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ホルモン治療について

[管理番号:3450]
性別:女性
年齢:47歳
こんにちは。
乳がんと診断されてから、こちらで色々と勉強させていただき、自分の病気を理解して、落ち着いた気持ちで手術、治療を受けることができました。
このような場があり、本当にありがたかったです。
7月に温存手術を受けまして、現在放射線治療中です。
今後のホルモン治療についてご意見いただければと思い、質問させていただきました。
私は、元々子宮筋腫(多発性)があり、2004年に核出手術を受けました。
その後経過観察を続けておりましたが、徐々に再発が進み、多量出血や膨満感、他臓器への圧迫など自覚症状も悪化してきました。
血液検査(FHS検査?)をしたところ、まだまだ閉経しなさそうとの事で、あと何年もどんどん悪化する自覚症状には耐えられそうもないと全摘手術を受ける方向で考えていたところ、乳がん検診で突如乳がん疑惑が発覚しました。
針生検の結果、乳がんが確定し、当然ですがこちらを先に治療する事になりました。
クリニックで検診を受けていましたが、カルテが共有されていた方がよいと思い、5月に婦人科でかかっている病院へ転院しました。
移った病院で超音波検査を受けたところ、腫瘍の大きさは1.1cmでした。
手術まで2ヶ月待つ間に、先にホルモン治療を始めることになりました。
5月からリュープリン、6月からタモキシフェンを始めました。
針生検と術後の病理結果は下記です。
2016年4月 針生検
Invasive ductal carcinoma
核グレード:Grade 1
ER:80%(中~強)
PgR:80%(強)
HER2:score 1+
Ki67:1-2%
2016年7月 術後病理結果
Invasive carcinoma of the
breast, Bp+SNB
Post-NAC:Grade 1a
腫瘍サイズ:
マクロ:0.4×0.3cm
ミクロ:浸潤癌 0.8×0.5×0.6cm
脈管侵襲:ly0, v0
リンパ節転移:Negative (0/2) by
SNB
核グレード:Grade 1
切除断端:Negative
ER:50-60%(弱~中)
PgR:30-40%(弱~中)
HER2:score 0
Ki67:<1%
乳腺科の主治医は、子宮筋腫を考慮しなければ、タモキシフェン5年、または
リュープリン2年+タモキシフェン5年でもいいと思うと言っています。
子宮筋腫の事を考えると、タモシキフェンと閉経年齢までリュープリンを使用し逃げ切るか・・・と、婦人科の先生の意見と子宮の状態を経過観察しながら考えましょうという感じでした。
9月に婦人科を受診予定なので、婦人科の先生にももちろん聞きますが、ぜひ田澤先生のご意見もお伺いできればと思います。
本件以外にもいくつか質問があるので、下記に記したいと思います。
1)先生でしたら、私のようにひどい子宮筋腫のある患者に対してどのようなホルモン治療を勧めますか?リュープリンを使用するとしたら何歳まで使用して、その後どのような薬を使用しますか?
2)婦人科領域では、リュープリンは6ヶ月しか使えないが、乳がん治療目的だと何年でも使えるとの事。
長期間(例えば5年以上)使用しても、体への影響等、特に問題はないのでしょうか?(骨量の低下等あるようですが、
逆にタモキシフェンは骨量を増やすので、併用した場合どちらが強く作用するかは試してみないと分からないと乳腺科の主治医は言っています。)
2)針生検の病理結果と術後の病理結果でホルモン感容体がだいぶ下がりましたが、こういうことはよくあるのでしょうか?多少低くなりましたが、ホルモン治療の効果は期待できますか?
3)診断名にある「Bp+SNB」とはどういう意味ですか?
4)転院時の超音波測定の腫瘍の大きさは1.1cmでしたが、摘出した腫瘍は0.8cmでした。
主治医はホルモン治療の効果があったと言っていますが、
Post-NAC:Grade 1aというのは、
軽度の効果という事ですよね?超音波での計測は多少の誤差はあるかと思いますが、2ヶ月で3mmも小さくなったのであれば、かなり効果があったのではないでしょうか。
子宮筋腫の方は、リュープリン開始前は下腹部を触るとごろごろと筋腫に触れ、お腹がパンパンに膨れていましたが、現在はお腹もへこみ、下腹部で触れる筋腫の大きさも明らかに小さくなっていることが感じられます。
子宮筋腫にはかなり効果があるようです。
出血がない事だけでもストレスが減りました。
5)区の乳がん検診で2年に1回マンモグラフィー&触診、間の年に自己負担で
マンモグラフィー&超音波検査をしていました。
しこりというか乳腺が広範囲に固い部分があって気になっていましたが、毎年問題ないですねと言われていました。
Ki67が<1%ということでか
なり進行スピードの遅いがんとの事ですが、腫瘍が1.1cmになるまでには相当な年月を要しますよね?今まで一度もマンモグラフィーには写ったことがありませんし、超音波でも写っていませんでした(今年初めて写った) これは診断能力の低さによるものでしょうか?結果的にはリンパ節への転移もなかったのでよかったですが、毎年検診を受けていたのにも関わらず、浸潤する前に見つけられず非常に不本意です。
長々と申し訳ありません。
お忙しいところ恐縮ですが、ご教示いただけますと幸いです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
早期乳癌、何も心配いりません。
「子宮筋腫の事を考えると、タモシキフェンと閉経年齢までリュープリンを使用し逃げ切るか・・・と、婦人科の先生の意見と子宮の状態を経過観察しながら考えましょうという感じ」
⇒LH-RHagonist(リュープリン)併用のタモキシフェンをまずは5年です。
 その間に「子宮筋腫」がおちつけばそれでいいし、もしも「子宮筋腫が悪化」するなら「子宮全摘を考慮」でしょう。
「1)先生でしたら、私のようにひどい子宮筋腫のある患者に対してどのようなホルモン治療を勧めますか?リュープリンを使用するとしたら何歳まで使用して、その後どのような薬を使用しますか?」
⇒上記通りです。
 5年投与して終りです。(早期だから、タモキシフェンの10年投与やアロマターゼインヒビターへのスイッチは必須ではありません。)
「長期間(例えば5年以上)使用しても、体への影響等、特に問題はないのでしょうか?」
⇒骨密度は定期的にチェックすればいいのです。
 閉経前は、そもそも高値だから5年投与で(骨粗鬆症など)問題になることはおそ
らくありません。(いずれにせよ、定期的にチェックすればいいだけの話です)
「針生検の病理結果と術後の病理結果でホルモン感容体がだいぶ下がりましたが、こういうことはよくあるのでしょうか?」
⇒よくあります。
 こう考えてみましょう。
 癌細胞の中に「ホルモン療法が強く効くタイプ①」と「ホルモン療法が中等度効くタイプ②」が混じっているとすれば、術前内分泌療法で①が強くダメージを受けて(相対的に)②の割合が高くなる=感受性の低下
「多少低くなりましたが、ホルモン治療の効果は期待できますか?」
⇒当然です。
「3)診断名にある「Bp+SNB」とはどういう意味ですか?」
⇒乳房温存+センチネルリンパ節生検の略です。
「2ヶ月で3mmも小さくなったのであれば、かなり効果があったのではないでしょうか。」
⇒術前治療効果は「効果の有った細胞の割合」なので「腫瘍径の縮小」とはパラレルではない(例えば、腫瘍径は変化無くても、中身がすかすかになるなど)
「かなり進行スピードの遅いがんとの事ですが、腫瘍が1.1cmになるまでには相当な年月を要しますよね?」
⇒検診の精度の問題があるので一概には言えませんが…
 1.1cmで見つかったわけだから、十分に「早期発見=検診してよかった」 と言えます。