乳がんプラザ|乳がんの手術は江戸川病院・東京


[管理番号:400]
性別:女性
年齢:70歳

はじめまして。

実母が4月に、乳がんで右乳房とリンパ節を全摘しました。

退院して、これからの治療方法で迷っています。

先生からは、ホルモン療法でも効きやすい癌だろうけど、教科書どおりだと、化学療法とホルモン療法どちらもしたほうがよいと言われたそうです。

2日後に決定しないといけないそうで、今回ご相談させていただきました。
 

先生からもらった結果のメモには、
ER 陽性 
PgR 陽性  
HER2陰性 2+
MIB1(陽性率?)22.2%
腫瘍悪性度 2
腫瘍大きさ1.9センチ
リンパ節転移 13個中2個あり
ルミナルB
とありました。
 

本人は、抗がん剤治療で髪の毛が抜けたりと、精神的につらいのは耐えられないと思うので、ホルモン療法ですすめていきたい、と思っています。

ただ、家族の中には、完治の可能性が高い、化学療法もしたほうがいい、と意見が分かれています。

どちらの治療方法が良いと思われますか?ご意見いただけますでしょうか?よろしくお願い申し上げます。
(2015年5月の質問)

 

田澤先生からの回答

 おはようございます。田澤です。
 内容は良く解りました。
 正直、私からみると「全く迷い」はありません。

状況の確認

ER 陽性 
PgR 陽性  
HER2陰性 2+
MIB1(陽性率?)22.2%
腫瘍悪性度 2
腫瘍大きさ1.9センチ
リンパ節転移 13個中2個あり
ルミナルB
   ↓
 これらを紐解くと
 pT1c, pN1a, luminal type
★ここでMIB1(=Ki67)が22.2%であり、luminal Bとしていますが、『実際のところ、luminal Aに限り無く近いluminal Bか、もしくはluminal A』としていいと思います。
 St.Gallenという『乳癌の世界的会議』がありますが、今年の見解では 
 Ki67(MIB1)の値によるluminalAとBを分ける最小値は20%以下とする意見は15%
 Ki67(MIB1)の値によるluminalAとBを分ける最小値は20-30%の間とする意見が36% でした。

○内容が詳しくなって申し訳ありませんが、『一昔前は、Ki67の値を14%とか20%でluminal AとBを分けていた』⇒『現在はむしろ25%とかluminal Aの範囲が広がっている』のです。
質問者(のお母さん)の場合もKi67が22.2%でluminal Bとなっていますが、(上記、国際会議の意見としては)『luminal A相当』とする方が、正しいと思います。(つまりluminal Bといているのは古い基準)

luminal AとBに何故分けるか?

 これは、「化学療法の適応」基準のためです。

 大雑把に言えば、
 「luminal Aであれば、(リンパ節転移にかかわらず)化学療法は効果が無いため、ホルモン療法単独」に対し、
 「luminal Bとすると(リンパ節転移にかかわらず)化学療法の(上乗せ)効果が期待できるとし、ホルモン療法+化学療法」が適応となるのです。
 

回答

「先生からは、ホルモン療法でも効きやすい癌だろうけど、教科書どおりだと、化学療法とホルモン療法どちらもしたほうがよい」
⇒私はこの意見には反対です。
 (上記で記載したように)今の基準(St. Gallen 2015)からすると、実はluminal Aであり、「化学療法の上乗せ効果は、それほど期待できない」と思います。
 当然、ホルモン療法単剤です。

◎しかも、術後補助療法(再発予防)としての化学療法の効果は「年齢と共に低下」し、「70歳以上では有効性は不明」なのです。
「患者さんが希望」すれば、「化学療法をする事が誤り」ではありませんが、「勧める」根拠には乏しいのです。
 

「本人は、抗がん剤治療で髪の毛が抜けたりと、精神的につらいのは耐えられないと思うので、ホルモン療法ですすめていきたい、と思っています。」
⇒これは当然ホルモン療法単剤とすべきです。

 私であれば、全く迷いません(根拠は上記のとおり)
 

「家族の中には、完治の可能性が高い、化学療法もしたほうがいい、と意見が分かれています」
⇒全くの誤解です。

 質問者(のお母さん)のケースでは「化学療法をすることでそれ程の利益」はありません。
 

◎唯一「化学療法をすることが、根治のために推奨」するケースが「HER2陽性」で行う『ハーセプチン+(通常の)化学療法』です。
 これはターゲットがしっかりしていて、「治療効果が十分に狙えます」
 

★但しHER2陽性の定義には、注意が必要です。
免疫染色で

  • HER2 0~1:陰性
  • HER2 2+ ⇒必ずHER2-FISHによる追加検査が必要です。(実際には2割程度しか陽性はありません)
  • HER2 3F :陽性

 

○質問者(のお母さん)の場合にはHER2 2+とありますが、HER2-FISHはやっていないのでしょうか?
 HER2 2+を陽性と判断するのは『絶対に誤り(80%は実際は陰性)』です。
 

◎まとめ
 通常の化学療法の適応は無いと思います。

 HER2 2+なので『HER2-FISHを是非やるべき』です。
 もし陽性であれば、「ハーセプチン(分子標的薬)+(通常の)化学療法」の適応がでます。
 この場合は「ご家族の治療への熱意」と「患者さん本人の希望」を天瓶にかけてもいいでしょう。





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