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術後抗がん剤治療について

[管理番号:2754]
性別:女性
年齢:39歳
いつもこちらのHPで情報収集させていただいております。
今年2月初旬しこりを発見し、病院でマンモグラフィー、CT、超音波検
査、細胞診、生体検査を受け、乳がん(触診結果21㎜×18㎜)告知をうけました。
素早い対応をして頂き、2月下旬には左乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検。
3月初旬に病理診断。
主治医のパソコン画面を見た限りでは、18㎜×15㎜の記載がありましたが、
これがしこりの大きさなのか、最大浸潤径なのかは分かりません
(細かい数値にあまり意味は無いとの考えなのか、詳しくは教えてくれず、心配いらないですよ、とおっしゃる先生です。)。
その他で確認出来た情報は、ホルモン受容体なし、HER2陰性、グレード3、リンパ節転移なし(0/3)です。
術後治療として、FEC75(3週間毎)を3コース、その後別の薬剤(3週間毎)(標準的な薬と聞いています)3コースの抗がん剤治療を行い、
その後放射線治療を行うことになっています。
現在FEC75の2コース目に突入しています。
こちらのHPを見させていただいて、抗がん剤の治療はアンスラ系とタキサン系を
4コースづつ行うことが多いことに気づきました。
主治医に質問したところ、4コースはあくまで標準ですが、病理診断の結果から3コースでよいと判断したとのことでした。
ただ希望があれば4コースに増やしてもよいとのことです。
私自身は、トリプルネガティブですので、4コースに増やして治療したほうが、後悔も少ないのではと思ってしまいます。
(質問)
・主治医により提案されたFEC75を3コース、その後に標準薬(タキサン系かと想像しています)を3コースというのは妥当なものなのでしょうか?
・3コースの場合と4コースの場合の再発率や生存率について、データはあるものなのでしょうか。
・術後の病理検査の結果は前述の通りですが、ステージはどのように考えればよいのでしょうか。
主治医からは明確なステージを知らされておらず、「心配ありません」との説明です。
診断書にはT2N0M0と記載が
ありますのでステージ2と取れますが、診断確定日には手術前の日付が記載されているので、触診結果21㎜×18㎜を基準にしているかも知れません。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、ご意見をお聞かせいただきたくよろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1c(18mm), pN0, pStage1, NG3, triple negativeですね。
十分な早期癌ですが、「TN(triple negative)である以上、化学療法(基本はアンスラタキサン)が必須」と思います。(pT1b以下の場合は除く)
「術後治療として、FEC75(3週間毎)を3コース、その後別の薬剤(3週間毎)(標準的な薬と聞いています)3コースの抗がん剤治療」
⇒標準治療とは言えません。
 まずFEC75は「術前術後の化学療法」としては、殆ど使われないと思います。
 通常行われるのはFEC100であり、(現在は)一般的にFECと言えば「FEC100」を指します。
 ♯その昔、FEC100が拡がる10年前までは「FEC60とかFEC75」が用いられていました。
 また、「その後別の薬剤」とは「ドセタキセル(タキソテール)」のことだと思いますが、
「アンスラサイクリン(ACやEC,FECなど)4サイクル+タキサン4サイクル」が標準となります。
 ♯タキサンとして「ドセタキセル(タキソテール)ではなく、パクリタキセル(タキソール)を用いる場合には「毎週投与x12」となります。
 
「抗がん剤の治療はアンスラ系とタキサン系を4コースづつ行うことが多いことに気づきました。」
⇒その通りです。
 
「主治医により提案されたFEC75を3コース、その後に標準薬(タキサン系かと想像しています)を3コースというのは妥当なものなのでしょうか?」
⇒「ステージ1だから」ということでの「減量投与」だと想像しますが、エビデンスがありません。
 やはり上記スタンダードがいいのではないかと思います。
 もしも「減量投与」であれば、(中途半端なものではなく)TC4サイクルなどの方が解り易いです。
 
「・3コースの場合と4コースの場合の再発率や生存率について、データはあるものなのでしょうか。」
⇒残念ながら3コースでのエビデンスは(少なくとも高いものは)ありません。
 
「・術後の病理検査の結果は前述の通りですが、ステージはどのように考えればよいのでしょうか。]
⇒ステージ1です。
 
「診断書にはT2N0M0と記載がありますのでステージ2と取れますが、
診断確定日には手術前の日付が記載されているので、触診結果21㎜×18㎜を基準にしているかも知れません。」
⇒その通りです。
 術前診断ではcT2(21mm), cN0, cStage2Aで術後診断(こちらが最終診断)pT1c(18mm), pN0, pStage1となるのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日は、わかりやすく丁寧な回答を頂きましてありがとうございます。
前回の質問では、術後治療としては、FEC75(3週間毎)×3コース、その後別の薬剤(3週間毎)×3コースの抗がん剤治療は標準治療ではない、と回答いただきました。
まだ手の掛かる幼い子供がいることもあり、副作用の程度よりも再発リスクを僅かでも下げることを第一と考えていますので減量投与などは想定すらしていませんでした。
この考えを主治医には伝えたつもりでしたが、
車で片道1時間の通院時間、核家族であることなども考慮されたのかな、とも思います(なお、現時点で通院環境に変化無しですが、祖母の応援が得られる状況には変化しています)。
すでにFEC75で2コースまで終えていることを踏まえて、今後の進め方についてご意見いただけたらと思い、再度質問させていただきます。
(質問)
・今後のFECの治療ですが、以下のどの進め方がよいのでしょうか。
また、他に田澤先生が良いと考える進め方があれば、お教えいただけないでしょうか。
1.FEC75を4コース(投与済みFEC75×2コース+FEC75×2コース)
2.FEC75からFEC100に途中で変更。
(投与済みFEC75×2コース+FEC100×2コース)
3.FEC100をやり直す。
(投与済みFEC75×2コース+FEC100×4コース)
4.その他
・FEC治療ではおう吐や倦怠感の副作用が強いと聞いていましたが、
私の場合は吐いたり寝込んだりするような強い副作用は今のところありません。
通常は100のところ75に減量投与しているからなのでしょうか。
・FECの後の薬剤の標準はどういった種類があるのか、さらに現時点でのベストな選択について教えて下さい
(主治医の選択が不明なので数種類の例示を頂ければ助かります)。
また、薬剤の投与量にはFECのようにバリエーションがあるのでしょうか。
ある場合は、標準(エビデンスのある最良の量 
※一般的な保険適用の範囲内として)はどのようになるのでしょうか。
・前回質問に対して頂いた回答で減量投与の例として触れられていた、
TC×4サイクルというのは、具体的にどのような名前の治療法なのでしょうか。
TC×4サイクルのみで完了する投与方法でしょうか。
先生のご意見を参考に、主治医と今後の抗がん剤について決めていきたいと思っています。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、3コース目からの治療が迫っており時間がなく、是非ともご意見をいただきたくお願い申し上げます。
(短期間での再質問となってしまい申し訳ありません。)
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
抗がん剤の(初回からの)減量投与ですね。
これが、「80歳代」とか「糖尿病などの合併症」などがあれば解りますが、30代では…
 
「・今後のFECの治療ですが、以下のどの進め方がよいのでしょうか。」
⇒2でいいと思います。
 考え方としては(副作用が心配だったので最初の2回は減量投与したが、
大丈夫なので)残りの2回は「通常量で投与」と割り切れます。
 RDIの考え方として 75+75+100+100=350 350/400=87.5%となるので(85%以上となり)それで十分です。
 ♯RDIについては管理番号1113など参照してください。
 
「・FEC治療ではおう吐や倦怠感の副作用が強いと聞いていましたが、
私の場合は吐いたり寝込んだりするような強い副作用は今のところありません。
通常は100のところ75に減量投与しているからなのでしょうか。」
⇒それもあります。
 ただ、アブレピタント(イメンド)の登場以降、昔のようなひどい吐き気は
「FEC100でも少なく」なりました。
 
「・FECの後の薬剤の標準はどういった種類があるのか、さらに現時点でのベストな選択について教えて下さい」
⇒これは以下の2通りしかありません。(アブラキサンは適応外です)
 ①weekly PTX 毎週パクリタキセルを12回
 ②triweekly DTX 3週毎ドセタキセルを4回
 
「薬剤の投与量にはFECのようにバリエーションがあるのでしょうか。」
⇒殆どありません。
 ①は80mg/m2
②は60mg/m2で行います。
 ♯ちなみに、同じドセタキセル投与でもTCでは75mg/mwと高容量となっています。(これは、その容量でのエビデンスがあるからです)
 
「・前回質問に対して頂いた回答で減量投与の例として触れられていた、TC×4サイクルというのは、具体的にどのような名前の治療法なのでしょうか。」
⇒TC療法です。
 
「TC×4サイクルのみで完了する投与方法でしょうか。」
⇒その通りです。
 ACx4<TCx4という臨床試験(SABCS 2007報告)以来、TC療法が急速に拡がっているのです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

いつもQ&A拝見しています。
前回、抗がん剤の件でご相談させていただきました。
ご回答いただいた後主治医に相談し、標準投与で無事化学療法を終える
ことができました。
本当にありがとうございました。
化学療法後、放射線治療25回も終わり、昨年10月から無治療期間に入っております。
今回ご相談したいのは、手術した場所が硬く、しこりにも感じられることについてです。
昨年2月に左乳房部分切除術を終え約一年経ちます。
病理の結果わかっていることは、
 浸潤径15mm×12mm(前回質問の18mm×15mmは術前エコー検査の腫瘍径でした)
 トリプルネガティブ
グレード3、
断片陰性
リンパ節転移なし(0/3)
傷周辺がずっと硬いです。
手術した場所は、外側上部、1時の方向の上端の部分で、硬い部分は横3センチの傷痕を底辺とした三角形のおにぎりのような形状です。
最近硬い部分に厚みが増してきたような気もします。
しこりのように感じられます。
今年2月に一年検診にて技師さんによるエコー検査、マンモグラフィー検査をしましたが、異常なしとのことでした。
局所再発の可能性について聞き触診もしていただきましたが、ただ手術した部位が硬くなっているだけとのことでした。
一度は安心したのですが、田澤先生のコラムやQ&Aを拝見して、局所再発と術後の変化をエコー技師の方が見分けるのは困難との回答を読み、
私の場合も大丈夫なのかと不安になっています。
以下質問について、何卒お教えいただけないでしょうか。
・上記のような形状で、傷跡の線だけではなく周囲まで硬くしこりのように触れることはよくあることなのでしょうか。
田澤先生のご経験で、
このような症状の患者様は何割くらいいらっしゃいますか?
・術後一年経っても硬いことはよくあることなのでしょうか?硬さはずっと残るものなのでしょうか。
・傷跡を毎日触ったり見たりしていますが、局所再発の場合のどのような徴候がありますか。
・再度別の病院で検査を受ようか検討中ですが、執刀医以外がエコーでみても、術後の瘢痕と局所再発を見分けることは可能でしょうか。
もし難しい場合は、生検をお願いしたほうが良いのでしょうか。
化学療法後、放射線治療中に主治医(執刀医)が遠方の病院に移動になり、定期検査は別の先生に見ていただいていますが、先生自身はエコーされないとのことで、どのように検査を受けていけばよいか悩んでいます。
御多忙なところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「一度は安心したのですが、田澤先生のコラムやQ&Aを拝見して、局所再発と術後の変化をエコー技師の方が見分けるのは困難との回答を読み、私の場合も大丈夫なのかと不安」
⇒これは大きな「勘違い」と言えます。
 ①「ただの術後瘢痕⇒(誤って)局所再発と勘違いする」ことと、②「局所再発があるのに⇒正常と判断してします」ことは、「似て非なるもの」です。
 ①は技師さんにはどうにもならないこと(つまり、しばしばありうる事)だとは思いますが、②は殆どありません。
  ♯何故なら技師さんは「正常を異常と判断する」ことはあっても「異常を正常と判断する」ことは基本的にないからです。
  特に(今回のように)「質問者から、ここは大丈夫?」と聞かれた場合には(少しでも気にかかる所見があれば)「正常と言い切る事はしない」ものなのです。
  その意味で私は、今回の件は「技師さんは正しい=異常無」と(大いに)推測しています。
「・上記のような形状で、傷跡の線だけではなく周囲まで硬くしこりのように触れることはよくあることなのでしょうか。」
⇒(程度の差こそあれ) 瘢痕部は硬くなります。
「田澤先生のご経験で、このような症状の患者様は何割くらいいらっしゃいますか?」
⇒温存術後、半数位の人は「術後瘢痕をきにされている」ように思います。
「・術後一年経っても硬いことはよくあることなのでしょうか?硬さはずっと残るものなのでしょうか。」
⇒其の程度が不明なので、はっきり回答はできませんが、通常「術後2年」すると随分硬さがとれてきます。
「・傷跡を毎日触ったり見たりしていますが、局所再発の場合のどのような徴候がありますか。」
⇒変化をみていればいいように思います。
「執刀医以外がエコーでみても、術後の瘢痕と局所再発を見分けることは可能でしょうか。」
⇒慣れていない医師がエコーしても「技師さんと大差はない」と思います。
 ただし、「本当に怪しい所見があれば」正常とは判断しないとは思います。
「もし難しい場合は、生検をお願いしたほうが良いのでしょうか。」
⇒もしも「局所再発なのか、(術後)瘢痕なのか判断できない」ものであれば、それがいいと思いますが…
 ○しかし今回のように「全く正常に見えるもの」を針生検する必要はありません。
(信用してあげましょう)