Site Overlay

浸潤径とKi67がわからない

[管理番号:5024]
性別:女性
年齢:44歳
田澤篤先生 はじめまして。
 2月に右の内側の上部に乳癌が発覚し、3月に温存術を行ないました。
その後4月からタモキシフェンを5年間の予定で毎日飲んでいます。
また30回の放射線治療を4~5月にかけて受けました。
 術後病理検査で教えてもらったことは、浸潤性乳管癌で、腫瘍径は1.4cm、手術で取り除いた部分の断片に癌の残りがあれば再手術であったがなかったので不要、センチネルリンパ節他どこにも転移はなく術前のstage1の診断は間違いない、核異型度は3、ホルモン療法も化学療法もも有効で分子標的療法は無効、ということです。
 浸潤径とKi67はと尋ねると、測っていないと言われました。
サブタイプはルミナールAと言われましたが、Ki67がわからないのに何故と聞くと
くと、その主治医(私の住んでいる県で最も手術件数が多い乳腺クリニック(全国的にもベスト10位には入る程だそうです)の60~70代と思われる
年配の先生です)の経験上このタイプの癌はおとなしいので、との答えでした。
 術後内服について、タモキシフェンとリュープリンの選択肢を示され、まだ閉経していないことと副作用がより少なそうなことから前者を選びました。
5年後閉経していたらリュープリンを追加してもよいかもしれないと言われました。
化学療法は選択肢に示されませんでした。
<先生への質問>
・今更かもしれませんが、浸潤径は少なくとも腫瘍径よりは小さいという理解でよろしいでしょうか。
・もし、実はルミナールBであったとして、なのにルミナールAとして現在の治療をそのまま継続した場合、再発率や生存率が本当のルミナールAの場合と比べどのくらい悪くなるかというのはおわかりになるでしょうか。
・stage1とはいっても10%位は5年生存できない場合もあるようですが、やはりルミナールAよりはBの方が、また核異型度が1ないし2よりは3の方が、その10%のほうに入りやすい、といったような統計があるとか、先生の豊富な経験上そんな印象があるとか、そういったことはありますか。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「Ki67がわからないのに経験上このタイプの癌はおとなしいので」
⇒これでルミナールAとするのは…
「術後内服について、タモキシフェンとリュープリンの選択肢を示され、まだ閉経していないことと副作用がより少なそうなことから前者を選選びました。」
⇒これは「タモキシフェンとリュープリン単独の選択肢」ということですか?
 よっぼど経験に自信があるようですが…
 幾らなんでも「リュープリン単独の選択肢」はないでしょう。(ガイドラインではありえないことです)
 ♯ガイドラインでは(リュープリンなど)LH-RHagonistは「あくまでも、タモキシフェンに加えるかどうか」という位置づけであり「LH-RHagonist単独」という選択肢はないのです。
 ☆結果的に「タモキシフェン」を選択されたことで「事無きを得ている」わけですが…
「5年後閉経していたらリュープリンを追加してもよいかもしれないと言われました。」
⇒??
 何か「勘違い」されているのでは??
 「5年後、閉経していなかったら」の誤りでしょう。
「浸潤径は少なくとも腫瘍径よりは小さいという理解でよろしいでしょうか。」
⇒病理学的な腫瘍径であれば、非浸潤癌部分を含んでいる可能性があるので、「その可能性」はあります。
 ♯ただし、敢えて(浸潤径ではなく)「腫瘍径という記載にしている場合には、腫瘍径=浸潤径(非浸潤癌部分は殆ど無い)」と想像します。
「もし、実はルミナールBであったとして、なのにルミナールAとして現在の治療をそのまま継続した場合、再発率や生存率が本当のルミナールAAの場合と比べどのくらい悪くなるかというのはおわかりになるでしょうか。」
⇒これは極めて概念的なもので実用的な回答ではありませんが…
 イメージとして早期乳癌でルミナールBの場合「上乗せは10%程度」と考えると、その位でしょうか。(極めて概念的なものです。 解答はOncotypeDXの中にあります)
「・stage1とはいっても10%位は5年生存できない場合もあるようですが、やはりルミナールAよりはBの方が、また核異型度が1ないし2よりは3の方が、その10%のほうに入りやすい、といったような統計があるとか」
⇒大規模な統計は無いと思いますが…
 ルミナールAとBは「Aではホルモン療法単独」「Bではホルモン療法+化学療法」をすることで「ほぼ再発率は均衡する」ことを、以下のコラムでご確認ください。
 『今週のコラム 70回目 高リスクは(化学療法による上乗せが大きいということだけでなく)『化学療法を行えば、中間リスクと予後は殆ど(3%程度しか)変わらない』その事を知ってもらいたいのです。
「先生の豊富な経験上そんな印象があるとか、そういったことはありますか。」
⇒上記の通りです。
 「やるべき事をやる」事で、「予後は均衡する」のです。