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1.9㎝の腫瘍に対する術前化学療法について

[管理番号:1799]
性別:女性
年齢:37歳
組織診の結果、
核が腫大した異形細胞が索状構造をとって浸潤増殖する像を認めます。
invasive ductal carcinomaの所見で、脂肪組織浸潤を伴います。サイズは1.9㎝程度。
【参考 nuclear grade / grade1 (nuclear atypia 2点、mitotic counts1点)】
との診断を受けました。
今の時点では浸潤ガンということしかわかっておらず、今後ステージやグレード、サブタイプを調べ、CTや血液検査の結果と総合的に勘案し来週中に手術方針を決定すると言われています。
また、組織診結果説明時に次のような説明をされました。
・トリプルネガティブの場合は抗がん剤を術前に実施しても術後に実施しても同じのため、リンパに腫れがある場合は術前に実施する。
・HER2タイプの場合も術前実施する可能性がある。
これらの診断から次の点についてご教授下さいますようお願いします。
1.リンパが腫れている状態というのはつまり転移している状態を指すのでしょうか。
2.病理診断報告書にはGrade1との記載がありますが、これは一般的に言う、ガンのグレード1とは違うのでしょうか。
3.術前化学療法を勧められた場合、実施した方が良いでしょうか。
・再発のリスクがそれほど変わらないのであれば温存を希望しています。
・先生の過去の回答を拝見し、腫瘍サイズが大きい場合や固着していない場合は手術が先の方が良いのではと考えていました。
仕事の都合上、術前・術後どちらでも同じなのであれば術後にしたいです。
ただ、術前化学療法を実施することで再発リスクが減少するという情報も見ましたので、術前を勧められた場合に、どうするべきか迷っています。
1.9㎝でも術前が良い場合も考えられますか。
4.細胞診の時点では先に手術と放射線を実施し、必要に応じて薬物療法との説明だったのですが、急に術前の説明がでてきたということは、(現時点では説明されていないものの)組織診の結果に術前療法が必要だと考えるなにかがあったということでしょうか。
5.レディースドックを受診した際に甲状腺に腫れが見られると言われました。程度が軽いので経過観察で良いとのことでしたが、乳がんと関係している可能性はありますでしょうか。
次回の治療方針説明の際、恐らく医師からは決定事項として伝えられる気がします。
病院がすごく混んでいるせいか、質問などをしずらい雰囲気があり、焦って気持ちを伝えることができません。
治療方針はとても大切なことなので、自分の望む内容でなかった場合には、きちんと意思を伝えられるよう知識を身につけておかねばと考えております。
お力添えを下さいますようお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「トリプルネガティブの場合は抗がん剤を術前に実施しても術後に実施しても同じのため、リンパに腫れがある場合は術前に実施する」
⇒「同じ」なのに「何故、術前なのでしょう?」

回答

「リンパが腫れている状態というのはつまり転移している状態を指すのでしょうか」
⇒そうです。
 
「病理診断報告書にはGrade1との記載がありますが、これは一般的に言う、ガンのグレード1とは違うのでしょうか」
⇒その通りです。「核グレード」です。
 
「術前化学療法を勧められた場合、実施した方が良いでしょうか」
⇒不要です。
 「1.9cm」であれば、「そのまま温存」可能です。
 全く「術前化学療法の意味」がありません。
 
「術前化学療法を実施することで再発リスクが減少するという情報も見ました」
⇒誤りです。
 担当医も行っているように「術前に実施しても術後に実施しても同じ」です。
 
「1.9㎝でも術前が良い場合も考えられますか」
⇒全くありません。
 もしも「何らかの理由(薬の効きが解るとか)をつけて術前化学療法を選択された」場合には、私の意見は何の参考にもならないでしょう。
 
「組織診の結果に術前療法が必要だと考えるなにかがあったということでしょうか」
⇒おかしな理由で「術前化学療法を勧める」医師の考えている事など「私には不明」です。
 
「乳がんと関係している可能性はありますでしょうか」
⇒全くありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日は術前化学療法などについてご回答を頂きありがとうございました。不安に対してご回答を頂けたことが嬉しく、読んでいて涙が出ました。
その後、CT検査の結果が出て、心配していた術前療法をする事は無く、年末に手術(部分切除術)を受けることになりました。
現状は次の通りです
腫瘍サイズ /2.7㎝×1.4㎝
リンパ節転移/無し
遠隔転移/無し
ER/88%
PgP/70%
HER2/1+
ki67/26%
グレード1
上記よりステージ2aと診断されました。(ki67の値が中度の為、2b寄りではあるものの、2aと考えて良いとの判断していると仰っていました)しかし、ルミナールaとbの境界ラインが20~30とされていることからみても微妙な値であるものと思います。
そこでまた幾つか質問をさせて下さい。
1.ホルモン受容体の値が高い方だと思うのですが、化学療法を追加した場合の効果は見込めますか。化学療法を追加した場合と、しない場合の再発リスクを教えて下さい。
2.先生だったら化学療法を勧めますか。遺伝子検査も検討した方が良いでしょうか。
3.術後の治療は1月末頃からと言われています。化学療法が必要になり、仕事を続けることが難しい場合、3月末で退職するのが一番職場への負担が少ないのですが、2ヶ月間、副作用の少ない抗がん剤を使用したり、放射線で凌いだり、ということは可能でしょうか。
もちろん、治療が最優先ではありますが、可能な限り、職場に負担を掛けない方法が選択できたらと考えてしまいます。
4.治療を最優先する場合、田澤先生なら具体的にどのような治療を選択されますか。
5.当初聞いていたよりも腫瘍サイズがかなり大きかったことから急に不安になり、生存率という言葉が気になるようになってきました。
ステージ2の5年生存率は80%程度と認識していますが、北斗晶さんはステージ2bで5年生存率が50%と言われたと聞き、症例によってここまで大きな開きがあるのかと不安に感じています。私の場合はどのくらいなのでしょうか。
また、乳がん患者さんの多くは手術をされると思うのですが、切除、薬物療法、放射線治療などをしていても5年以内に再発し、更に手の施しようが無いほど進行し、亡くなってしまう方がそんなにたくさんいらっしゃるということなのでしょうか。インターネットには情報が溢れ過ぎていて不安になるばかりです。信頼する田澤先生の言葉で教えていただけたら嬉しいです。
最後に、これは乳がんに関する質問では無いのですが、先生にご回答を頂いて、お礼を申し上げたかったのですが、お礼のメールも20件のうちの一つとカウントされてしまうのであれば、ご迷惑かと思い断念しました。
お礼のメールも件数に含まれますでしょうか。
長々と書き連ねてしまい、申し訳ありません。どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
cT2(27mm), cN0, cStage2A, luminal A(相当)
○担当医の「(ki67の値が中度の為、2b寄りではあるものの、2aと考えて良いとの判断している」というコメントは誤り(おそらく質問者の勘違い)です。
ステージはあくまでも「腫瘍径(浸潤径)」と「リンパ節転移の状況」だけで決まる
のです。(Ki67は無関係です)
 
「ルミナールaとbの境界ラインが20~30とされていることからみても微妙な値であるものと思います」
⇒これは、その通りだと思いますが、「核グレード1」からはルミナールAとしていいでしょう。
 
「ホルモン受容体の値が高い方だと思うのですが、化学療法を追加した場合の効果は見込めますか。化学療法を追加した場合と、しない場合の再発リスクを教えて下さい」
⇒これは「術後の病理結果」が必要です。
 「最大浸潤径」や「センチネルリンパ節生検の結果」など
 「手術前」から、そこまで考える必要はありません。
 
「先生だったら化学療法を勧めますか。遺伝子検査も検討した方が良いでしょうか」
⇒(術前の)評価だけからは「ホルモン療法単独」を予想します。(しかし、あくま
でも予測です)
 ★(術後の)「手術病理」を確認しないと「誤りの素」となります。
 
「2ヶ月間、副作用の少ない抗がん剤を使用したり、放射線で凌いだり、ということは可能でしょうか」
⇒「抗がん剤」は「メニューが決まっているので、途中で変更は通常ありません」現実的には「放射線照射先行」がいいです。
 
「治療を最優先する場合、田澤先生なら具体的にどのような治療を選択されますか」
⇒手術病理を確認しない限り「具体的な治療計画」はできません。
 
「北斗晶さんはステージ2bで5年生存率が50%と言われたと聞き、症例によってここまで大きな開きがあるのかと不安に感じています」
⇒この点は私も疑問です。
 おそらく担当医の(解釈の)問題でしょう。 Weekly column「予後」も読んでみてください。
 
「私の場合はどのくらいなのでしょうか」
⇒「手術病理を確認」してから考えましょう。
 
「切除、薬物療法、放射線治療などをしていても5年以内に再発し、更に手の施しようが無いほど進行し、亡くなってしまう方がそんなにたくさんいらっしゃるということなのでしょうか」
⇒数字の通りです。
 数字をみてもらえば、「少数派」だということが解ります。
 ○ネットの偏った情報については私はコメントする気もありません。
 
「お礼のメールも件数に含まれますでしょうか。」
⇒その通りです。
 件数は「ソフトで自動にカウント」しているので区別していないのです。