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非浸潤性乳がん治療法

[管理番号:4584]
性別:女性
年齢:43歳
田澤先生
乳がんに対する先生の丁寧なご説明、大変参考になり
今回私も質問させて頂ければと思いこちらのサイトにて連絡申し上げます。
私は南ヨーロッパに在住しており、言語の問題もありセカンドオピニオンが取りづらい環境にある事もあり、こちらの治療法で進めて問題ないか、先生のご意見を頂戴出来ればと思っております。
現在の状況
2016年12月下旬:日本帰国の際に人間ドッグの婦人科検診でマンモグラフィーと触診検査受診
2017年1月下旬: 日本の母より、ドックの結果が左胸に石灰化が見つかりあり精密検査要との事と連絡あり
2017年2月中旬: トモセンシシスマンモグラフィー、及び超音波でBiRadカテゴリー 4 判定
2017年3月上旬: ステレオガイド下マンモトーム生検受診→
非浸潤乳管がんの判定
2017年3月下旬: 脇超音波(腫れ等無し)及び造影MRI検査受診
2017年4月(上旬)日: マンモグラフィー上では1cm弱と思われていた
石灰化病変は造影MRI上では3.8cm X 1.3cmと判明
マンモトーム生検 組織検査結果は下記です
ホルモン受容体あり (Estrogen +90%, Prostrogen +80%)
Her 2 陰性
核グレード 2
Ki67 10%
担当医に提示されている治療法
手術法:乳房温存法 (4月20日辺りを予定)
    病変が当初より広い範囲に認められる為、超音波で腫れ等は
    見られないが、術中センチネルパネル生検を実行 
   (尚、入院期間は一泊、もしくは午前中の手術の場合は日帰り
    だそうです。)
術後: 放射線治療(25回)
ホルモン療法:タモキシフェン 5年もしくは10年
質問1)上記の治療法は先生からご覧になられて如何でしょうか?
Q&Aでは拝見する限りあまり相違ないように思われます。
質問2)当初マンモグラフィーで見えていたものより、MRIで見える病変が広範囲に石灰化が広がってると思われることに(よくある事と聞きますが)非常に心配しております。
針生検に比べ、マンモトーム生検(検体10本採取)は術前と術後の病理判断の乖離が少ない読みましたが、術前判断が非浸潤でもやはり術後に浸潤している判断が下されるケースは多いのでしょうか?
(石灰化がコメド型との記載はありませんでした)
質問3)私は4年前に多発性子宮筋腫の手術をしており、子供の頭程のサイズのもの(13cm)以外にも20個程筋腫を摘出しております。
まだ子宮が残ってる事と、又多発性筋腫が少しずつ育って来ている事もあり、タモキシフェンの服用で爆発的に筋腫が増加する事と子宮体がんの可能性を危惧しております。
もちろん乳ガンの再発の方を優先に考えホルモン療法は行いますが、私のような多発性筋腫をもちやすい体質の人へのホルモン療法へのアドバイスを頂戴頂ければ幸甚です。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「質問1)上記の治療法は先生からご覧になられて如何でしょうか?Q&Aでは拝見する限りあまり相違ないように思われます。」
⇒術式や術後放射線照射は同じですが、(非浸潤癌で)ホルモン療法は行いません。
「術前判断が非浸潤でもやはり術後に浸潤している判断が下されるケースは多いのでしょうか?(石灰化がコメド型との記載はありませんでした)」
⇒多くはありません。
 古いデータを探すと(私が2010年に日本乳癌検診学会で発表したデータでは)非浸潤癌の正診率(ST-MMTで非浸潤癌⇒手術標本でも非浸潤癌)は93%でした。
 ♯この時点ではST-MMT 692症例でのデータです。(その後、症例数は実に3倍以上にはなっていますが、正診率は調べていません)
「私のような多発性筋腫をもちやすい体質の人へのホルモン療法へのアドバイスを頂戴頂ければ幸甚です。」
⇒非浸潤癌ならば、タモキシフェンをやらなければいいのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
こんにちは
以前非浸潤癌の診断された際、ご意見を伺いました海外在住の者です。
無事に手術が終了し、病理検査の結果について、再度ご意見を頂戴出来ればと思い連絡申し上げます。
乳ガン発覚までの状況 (以前の質問の際にも同内容を記載)
2016年12月下旬 日本帰国の際に人間ドッグの婦人科検診でマンモグラフィーと触診検査受診
2017年1月下旬  日本の母より、ドックの結果が左胸に石灰化があり精密検査要との事と連絡あり
2017年2月中旬  トモセンシシスマンモグラフィー、及び超音波でBiRadカテゴリー 4 判定
2017年3月上旬  ステレオガイド下マンモトーム生検受診→ 非浸潤乳管がんの判定
2017年3月下旬  脇超音波(腫れ等無し)及び造影MRI検査受診
2017年4月3日  マンモグラフィー上では1cm弱と思われていた石灰化病変は造影MRI         3.8cm X 1.3cmと判明
乳がん手術
2017年4月(下旬)日 乳房温存手術 及びセンチネルパネル生検を行う
病理結果:広範囲の非浸潤乳管癌
→ 脇のリンパへの転移無し
  切り取った病変サイズ 5.9cm x 4.3cm x 3.2cm
  14ブロック中、13ブロック中に非浸潤乳管癌を認める
  核異形度グレード2、及び3のコメド壊死を伴う広範囲のDCIS(一番大きい石灰化病変は0.9 x0.6cm)
  断端陽性(1箇所)
  ホルモン受容体あり (Estrogen +90%, Prostrogen +90%)
2017年5月(中旬)日 断端陽性 追加切除 (取り切れなかった場合は全摘の可能性あり)
病理結果
→ 断端陰性 マージン 1mm (特殊インク染色無 no ink on tumor)
全摘の必要はなく腫瘍科医と病理結果を元に治療計画を予定を立てて行くとの事
ここで質問です。
脇のリンパ転移も無く、すべて非浸潤だった病理結果には非常に安堵しております。
ですが断端陰性のマージンの件で不安になりました。
確かに2014年には
米国外科腫瘍学会と米国放射線腫瘍学会から発表されたガイドラインで
は特殊インク染色有無 (No Ink on Tumor)が、マージンの範囲より陰性基準となるとされているようです。
しかし2016年には、同学会よりDCISにおける切除陰性マージンは再発予防の観点から2mmが望ましいとされるとの発表があったようです。
広範囲の病変、グレード3を含む核異形度、及び断端が近い結果は
放射線治療を施しても、再発リスクは高くなる可能性が大きいでしょうか?
既に2度手術を行っておりますので、もう体への負担や感染等も考えると出来れば全摘手術は行いたくありません。
上記の結果において、全摘を行った方が有為に再発予防となる可能性が高くなるのなら全摘も考慮にいれなければいけないと思っております。
尚、当地(スペイン)の乳腺外科医は上記基準により断端はマージン1mmでも陰性と判断、組織残存の可能性は放射線治療で叩く方が有為だと考慮し全摘の必要は無いと判断された様です。
病理結果を持参し腫瘍科医と今後の治療について面談を行う前に、  
田澤先生のご意見を是非伺えればと思い、連絡申し上げました。
お忙しい中大変恐縮ですが、ご意見頂戴出来れば幸甚です。
何卒宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
非浸潤癌確定でなによりです。
「広範囲の病変、グレード3を含む核異形度、及び断端が近い結果は放射線治療を施しても、再発リスクは高くなる可能性が大きいでしょうか?」
⇒ここでいう「再発リスク」とは「局所(温存乳房内)再発リスク」のことですね?
(遠隔転移再発は無関係です)
 非浸潤癌の核グレード等、気にする必要はありません。
 断端陰性であれば、無関係です。
「断端はマージン1mmでも陰性と判断、組織残存の可能性は放射線治療で叩く方が有為だと考慮し全摘の必要は無いと判断」
⇒全摘には敵わない(全摘では根治です)ですが…
 
「田澤先生のご意見を」
⇒放射線でいいでしょう。
 ☆そもそも「温存術を選択」した時点で「想定された範囲内」だということです。
 この結果で不安がるのであれば、「最初から全摘とすべきだった」ということになります。