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若年性乳がんについて

[管理番号:2726]
性別:女性
年齢:22歳
田澤先生、はじめまして。
以前からこちらのQ&Aを拝見し参考にさせていただいて
おります。
宜しくお願い致します。
私はつい先日、大学を卒業したばかりの22歳です。
半年前、生理前に胸が張っていたためふと乳房に触れたところ、右胸にしこりを感じ、すぐに乳腺専門の病院でエコー、触診の検査をしていただいたのですが、症状としても「胸の形に左右差がない」「分泌物などがない」「ひきつれなども見られない」ということで、「乳腺症」だろうと診断いただきました。
また、身内にがんを患った人間がいないというのも理由として挙げられ、
とりあえずは経過観察でよいとのことで、1年後また来てくださいとのことでした。
一旦は私もそれで納得していたのですが、半年ほどたった先日、やはりしこりの形に凸凹があること、乳房痛はあっても、しこり自体には生理前だけに痛みを感じることなどが気になり、境界も曖昧であるように感じたため、また別の乳腺専門の病院で検査をしていただきました。
マンモではしこり部分はわからなかったのですが、
エコー検査の中で、しこりと思われる部分に少し血流が見られること、
そしてパラパラと石灰化が見られるとのことで、その場で急遽針生検を行いました。
お医者様は、「乳腺症だとは思うけれども、不安な部分があったため一応針生検を行いました」とおっしゃっておられました。
ちなみに、触診によるしこりの大きさは1.5~2cmとのことです。
やはり、これは悪性の乳がんの可能性が高いでしょうか。
血流、石灰化は半年前のエコー画像では特に指摘はされませんでした。
また、乳腺症によるしこりには痛みが必ずあるというのを聞いたのですが、痛みが生理前にしかないしこりは考えられないのでしょうか。
検査結果は明後日わかる予定なのですが、とても冷静ではいられず、特に若年とのことで非常に不安を感じております。
元々心配性、考えすぎる性格で、ここ数日生きた心地のしない毎日を過ごしております。
私はまだ、父や母と長生きがしたいです。
母がとても心配しているのも見ててつらく、また気持ちの行き場がなくこちらに書かせていただきました。
田澤先生、お忙しいとは存じますが、宜しく御願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
乳癌を「本気で」心配されている様子が伝わってきます。
ただ、幸いに、私のfirst impressionは「乳癌では無い」です。
そう感じた理由はいくつかあります。
①22歳という年齢… 疾患を推測する際に、やはり年齢は重要な要素です。
乳癌は低年齢化しているとはいえ、「20代前半」は相当稀です。
②しこり自体に生理前に痛みを感じる… 「いかにも」乳腺症という印象です。
③医師の「乳腺症だとは思うけど…」という発言… これは臨床所見(画像所見を含む)が、実際に「乳腺症」だと思っている(ただ、万が一があってはいけないから検査を敢えて行ったという気持ちが表れています)
 
「しこりの形に凸凹がある」「乳房痛はあっても、しこり自体には生理前だけに痛みを感じる」
⇒これはむしろ「乳腺症に特有な症状」といえます。
 
「境界も曖昧である」
⇒乳腺症の特徴でもあります。
 
「エコー検査の中で、パラパラと石灰化が見られる」
⇒これは誤りです。
 エコーで「石灰化を診断」してはいけません。
 マンモで異常が無いのだから、「エコーで石灰化が見えた」という表現は「何の意味もない」所見です。(検査技師さんの所見でしょうか?困ったものです)
 
「その場で急遽針生検を行いました。」
「お医者様は、「乳腺症だとは思うけれども、不安な部分があったため一応針生検を行いました」
⇒やはり、(ご本人が心配していることもあり)念のために行ったという感じだと思います。
 ○私も「患者さんが不安に思っていれば」癌を疑わなくても積極的に針生検(マンモトームでさえも)しています。
 「不安に思って過ごす」よりも絶対にその方がいいです。
 「良性を良性と(確定)診断すること」は、とても重要なことです。
 
「やはり、これは悪性の乳がんの可能性が高いでしょうか」
⇒癌では無いと思っています。(冒頭でコメントした通り)
 
「血流、石灰化は半年前のエコー画像では特に指摘はされませんでした。」
⇒考え過ぎです。
 「血流」は、いつも測定するものではありません。(積極的に腫瘍を疑った場合などに行うだけです) ♯半年前には「血流を測っていなかっただけ」だと思います。
 「石灰化」はエコーで判断している事自体、誤りです。全く無意味です。
 
「また、乳腺症によるしこりには痛みが必ずあるというのを聞いた」
⇒これも「完全な誤り」です。
 「乳腺症」は(女性ホルモンにより)「乳腺が線維化を起こして硬くなる」ことが本質です。
  痛みを伴わないことは、よくあることです。
「痛みが生理前にしかないしこりは考えられないのでしょうか。」
⇒「痛みが生理前にしか無い」ことこそ、「典型的な乳腺症」と言えます。
 ♯今週のコラム 4回目「卵巣が支配している」を是非参照してください。
 
「検査結果は明後日わかる予定なのですが、とても冷静ではいられず、特に若年とのことで非常に不安」
⇒乳腺症だと思います。
 心配のし過ぎです。