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術後の化学療法について

[管理番号:2497]
性別:女性
年齢:43歳
田澤先生 はじめまして。
妻の術後治療を調べている時に、先生のサイトをお見かけしご質問させて
頂きたくご連絡させて頂いた次第です。
妻は43歳
1月中旬に温存手術(K4762)を受け、2月中旬に病理結果と
今後の治療法について話を聞きました。
PCの画面(病理結果)のみでの説明で、レポートは頂いておりません。
・腫瘍の大きさは当初聞いていた1.8cmより大きくなっており、2.5cm
・顔つき?は悪・普・良の内、普通
・センチネルリンパ節生検 2個の内1つが陽性
・ER?(100) PgR?(100) HER2?(-)
 ※Ki67・grade・NID1等々は見れていません。
 →恐らくこの3つだったと思いますが、数値は合っていると思います。
  数値が100なので、ホルモン療法が一番効くタイプと言われました。
・今後は放射線+ノルバデックスで行うとの事でしたが、リンパ節転移
 もあるのでTC療法もした方が良いとのこと。
・リュープリンやゾラデックスは35歳迄と45歳以上には効果は認められる?が
 43歳の年齢では微妙、但し抗癌剤投与した場合は使用した方が良いとの事。
 後日、TCをするか否かを月末○○日に返事を下さいと言われております。
・TMNは診断書記載(2月○○日受領分)より、TMN分類 T(2) M(1) N(0)
・病理組織診断名 Invasive ductal carcinoma 
 
私も家内も抗癌剤に対して抵抗があり、上乗せ効果が数%と言われると
この数%の効果と副作用を考えた場合、本当に必要なのかと迷います。
TCを選択せず、再発又は転移が起こった場合の後悔…又は
選択しても再発又は転移が起こった場合の後悔等と、何処までいっても結果でしかないのは分かりますが、不安は常に付き纏います。
術前の診察時に、主治医の先生に尋ねるか迷いましたが思い切って尋ねました。
「先生またはご親族の方が癌を患われた際、抗癌剤は使われますか?」と。
主治医の先生曰く、「それ以外方法がないならば、投与します。」
その時は当然の御返答と思いましたが、よくよく考えると、それってもしか…
「他に方法があれば抗癌剤は使用しない」という事?と思う様になりました。
この様な経緯もあり、抗癌剤に対して余計に抵抗があるかも知れません。
無論、絶対に抗癌剤が必要な場合は、当然受け入れなければなりません。
しかし、どちらか決めて下さいと言われると余計に迷い不安になります。
田澤先生はこの様な患者の場合、どの様な治療法にされますでしょうか?
やはり、Ki67の数値によるのでしょうか?
抗癌剤もした方が良いと言うことは、luminalはBという事ですか?
投与の場合と非投与では、本当に数%の差でしかないのでしょうか?
すぐに田澤先生に相談をと思い、病理レポートを病院に依頼致しましたが
時間外のため受付事務しかおらず、正式な申請手続きをして下さいとの事で
手続きを踏めば書面受理から数週間必要との事です。
この様な状況で相談するなど、大変失礼と重々承知ではございますが、何ぶん時間が迫っておりますので、田澤先生のご意見を賜りたく存知ます。
(※勿論、レポートを貰い次第すぐに内容をご連絡させて頂きます)
何卒、宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT2(25mm), pN1, luminal, NG2
「・腫瘍の大きさは当初聞いていた1.8cmより大きくなっており、2.5cm」
⇒pT2(25mm)です。
「・顔つき?は悪・普・良の内、普通」
⇒NG(nuclear grade)2と言う意味です。
 
「・センチネルリンパ節生検 2個の内1つが陽性」
⇒ここが、やや気になります。
 まずは「micrometastasis(微小転移)」なのか「macrometastasis(肉眼的転移)」なのかという点です。
 ①Micrometastasisであれば、pN1miとなり、予後はpN0(リンパ節転移無)と同等と言えます。
 ②もしもmacrometastasisであった場合、追加郭清はしなかったのか?が議論となります。
  施設により「ある程度の裁量権」があり、
  A)macrometastasisが(1個でも)あれば「必ず追加郭清」(当院もコレです)
  B)macrometastasisが2個以内であれば「追加郭清を省略」(2014 ASCOのガイドライン)
   
「・今後は放射線+ノルバデックスで行うとの事でしたが、リンパ節転移 もあるのでTC療法もした方が良いとのこと。」
⇒このコメント内容から読み取ると「ルミナールBだから抗がん剤が必要」というのではなく、「リンパ節転移があるので抗がん剤が必要」と読み取れます。
 その意味では(Ki67は実は低値であり)「ルミナールA」なのかもしれません。
 
「・リュープリンやゾラデックスは35歳迄と45歳以上には効果は認められる?が 43歳の年齢では微妙、但し抗癌剤投与した場合は使用した方が良いとの事。」
⇒??
 「35歳未満で効果がある」ことはSOFT試験で実証済ですが…
 「45歳以上で効果が有る」という根拠は何でしょうか?
 ○ただ、「抗がん剤を施行し(化学療法閉経となった後)月経が再開した場合」のLH-RHagonist効果は実証されています(SOFT試験)
 
「・TMNは診断書記載(2月22日受領分)より、TMN分類 T(2) M(1) N(0)」
⇒これはT(2)、N(1)、M(0)の記載ミスだと思います。
 N(1)という記載なのであれば、「micrometastasisではなく、macrometastasis」という事を意味します。
 
「私も家内も抗癌剤に対して抵抗があり、上乗せ効果が数%と言われるとこの数%の効果と副作用を考えた場合、本当に必要なのかと迷います。」
⇒(Ki67の数値が不明ですが)
 Luminal Aと仮定した場合には「リンパ節転移1個」では、かならずしも「抗がん剤の上乗せは必要無し」とは思います。
 ただし、ステージ(浸潤径とリンパ節)やグレードによっては「上乗せ効果が高くなる」ので、それも参考にすべきでしょう。
  
「主治医の先生曰く、「それ以外方法がないならば、投与します。」その時は当然の御返答と思いましたが、よくよく考えると、それってもしか…「他に方法があれば抗癌剤は使用しない」という事?と思う様になりました。」
⇒これはもしかして代替療法の事ですか?
 私は絶対に「代替療法は勧めません」 ○全く実証されていないから「保険適応とならない」のです。
 ☆もしも代替療法を(少しでも)考えるのであれば「抗がん剤すべき」となります。
 
「田澤先生はこの様な患者の場合、どの様な治療法にされますでしょうか?やはり、Ki67の数値によるのでしょうか?」
⇒「Ki67も参考」にするし、「実際の上乗せ効果の期待値」も両方です。
 
「抗癌剤もした方が良いと言うことは、luminalはBという事ですか?」
⇒推測ですが…
 そう言う意味ではなく、あくまでも「リンパ節転移」を(抗癌剤を推奨する)根拠としているようです。
 
「投与の場合と非投与では、本当に数%の差でしかないのでしょうか?」
⇒11%程度となります。
 仮に「2cm以下」or「リンパ節転移無」ならば7%となり
 「2cm以下」and「リンパ節転移無」ならば5%となります。
○最終的には「11%の上乗せ」をどう捉えるか?となります。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、こんにちは。
先日は早々にご返答頂き、誠にありがとうございます。
早速ではございますが、病理レポート記載内容を御報告申し上げますので
何卒、宜しくお願い申し上げます。
=======================================
◎右浸潤性乳管癌:pT2
◎リンパ節転移有:pN1(1個/3個)
※Ope直後の話では2個の内1つは陰性だが、もう1つは陽陰の判断が
 つかないとの事で、検査をして後日結果報告しますと言われていました。
 1ヶ月後(術後初回診察)に結果を聞いた所、陽性の結果でした。(1個/2個)
 先日(術後2回目診察)抗癌剤の返答の件で再診に行き、レポートを見た際、
 (1個/3個)の記載でした。
 先生曰く、もう1つ有った様で合計3つでその内1個が陽性との事です。
◎腫瘍浸潤径:25?25mm
◎核異型度:2
◎組織学的悪性度:2
◎エストロゲンレセプター: スコア3(100%)陽性
◎プロゲステロンレセプター:スコア3(100%)陽性
◎HER2: スコア0 陰性
◎Ki67:15%
◎断端陰性
◎TNM分類:T(2)、N(1)、M(0) 
  ※前回NとMが逆に記載しており、私のミスでした。
申し訳ございません。
=====================================
記載内容は以上です。
追加郭清はしなかったのか?
→Ope前の説明で、「米国のガイドラインでは…」という説明があり
 術後の浮腫や運動機能等々も考慮すると、2個以内ではそれ以上取らない様にしているとの事でした。
恐らく田澤先生が仰る2014 ASCOの
 ガイドラインの事と思います。
 
「45歳以上で効果が有る」という根拠は何でしょうか?
 →これは私の勘違いでした。
申し訳ございません。
これはもしかして代替療法の事ですか?
 →記載が悪く申し訳ございません。
代替療法の事ではございません。
  あくまでも抗癌剤を自身や親族に投与するかしないかについてです。
 
 私自身、当初は訳も分からずに、高濃度ビタミンC点滴や免疫療法等を考えた事もありました。
 
今回(術後2回目)の診察で、再度今後の治療法についての説明があり、やはり、抗癌剤(TC療法)+放射線+ノルバデックス+リュープリン等のフルコースで叩きたいとの事です。
(前回の説明では、年齢的に効果が出るかどうか不明なのでリュープリンor
ゾラデックスは考えなくても…の様な事を言われていたのですが・・・
今回この様にフルコースとされたのは、SOFT試験からなのでしょうね。)
抗癌剤の効果は前回同様の数%と言われましたが、上記のレポート数値では
それ位の効果しか無いのでしょうか?
田澤先生が思われる診断は、どの様な結果(ステージ・サブタイプ等)を出され、どの様な治療を選択されますか?
田澤先生も抗癌剤を投与すべきと考えられますか?
上記の様にフルコースでの治療となるのでしょうか?
抗癌剤の表立った副作用も当然不安ですが、正常細胞にも影響を与えてしまう事により、影響を受けた細胞が、別の癌を引き起こしそうで怖いです。
更に抗癌剤をする事での免疫力低下で、癌を作り易い状態になり再発・遠隔転移となるのでは等々、心配してしまうのですが考え過ぎでしょうか?
主治医から急かされている訳ではないのですが、すでにOpeから1ヶ月半経過しておりますので、早く決めないといけませんね?
質問が多く申し訳ございませんが、何卒、宜しくお願い申し上げます。
それでは失礼致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
pT2(25mm), pN1, luminalA(Ki67=15%), NG2
「 (ゾラデックスは考えなくても…の様な事を言われていたのですが・・・
今回この様にフルコースとされたのは、SOFT試験からなのでしょうね。」
⇒その通りです。
 化学療法閉経後に「月経改善」した群には「LH-RHagonistの上乗せ」が証明されているのです。
 
「抗癌剤の効果は前回同様の数%と言われましたが、上記のレポート数値ではそれ位の効果しか無いのでしょうか?」
⇒11%となります。
 
「田澤先生が思われる診断は、どの様な結果(ステージ・サブタイプ等)を出され、どの様な治療を選択されますか?田澤先生も抗癌剤を投与すべきと考えられますか?
上記の様にフルコースでの治療となるのでしょうか?」
⇒pT2, pN1, pStageⅡBとなります。
 「luminal typeA」なのでリンパ節転移1個では「化学療法の併用」はせずに、タモキシフェン内服とします。
 ○化学療法による「11%の上乗せ」を話した上で(希望があれば)化学療法(TC)を併用します。
 
「抗癌剤の表立った副作用も当然不安ですが、正常細胞にも影響を与えてしまう事により、影響を受けた細胞が、別の癌を引き起こしそうで怖いです。」
「更に抗癌剤をする事での免疫力低下で、癌を作り易い状態になり再発・遠隔転移となるのでは等々、心配してしまうのですが考え過ぎでしょうか?」
⇒心配しすぎです。
 実際に「多くの患者さんが化学療法」を施行して「その効果と(それに見合った)安全性が確認」されているのです。
 変な想像をする必要はありません。
 
「Opeから1ヶ月半経過しておりますので、早く決めないといけませんね?」
⇒そんなことはありません。
 術後療法は「じっくり」考えていいのです。