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なぜki67の基準値が病院によって違うのか

[管理番号:5511]
性別:女性
年齢:67歳
田澤先生こんにちは
母が乳がんになり、こちらを参考にさせてもらっています。
ありがとうございます。
患者家族としてとても不思議に思ったことがあります。
ki67の値が20より低いのにルミナールBと出ました。
母の通っている病院のki67の基準値は14だからki67-18の母もルミナールbなのだそうです。
悩むときはオンコタイプDXをすればいいのでしょうが、この検査は、今は、あまり患者の気持ちに寄り添ったものでないと思います。
患者にとって時は命です。
病理検査結果が出るまでの数週間、オンコタイプDXの結果がでるまでの4週間の他にも、実際に抗がん剤を受けるその日まで日数はかかります。
手術後何も治療もせずに不安な時を過ごす患者さんを心配症な人と笑うことはできません。
術後化学療法は3ヶ月以内にと急がされ、長い4週間を過ごし悪い結果を見て落胆するくらいなら、抗がん剤をうけておこうかと心がくじける人もいると思います。
患者はどちらかというと悪い方へ考えがちです。
ついでに40万ほどと高いのです。
そこで質問です
1.どうして病院ごとにki67のルミナールabの基準値が違うのでしょうか
2.患者が、事前に病院ごとの基準値を知ることはできないのですか?
それが分かればなるべく化学療法をしたくない人は基準値を高めに設定している病院を選んでいくことができます。
また、心配なので化学療法でもなんでもできうる治療はフルコースで受けたいと言う人は、基準値を低めに設定してある病院を選べます。
3.国立の病院なら低い設定、違えばその逆、または場所によってなどなど、おおまかな差別化もないのでしょうか。
ちなみに母が通っているのは地方の国立病院(がんセンター)です
4.医療界で今後、この基準値の差を縮めていこうという動きはありませんか。
医者が100人いたら100通りの答えがあるといいますが、化学療法を受けるか受けないかを決める深刻かつ重要な病理検査の基準値は完全一致とまではいいませんが、あまり開きのないようにしてほしいものです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
Ki67やオンコタイプについては
『今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。
『今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?
を参考とするといいでしょう。
「母の通っている病院のki67の基準値は14だからki67-18の母もルミナールbなのだそうです。」
⇒さすがに、未だに「14」は…
 上記「今週のコラム」で記載したように、14という値は「Ki67の出始めの基準」です。(何年前か??)
 未だにその基準を採用している病院は皆無でしょう。
 ☆101回目のコラムのために、当院での「Ki67とOncotypeDXのデータ」を整理していましたが…
  15≦Ki67<20 でのデータでは3人中3人ともlow riskでした。
 
  ちなみに Ki67<25でハイリスク(RS≦31)は一人もいませんでした。(9人)
「1.どうして病院ごとにki67のルミナールabの基準値が違うのでしょうか」
⇒見識の違いでしょう。
「2.患者が、事前に病院ごとの基準値を知ることはできないのですか?」
⇒(事前に)聞く事はできるでしょう。
「化学療法をしたくない人は基準値を高めに設定している病院を選んでいく」
「化学療法でもなんでもできうる治療はフルコースで受けたいと言う人は、基準値を低めに設定してある病院を選べます。」

⇒これは正しくありません。
 実際には(推奨はどうあれ)『ご本人の希望』で「(基準値が高くても)抗癌剤を
希望することはできる」し、逆に「(基準値が低くても)抗癌剤を希望しない」こともできます。(適応外診療ではないのです)
「3.国立の病院なら低い設定、違えばその逆、または場所によってなどなど、おおまかな差別化もないのでしょうか。」
⇒ありません。
「4.医療界で今後、この基準値の差を縮めていこうという動きはありませんか。」
⇒ありません。
 そもそも…
 冒頭の今週のコラムでコメントしたように、「Ki67は(間に合わせの)参考値にすぎない」のです。
 本当に知りたい人はOnocotypeDXすべきなのです。