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術前化学療法について

[管理番号:3946]
性別:女性
年齢:46歳
はじめまして。
10月中旬にしこりを見つけ受診。
先日乳がんと診断されました。
ER-, PgR-,Her2 -、T1 N0 M0 ステージ1期
Ki-67 80%
トリプルネガティブと伺いましたので化学療法は必須。
術前術後どちらでも良いと言われており、その決断期日が明日です。
(もちろん、迷いがあれば決断時期は伸ばせると思いますが)
先に手術するなら(最短では)12月(上旬)日が可能と言われましたがその日はどうしても家族の都合がつかないので、まずは明日、次に最短で出来る日を確認するつもりです。
(基本的に手術は混んでいるようです)
どちらでも良いと言われると迷ってしまいます。
ここでもいろいろ勉強させていただいた結果、やはり術前の場合の心配ごとは抗がん剤が効かなかった場合、ガンが大きくなってしまう可能性があることです。
現在はリンパ転移はしていないという診断ですが、
質問①術前の抗がん剤が効かなかった場合大きくなるだけでなく転移してしまう可能性もあるということでしょうか。
質問②ただ、手術までの時間が空いてしまっても同じような心配がでてきてしまいますが、12月中に手術できるようであれば問題ないと考えて良いのでしょうか。
質問③術後にした場合の心配としては、抗がん剤の効果がわからないということです。
これについてはどうのように考えればよいでしょうか。
質問④先日医師にいただいた資料には、術前の化学療法の場合は6ヶ月、術後の場合は3~6ヶ月と書いてありました。
この差はどこからくるのでしょうか。
質問⑤また、1年前に母が乳がんで手術をした関係から、遺伝性乳がん
も考えられるとして、治験への参加も打診されております。
これに関しては特に抵抗はなく、まずは事前スクリーニングを受けてみようかと考えております。
この結果次第では全摘手術を希望した方がいい場合もあるのかもしれません。
そうなるとスクリーニングの結果が出るまで手術を急がない方がいいのか。
ただ、この結果を受けてどのような心境になるのか(全摘しようと思うのか)は予測できておりません。
伝わりにくい点があるかもしれませんが、明日が診察日なので
このようなことを医師に聞いてみようと思っております。
田澤先生のご意見もお伺いできたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
術前化学療法の目的は「小さくして温存」です。
それ以外の理由は「誤った理由」と言えます。
質問者は早期乳癌なので、当然「そのままでも温存可能」な状態と推測します。
つまり(私が)質問者に「術前化学療法を勧める」ことは絶対にありません。
「質問①術前の抗がん剤が効かなかった場合大きくなるだけでなく転移してしまう可能性もあるということでしょうか。」
⇒その通りです。
 そのリスクがあることは「とても重要なこと」であり、場合によっては「手術不能=根治不能」な状態に追い込まれる可能性もありますし、(術前抗がん剤中に)「リンパ節転移や遠隔転移」を起こす可能性もあります。
 ♯腫瘍を「身体に残したまま」(薬物)治療をするという「リスク」は無視するわけにはいきません。
「質問②ただ、手術までの時間が空いてしまっても同じような心配がでてきてしまいますが、12月中に手術できるようであれば問題ないと考えて良いのでしょうか。」
⇒2カ月以内なら「全く問題なし」
 実際は3か月待ちということもありますが、それでも許容範囲内です。
 いったん術前抗がん剤を行うと「半年間、放置」となる可能性があります。
「質問③術後にした場合の心配としては、抗がん剤の効果がわからないということです。これについてはどうのように考えればよいでしょうか。」
⇒質問者は(もしかすると、その担当医も)「大きな勘違い」をしています。
 抗癌剤による「再発予防効果」は(術前に行おうと、術後に行おうと)『決して目に見えるものではない』ものなのです。
 ♯術前に用いて「シコリが小さくなった」としても、それは「再発予防効果とは無関係」です。(目に見える腫瘍が小さくなることと再発リスク低減とはパラレルではない)
「質問④先日医師にいただいた資料には、術前の化学療法の場合は6ヶ月、術後の場合は3~6ヶ月と書いてありました。この差はどこからくるのでしょうか。」
⇒術前化学療法は(効かなくて、病勢が進行してしまうリスクを考え)最強のレジメン(アンスラ+タキサン)となります。
 それに対し、「術後に行う場合」には、(病理結果に応じて)「レジメンを細かく設定可能」だということです。
「質問⑤また、1年前に母が乳がんで手術をした関係から、遺伝性乳がんも考えられるとして、治験への参加も打診」
⇒今時、家族歴がある40代のトリプルネガティブは珍しくありません。
 「本当に必要なのか?」考えた方がいいでしょう。