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術前治療中止からの治療について

[管理番号:1332]
性別:女性
年齢:50歳
はじめまして
今年の3月にしこりを自覚して受診、4月より治療開始しました。
  硬癌 浸潤 全摘・リンパ節郭清予定
  しこり 13㎜× 14㎜ が 2個   8 ㎜×8 ㎜が 1個
  ホルモン+ HER2-  核グレード 2
  Ki-67  20~30%  リンパ節転移有り  ルミナールb ステージⅡb
 
との診断で「全身にタンポポの綿毛のようにガンが散っているかもしれないので」
ということで、術前化学療法になりました。
パクリタキセル12回→FEC4回 の予定したが、パクリタキセルのラスト2回より
肝臓機能障害のため、延期、投薬、点滴などしてなんとか12回終わりました。
その後も肝臓の数値が悪化したので(GOT,GPT 500)1か月程 強ミノ点滴で治療し
ました。
肝臓の数値が落ち着き、主治医から肝臓のことがあるので、FECの前にオペ先行にし
ましょう、と検査したところ
「画像上完全奏効している」 オペ後の病理診断で
ガンがなければFECをせずホルモンのみ、あればFEC・放射線をする とのことでした。
肝臓悪化で化学療法は延期ばかり、FECもオペもできず、先が見えずとてもとても不
安でしたので、
(治療前に先生のブログを拝見していれば 術後化学療法にしていました!)
画像上で完全奏効したのはうれしかったのですが、
リンパ節転移も少なくなく、再発が怖いので初発治療で出来るだけのことをしたく、
診断後もし癌が見えなくても 予定どうりにFECをしたいのですが、
主治医には 不要と言われています。
病理診断で見た目にはなくなっても、体に微小転移が残っている可能性があると思う
のですが…、
上乗せする効果は少ないのでしょうか、肝臓を悪化させるリスクでしょうか?
主治医にもっと聞ければいいのですが、手術が近いので 意見をして気を悪くさせた
くなくて…。
よろしくお願いいたします
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
担当医には「抗がん剤治療は再発リスクを減らすためにあるもの」であるという大事
なことを見失っているようです。
術前化学療法後の「病理学的完全寛解」はあくまでも「抗がん剤の感受性が高い分、
予後が改善される」というだけの話で、「感受性が高いから、既定の抗がん剤をしな
くても良い」という意味ではありません。
もしも、「途中で抗がん剤を辞める」のであれば、「病理学的完全寛解が予後良好因
子とはならない」でしょう。
 あくまでも「同じ治療をした場合」には「病理学的完全寛解を得られれば、予後が
良好である」という事です(考えてみれば当たり前の話ですが…)
○抗がん剤は「(どうせ手術する事になる)乳癌の腫瘍そのものを小さくする」こと
が目的では無いのです。(小さくして温存という目的であれば、それも目的の一つに
はなります)
 そうではなくて抗がん剤の真の目的は「術後の再発リスクを可能な限り減らす」こ
とにあるのです。
★ただし、そもそも質問者はルミナールタイプであり、化学療法として「アンスラタ
キサンが必要なのか?」という点を考慮しなくてはなりません。
 もしも、通常のように、「手術先行」であれば、TC療法だけだったかもしれませ
ん。
 そうすると「肝機能障害のリスクを負ってまでも」アンスラサイクリンをすべき
か?という議論となります。

回答

「リンパ節転移も少なくなく、再発が怖いので初発治療で出来るだけのことをした
く、診断後もし癌が見えなくても 予定どうりにFECをしたい」
⇒ご本人が「最強の再発予防をしたい」という意志であれば、「アンスラサイクリン
をすべき」です。
 化学療法で「腫瘍が無くなった」から「それ以上の治療は不要」という考え方は誤
りです。
 この場合の化学療法の目的は「再発予防」なのです。
 
「病理診断で見た目にはなくなっても、体に微小転移が残っている可能性があると思
うのですが…」
 ⇒質問者の理解は正しいです。
 
「上乗せする効果は少ないのでしょうか」
⇒上乗せする効果は大きいと思います。(化学療法が効き易いタイプであればなおさら)
 
「肝臓を悪化させるリスクでしょうか?」
⇒勿論、これがあるから「そのような治療方針を提示」しているのでしょう。
 ただし、経験上「タキサン系で肝機能障害」がおきても、「アンスラサイクリン系
では肝機能障害が起きない可能性」は十分にあります。
 私であれば、(そもそもFECx6ではなく、ECx4としますが)
 初回を3割減で行い、肝機能の推移を確認し、問題無ければ2回目以降は「通常
量」に戻します。