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術後病理結果の違い

[管理番号:2454]
性別:女性
年齢:37歳
田澤先生、
こんにちわ。
先月温存手術が終わり、病理結果が出ました。
幾つか質問がございます。
① マンモトーム生検と術後病理結果の違い
マンモトーム生検では、low grade DCISの疑い。
MRIでの広がりが1.5cm程度。
乳頭に近いが、温存手術で進み、センチネルリンパ生検も行いませんでした。
しかし、術後病理結果は以下でした。
浸潤径20mm
充実腺管癌
ER95%
PGR75%
HER2 陰性
Ki67 30%
グレード2
また、乳頭に取り残しがある可能性があるので、再手術、全摘をする事
になりました。
病理結果が術前と術後でここまで違う事はあるのでしょうか?
マンモトーム生検はしっかり真ん中を刺したと画像が残っていました。
② センチネルリンパ生検について
再手術は、最初の手術でリンパの位置や流れが変わっているので、リンパ郭清をするとの事です。
最初の手術前のCTでは、画像上リンパへの転移は無かったですが、センチネルリンパ生検では無く、リンパ郭清でないといけないのでしょうか。
③ ステージ、サブタイプについて
浸潤径20mmとなると、ステージ2になりますでしょうか?
また、Ki67が30%なので、ルミナールBになりますでしょうか?
田澤先生が以前のコメントで20~30はグレーと仰っていましたので。
術後の治療はホルモン療法のみで良いのでしょうか。
副作用などを考えると、抗ガン剤は避けたいと思っております。
長文で申し訳御座いませんが、宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「① マンモトーム生検と術後病理結果の違い マンモトーム(low grade DCISの疑い。MRIでの広がりが1.5cm程度)と手術病理(pT1c=20mm, luminal, NG2)」
⇒これは、さすがに「酷い」ですね。
 単純に「診断能力の問題」と言えそうです。
 
「再手術は、最初の手術でリンパの位置や流れが変わっているので、リンパ郭清をするとの事です。」
⇒絶対にこれは「止めるべき」です。
 とんでもない医療です。
 (勿論、low grade DCISだからということが大きいとは言え)「画像診断でリンパ
節転移はありえない」との判断で、(初回手術時に)「センチネルリンパ節生検を行
わなかった筈」です。
 ♯ガイドライン上は「外科的生検以外の診断でのDCIS」では(浸潤癌の可能性
があるため)センチネルリンパ節生検はすべきとなっています。
 
 そもそも「自分たちが診断を誤って」おきながら、結果として(センチネルリンパ
節生検ではなく)「腋窩郭清を行う」など(医師として)絶対に許せません。
 腋窩郭清をすることが、その後の「リンパ浮腫(確率的には低いですが…)」の原因となりうるのです。
 私であれば「当然、センチネルリンパ節生検」としますし、「自分の家族や友人であれば、このような医療をさせる」つもりは全くありません。
 ○初回手術で「センチネルリンパ節生検を行わなかった」というのは「明らかに医師の責任」であり、それを「腋窩郭清をする」という「患者さん側への負担」とすることは「絶対にあってはならないこと」です。
   
「最初の手術前のCTでは、画像上リンパへの転移は無かったですが、センチネルリンパ生検では無く、リンパ郭清でないといけないのでしょうか。」
⇒センチネルリンパ節生検とすべきです。
 
「③ ステージ、サブタイプについて 浸潤径20mmとなると、ステージ2になりますでしょうか?」
⇒違います。
 cT1c≦20mmなので 「20mmはcT1c」となり cT1c, cN0(だと思います), cStage1となります。
 
「また、Ki67が30%なので、ルミナールBになりますでしょうか?田澤先生が以前のコメントで20~30はグレーと仰っていましたので。」
⇒グレーゾーンだから、微妙なところです。
 
「術後の治療はホルモン療法のみで良いのでしょうか。」
⇒再手術での「病理全体の評価」を確認すべきです。
 
「副作用などを考えると、抗ガン剤は避けたいと思っております。」
⇒ルミナールタイプだから(例えBだとしても)「抗がん剤が必須」ではありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、
早速のご回答ありがとう御座います。
追加してお伺いしたいのですが、
① 再手術について
初回の手術では、乳頭近くの部分は、乳頭内部を少しくり抜いて取った。
と主治医が言っていました。
病理結果を見た際は、断端陰性でしたが、乳頭側が5ミリ程しかマージンが無い為、取り残しの可能性がある。
放射線だと乳頭が落ちてしまうかも、だから全摘するとの事です。
田澤先生も同じ判断をしますでしょうか。
再手術しないと、再発、皮膚転移の可能性が高いのでしょうか。
出来れば、再手術はせず、放射線とセンチネルリンパ生検だけ、というのは難しいでしょうか。
? センチネルリンパ生検について
センチネルリンパ生検すべき、で私も決心しました。
再手術が3/○なので、来週月曜日に主治医にお願いしてこようと思います。
質問ですが、温存手術後の再手術でも、問題無くセンチネルリンパ生検は出来るという認識でよろしいでしょうか。
温存手術の際に位置が変わってたりはしませんでしょうか。
主治医にお願いする前に、再確認しておきたいです。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「初回の手術では、乳頭近くの部分は、乳頭内部を少しくり抜いて取った。」
「病理結果を見た際は、断端陰性でしたが、乳頭側が5ミリ程しかマージンが無い為、取り残しの可能性」
⇒日頃から沢山手術をしている私が、この「コメント」を見て感じるのは…
 「乳頭内部をくり抜く」というのは「大げさな比喩表現」であり、「実際とは異なる」のではないかと思います。
 「乳頭皮膚まで直接浸潤」など無いと思います。
 ○大分「大げさな表現」を用いていますが、実際は「乳頭ぎりぎりまで切除した」ことを「大げさな表現」を使っているだけでしょう。
 
「田澤先生も同じ判断をしますでしょうか。」
⇒私は「乳頭への直接浸潤など殆ど無い」事を知っています。(経験的に)
 
 「乳頭部近く」に存在していても、「乳頭を超えて対側まで乳腺を切除」することで「断端陰性にできる」のではないかと思います(実際の手術所見や病理を見ていないので、確信するわけにはいきませんが)
 
「再手術しないと、再発、皮膚転移の可能性が高いのでしょうか。」
⇒皮膚転移はないでしょうが、「断端陽性」であれば「乳房内再発のリスク要因」となります。
 
「出来れば、再手術はせず、放射線とセンチネルリンパ生検だけ、というのは難しいでしょうか。」
⇒乳頭側断端陽性であれば「全摘するかはともかく」乳頭側追加(部分)切除はした方がいいとは思います。
 
「温存手術後の再手術でも、問題無くセンチネルリンパ生検は出来るという認識でよろしいでしょうか。」
⇒できます。
 私の「生検(部分切除を含む)後のセンチネルリンパ節生検」の経験からは「何ら問題無」です。
 
「温存手術の際に位置が変わってたりはしませんでしょうか。」
⇒通常は問題ありません。