょうか。」
⇒冒頭のガイドラインの通りです。
一応「お話ししなくてはならない」というレベルであり、(抗癌剤の使用に疑問があるのなら)「やる必要はありません」