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骨転移の検査について

[管理番号:1236]
性別:女性
年齢:30歳
いつも先生のQ&Aを読んで安心をもらいながら勉強させていただいています。
9月はじめに左乳がんの診断を受けて、現在手術待ちです。
画像上は3cm程度のしこりで、組織診断上はルミナールaのおとなしいタイプの癌だと
言われています。
乳がんがわかる少し前から乳がんがある左肋骨下当たりに違和感がありました。
(手を上に挙げると軽い筋肉痛のような感じ、その付近を押すと打ち身のような軽い
痛み)
しかし乳がんが発覚してからは、骨転移や肺転移の胸膜浸潤ではないかと心配してし
まいます。
最近では同じ左側の肋骨側面も押すと少し痛みます。
診断を受けて、主治医の先生に転移を心配していることを伝えてPET MRIの検査を入
れてもらいましたが、どこも問題ないとのことでした。
そこで質問なのですが、
・PETではある程度腫瘍が大きくならないとわからないと書いてあったのですが、
その程度の大きさで先に現在のような痛みだけ出現するようなことはありますか?
・骨転移はレントゲンでも骨が溶けてくればわかると書いてあったのですが、手術用
にとった胸のレントゲンは異常なしと言われました。
それは手術用なので骨の転移に注目してないため見逃されるということもあるので
しょうか?
・他に検査をしてもらった方がいいのでしょうか?
先生が他の質問で、この段階で骨転移していることは稀と書かれているのを見て安心
をもらっていますが、どうしても心配になって質問させていただきました。
お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
30歳と言う年齢での「乳癌」の診断、お気持ちお察しします。
かつては「かなり少ない年齢層」でしたが、最近では「低年齢化」を感じています。
「癌」と診断されると「いろいろな症状」が気になるものです。
♯この際、私の経験から、「初期治療の段階で遠隔転移は殆ど無い」という事はおい
ておくとして ( 実際、転移の可能性はほぼありません)
ただ、重要なことがあります。
骨転移は、「あくまでも血行性転移」であるということです。
つまり「腫瘍がある辺りの肋骨」が気になっているようですが、『万が一骨転移が起
こるとしても、それは腫瘍の部位とは全く無関係』なのです。
♯「乳癌が胸筋浸潤をして、更に、骨膜を超えて「肋骨へ直接浸潤する」などありえ
ません。
 「誰が見ても一目で乳癌と解る程の進行癌を(数年にもわたり、ご本人が隠しに隠
して)皮膚が潰瘍を起こし、更にそこから出血するような状況でさえも「肋骨への直
接浸潤は、そう簡単にはおこりません」
 質問者のケースで「肋骨浸潤」など全く考える必要はありません。
また、「肺転移の胸膜浸潤」とありますが、「原発性肺がんとは異なり」乳癌の肺転
移が「胸膜浸潤を起こす事は、まずありません」
胸膜播種をする場合は、「肺からではなく、胸膜への直接転移」となります。
「骨転移同様」部位は「乳癌の位置とは全く無関係」です。

回答

「骨転移や肺転移の胸膜浸潤ではないかと心配」
⇒ありえません。
 冒頭のコメントでおわかりいただけたでしょうか?
 「癌の部位」と「骨転移や胸膜播種の部位」は全く無関係なのです。(あくまでも
血行性転移なのです)
 ♯腫瘍からの「直接浸潤」など、全く考えられない話です。
 
「PETではある程度腫瘍が大きくならないとわからないと書いてあったのですが、そ
の程度の大きさで先に現在のような痛みだけ出現するようなことはありますか?」
⇒全くありえません。
 PETでは5mm以上あれば、大概は解ります。
 その意味で「5mmの転移」が症状を起こす事はありえません。
 ♯「骨転移」にしろ「肺転移」や「胸膜播種」にしろ、相当大きくならない限り
「症状などありません」
 PETで陰性なのに、「実は小さな骨転移があり、それが痛みなどの症状の原因と
なる」ことは「全くありません」
 
「手術用なので骨の転移に注目してないため見逃されるということもあるのでしょうか?」
⇒これも心配ありません。
 「肋骨転移」は(全身麻酔のための)「胸部レントゲン」でも十分すぎるくらいに
解ります。
 さらに言えば、「胸部レントゲンで所見がわかる」くらいなら、「PETで必ず所
見」があります。
 
「他に検査をしてもらった方がいいのでしょうか?」
⇒PETまでしていて、「異常無」なのに「これ以上の検査は全くの無駄」です。 い
たずらに「被爆線量」を浴びているだけの話です。
 
「先生が他の質問で、この段階で骨転移していることは稀と書かれているのを見て安
心をもらっていますが、どうしても心配」
⇒心配する必要はありません。
 私は膨大な経験量から言っているのです。
 あまり経験の無い医師は「もしかして、そういう事も否定できない」みたいな対応
となるため「無用な心配」を患者さんにさせがちです。
  
○いろいろ気になる気持ちは理解できますが、PETで異常が無い時点で「それ以上、
心配することは辞めましょう」
 無駄な検査は「余計な被爆」となるだけで「百害あって一利なし」です。