Site Overlay

術後病理検査結果について

[管理番号:3128]
性別:女性
年齢:45歳
はじめまして。
45才です。
よろしくお願いします。
5月半ばに左乳房温存手術を受けリンパ節郭清をしました。
約1ヶ月後にやっと結果が分かりましたが、術前ステージⅠだと聞いていたのに、思ったより悪かったと抗ガン剤治療を言われましたが受けたほうが良いのか悩んでいます。
受けるにしてもちゃんと納得して受けたいと思うのです。
浸潤径:1.7cm
リンパ節転移:1/22(センチネルリンパ節に1つ)
脈管侵襲:3+
組織学的グレード:3
増殖能:高い
ER:3b(70%)
PgR:2(2%)
HER2:1+
Ki67:28%
断端:陰性、背景の小型乳管内に石灰化を認める。
一見ⅡAかと思いますがⅡbとの表記もあり、顔つきが悪く早期ではないと言われました。
そして
「IDCの辺縁に、拡張した乳管に類円形の核を有する小型の異型細胞が充実性に配列する像と、一ヶ所に個細胞~数個の小胞巣を形成する癌が間質内にばらばらと浸潤する像を認める。
いずれの細胞もE-cadherinを喪失しており、LCISおよび浸潤性小葉癌と診断する。」と。
温存した乳房に残っているのでしょうか?
癌は全部取ったんですよね?と聞いたら「大丈夫そう、あとは放射線で」と言われ心配です。
残っているなら、放射線と抗ガン剤を受けるべきでしょうか?
検診を受け自分でしこりを見つけ要精密検査から
半年も過ぎてしまいました。
癌とわかってから、
おとなしい癌だからと手術まで3ヶ月半年も待ちこんな結果でショックでどうしたらよいのかわかりません。
抗ガン剤はEC療法+タキソテール療法です。
先生でしたらどのような治療をしますか?
抗ガン剤を受けない、受けた時の再発・転移の可能性、5年、10年生存率を教えていただけますか。
予後はどうでしょうか?
よろしくお願いします。
悩んでいる時間がもったいないので、明後日から放射線治療を始めます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
まずは「顔つきが悪く」などの表現を用いるのは止めましょう。
もしも担当医が「組織学的グレード 3」を「化学療法の根拠」とするのであれば、根拠薄弱です。
 是非、『今週のコラム30回目 実際はかなり多くのルミナールAがBと判定され無駄な化学療法をされている』をご一読ください。
pT1c(17mm), pN1, pStage2A, luminal
2A期、普通に早期です。
リンパ節転移も1個だけ、「抗ガン剤を勧める根拠」には極めて乏しい(Ki67=28%はあくまでもグレーゾーン)
 
「一見ⅡAかと思いますがⅡbとの表記もあり、顔つきが悪く早期ではない」
⇒普通に2A期です。
 「顔つきが悪い」など忘れましょう。
 
「IDCの辺縁に、拡張した乳管に類円形の核を有する小型の異型細胞が充実性に配列する像と、一ヶ所に個細胞~数個の小胞巣を形成する癌が間質内にばらばらと浸潤する像を認める。いずれの細胞もE-cadherinを喪失しており、LCISおよび浸潤性小葉癌と診断」「温存した乳房に残っているのでしょうか?」
⇒違います。
 ただ単に「浸潤性乳管癌の周囲」に「非浸潤性小葉癌や浸潤性小葉癌が存在」するとの記載にすぎません。
 断端評価とは異なります。
 
「残っているなら、放射線と抗ガン剤を受けるべきでしょうか?」
⇒質問者は勘違いしています。
 「断端陽性(今回は違うようですが)」とは無関係に(温存手術である以上)「放射線は必須」だし、「抗ガン剤は局所の為では無く、全身の再発予防目的」です。
 
「先生でしたらどのような治療をしますか?」
⇒Oncotype DXをまずは勧めます。RS(recurrence score)が低い可能性もありそうです。
 もしも希望されないのであれば、「Ki67=28%はルミナールAの可能性も高い」ので迷うところです。
 NewAdjuvant.comでは下記の数字となるので微妙な判断となります。
 決して抗がん剤を強くは勧めません。
 
「抗ガン剤を受けない、受けた時の再発・転移の可能性、5年、10年生存率を教えていただけますか。」
⇒5年は不明ですが、10年では

再発率 生存率
抗ガン剤を受けない 32% 78%
抗ガン剤を受ける 22% 83%

 
 

 

質問者様から 【質問2】

以前管理番号3128でお世話になりました。
迅速かつ的確な回答をいただき感謝しております。
前回の質問で抗ガン剤を受けるかどうか悩んでいたのですがアドバイスを受け、その後マンマプリント検査をして「ローリスク」との結果で抗ガン剤はやらないことになりました。
主治医には、検査を受けても「ハイリスク」とでるから考え直したらと言われましたが、受けて良かったです!
(オンコタイプDXを希望しましたが、閉経前リンパ節転移ありでは適応ないと言われてしまいました。)
しかしホッとしたのもつかの間、「心配だから2年のリュープリン注射を追加しましょう。」と…
゛心配゛とは、組織学的グレード3、脈管侵襲3+をみてのことだと思いますが…
こちらのサイトで勉強させていただいたところ、
リュープリン注射の上乗せ効果があるのは
①化学療法が適応となる「ハイリスクグループ」
②35歳以下
と認識しております。
今回の検査でせっかく「ローリスク」とでたのにどうして?と疑問です。
拒否したところ、血液検査でホルモン?を調べてから決めましょう。
となりましたが、血液検査の結果をみても必要でしょうか?
治療を受けている病院でマンマプリントは初めてだそうで、信頼性はあると言っていましたが信頼していないの?と不安になってしまいました。
温存手術後、放射線治療は修了しました。
現在タモキシフェンを飲み始めました。
田澤先生のご意見を伺いたく宜しくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「マンマプリント」でローリスクですね。
無駄な抗ガン剤を避ける事ができて本当に幸いでした。
「オンコタイプDXを希望しましたが、閉経前リンパ節転移ありでは適応ないと言われてしまいました]
⇒これは担当医の誤りです。
 以前はそのように言われていましたが、現在は以下の3つの臨床試験で確認されています。
■ECOG 2197
HT + AC vs ATを比較した閉経前・リンパ節転移陽性を含む試験の検体を用いてoncotype DX(r)を検証したところ、予後予測が可能であると示されました。
 (Goldstein LJ, et al. J Clin Oncol. 2008;26:4063-4071.)
■ NSABP B-28
Tam + AC vs AC-Pを比較した閉経前・リンパ節転移陽性を含む試験の
検体を用いてoncotype DXを検証したところ、予後予測が可能であると示されました。
パクリタキセルの追加効果について、高リスクにおいて傾向は見られましたが、
有意差はありませんでした。(Mamounas EP et al. ASCO 2012;abstr 1)
■ PACS01
FEC vs FEC-Dを比較した閉経前・リンパ節転移陽性を含む試験の検体を用いて
oncotype DXを検証したところ、予後予測が可能であると示されました。
(Penault-Llorca F et al. ASCO 2014;poster 11052)
「こちらのサイトで勉強させていただいたところ、リュープリン注射の上乗せ効果があるのは①化学療法が適応となる「ハイリスクグループ」②35歳以下と認識しております」
⇒ASCO(2016)のガイドラインでは「LH-RHagonistの適応」になりそうです。
 是非、『今週のコラム 24回目 自分自身をアップデートしなくてはなりません』を参照してみてください。