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非浸潤ガンの診断が術後の組織検査で浸潤ガンに

[管理番号:2555]
性別:女性
年齢:56歳
はじめて相談いたします。
妻(56歳)が先日、某大学病院で、左胸全摘手術を受けました。
術前に行ったMRIの画像では、かなり広範囲に乳腺にそうように枝状に広がっており、マンモトーム生検で5カ所ほど細胞をとりました。
生検の結果では、5カ所とも非浸潤だったこともあり(ホルモン受容体陽性・HER2陽性・グレード3)、MRIの画像診断担当者も非浸潤でいいだろうということで、非浸潤ガンという認識で全摘手術、自己組織による同時再建を行いました。
手術中に行ったセンチネルリンパ節生検でも、転移が見つからず、安心してました。
ところが、1月後の昨日、組織検査の結果を担当医から聴いたところ、浸潤箇所が見つかったとのことでした。
しかも2センチ以上あるようで、HER2についてより詳しい検査が必要ということで、検査内容についての詳細は伺えませんでした。
再来週に治療方針を決めることになっています。
現時点での質問ですが、
術前に非浸潤ガンと診断されたものが術後に浸潤ガンの診断に変わることも10%ほどあると認識していましたが、これほどの腫瘍を見逃すことがあるものなのでしょうか?
担当医の説明によると、術前の組織検査の結果と術後の浸潤した部分の組織検査の結果がかなり違うこともあるようですが、そのようなものなのでしょうか? 特にHER2が陽性だった場合には、抗がん剤治療とハーセプチンによる治療が必須なので、とても気になります。
また、組織検査の結果が確定した段階で、詳しいデータをお知らせし、治療方針について、ぜひ先生のご意見をいただきたいと思います。
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「術前に非浸潤ガンと診断されたものが術後に浸潤ガンの診断に変わることも10%ほどあると認識していましたが、これほどの腫瘍を見逃すことがあるものなのでしょうか?」
⇒「最大病変」に気付かなかったのでしょう。
 
「担当医の説明によると、術前の組織検査の結果と術後の浸潤した部分の組織検査の結果が
かなり違うこともあるようですが、そのようなものなのでしょうか?」
⇒その通りです。
 非浸潤癌のサブタイプなど「完璧に無視」してください。
 大事なものは「浸潤部分のサブタイプ」です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日、このコーナーで相談させていただいた者です。
本日、組織検査の確定診断の結果が出ました。
やはり思いのほか浸潤径が大きかったのですが、前回田澤先生からいただいたご回答の通り、
術前のマンモトーム生検で非浸潤ガンと診断されたときの組織検査の結果とは大きく異なりました。
病院の方針とやらで、正確な数字を教えていただけない部分があるのですが、
ぜひ先生のご見解をうかがいたく再度相談させていただきます。
浸潤性乳管癌(硬癌)
浸潤径…最大6.8cm
切除断端…陰性
波及度…乳腺 他はなし
リンパ管侵襲 + ly2
血管侵襲  + v2
エストロゲン受容体 陽性 10%以上(正確な数字は病院の方針で開示
せず)
プロゲステロン受容体 陽性 10%以上(上に同じ)
Ki76…20%以下(上に同じ)
Her2…+1(陽性とはいえない程度)
組織学的悪性度 Grade2 (ただし核グレードは3)
Luminal A p T3(=6.8cm) N0 M0 p Stage IIB でした。
担当医からは、ホルモン療法(アロマターゼ阻害薬)と放射線療法(25回)を提案されました。
抗がん剤は必要ないとの判断です。
以下の点について質問させていただきます。
①上記のような状態の場合、先生も抗がん剤治療は必要ないのと判断されるでしょうか?
②無治療の場合に比べて、アロマターゼ阻害薬による上乗せ効果(できれば放射線照射による上乗せ効果)は、10年生存率、再発率でどのくらいあるのでしょうか?
③乳癌学会の診療ガイドラインによると、たしかに5cm以上の腫瘍があった場合には放射線治療の適用になっていますが、先生は必要だとお考えでしょうか?
以上、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
pT3(68mm), pN0, luminalA
「担当医からは、ホルモン療法(アロマターゼ阻害薬)と放射線療法(25回)を提案されました。抗がん剤は必要ない」
⇒抗ガン剤は不要です。
 
「①上記のような状態の場合、先生も抗がん剤治療は必要ないのと判断されるでしょうか?」
⇒不要です。
 
「②無治療の場合に比べて、アロマターゼ阻害薬による上乗せ効果(できれば放射線照射による上乗せ効果)は、10年生存率、再発率でどのくらいあるのでしょうか?」
⇒10年生存率への上乗せは「7%」
 10年再発率への上乗せは「18%」となります。
 放射線照射による「上乗せ」のデータは「あくまでも昔の術後療法が不十分であった時代」のものです。
 しかも「ザックリとしたデータ」しかありません。
 10%前後だとは思います。
 
「③乳癌学会の診療ガイドラインによると、たしかに5cm以上の腫瘍があった場合には放射線治療の適用になっていますが、先生は必要だとお考えでしょうか?」
⇒ガイドライン通りです。
 妥当だと思います。(効果と副作用のバランスから考えても)