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HER2陽性の手術不能乳癌の化学療法

[管理番号:4631]
性別:女性
年齢:68歳
 
 

質問者様の別の質問

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管理番号:4456「母の病状について

 
 
こんにちは。
以前、術前化学療法についてお問い合わせさせていただいた者です。
病理結果(針生検にて)硬がん 右側 転移なし(リンパはセンチネルをやっていないので不明)
ER(0,0%),PGR(0,0%),HER2(3+),MIB-1 labeling index 40 % Grade2
で、癌が10センチを越え、手術不能状態のため術前化学療法となっております。
先生に抗がん剤について「ハーセプチン+パージェタがベストである」とご教示いただいて、担当医にもCEF療法よりもハーセプチン優先でと意見したのですが結局通らず、
CEF1回目投与から7日後、好中球減少症を発症し緊急入院しています。
好中球や白血球などの血液疾患は、薬で回復したものの、感染症により二酸化炭素を吐き出せない状態になり、人工呼吸器を使用して肺炎の治療中です。
癌治療どころではなくなってしまいました。
CEFによるものかわからないのですが、不整脈もありこちらはお薬では改善されなかったため電気ショックを1回行い、今は安定しています。
先生にお聞きしたいのは治療の選択肢上の「適用外」というカテゴリーです。
母の癌は大きすぎるため「手術適用外」。
これは先生に説明していただいて理由がわかりました。
取り除けない可能性があるためですね。
主治医にしてみれば「ハーセプチン+パージェタ」は再発時に適用されるものであり、術前療法にたいしては「適用外」だとはっきりと言われました。
しかしながら、CEFやその後に控えているハーセプチン+パクリタキセル等が効かなくなってきた場合には「パージェタ」使用も考視野に入れなければならない。というのです。
再発用だと自ら言っておきながら、効かなくなってきたら使うかもしれないという矛盾に、非常に違和感を覚えます。
ならば何故初めから使用しないのかと。
CEFによる副作用でこのような状態に陥っていることもあり、すごく心がすっきりしないのです。
「適用」「適用外」というのはどのような基準で決まっているのでしょうか。
お医者様個人ですか?それとも病院の方針ですか?あるようでない癌センターとやらのガイドラインでしょうか。
それともう1点、今回発症した肺炎についてです。
まず風邪の症状がでました(発熱+咳、痰など)高熱が数日続き1度は外来にかかったものの「ただの風邪」と診断され(担当医は休みだったそうです)薬だけをもらって帰宅していました。
カルテをみてないのでしょうか。
(この時点で血液検査も何もしていません)
翌日、同じ病院で担当医にかかり「即入院」となりました。
この時点で、白血球600、炎
症の値は41だったそうです。
肺は全体がうっすらと白くなっており肺炎を併発していました。
入院4日後から人工呼吸器を使用しています。
ARDSとのことで、生存率は50%。
未だ大丈夫とはいえない状況と言われました。
感染の原因は不明です。
抗生剤では回復せず、ステロイド投与で若干の改善がみられましたがまだ肺はうすく靄がかかったままです。
この肺炎は、感染症が原因によるものなのでしょうか。
副作用による間質性肺炎の可能はありませんか?炎症の値は現在20台を推移しています。
先生がみられた患者様の中でこういった症状になられた方はいらっしゃいませんでしたか?症例が知りたいのです。
専門外になってしまいお答えいただけないかもしれませんがどうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
このメールを読んで驚きました。(衝撃を受けたと言っても過言ではありません)
抗癌剤治療で人工呼吸器とは!
私はかなりの数の抗癌剤(術前術後、再発もいろいろです)の経験がありますが、そこまで重篤なものはありません。
しかも、ここ江戸川に来てから3年過ぎましたが…
 (江戸川に来てからは)入院自体、一度もありません
○前回のメールで『手術不能状態については、1.皮膚浸潤(皮膚への拡がり)が今範囲で「手術で取りきれない」が正解のようです。』と、ありましたよね?
 つまり、現状「手術不能乳癌」ということで間違いないですよね?
「主治医にしてみれば「ハーセプチン+パージェタ」は再発時に適用されるものであり、術前療法にたいしては「適用外」だとはっきりと言われました」
⇒信じられません。
 担当医は、やはり(乳癌では)「素人」だということです。
 パージェタ(pertuzumab)の添付文章を見てください(今ではインターネットで簡単に見れます)
 (以下、添付文章からの抜粋)
 【効能・効果】
 ○HER2陽性の手術不能または再発乳癌
 お解りですか?
 質問者(の母)は「手術不能乳癌」ですよね?
 「適応外」という説明は「完全なる誤り」です。
「「適用」「適用外」というのはどのような基準で決まっているのでしょうか。」
⇒添付文章を見てください。
 「添付文章」こそ、法律なのです。
 どこかの生意気な医師が「海外の臨床試験で効いたから」などと、「おかしな治療」をしたとしても…
 最終的に「添付文章」の【効能・効果】から外れた治療をすることは「適応外」治療なのです。
 例)海外の臨床試験では「閉経前患者」に(閉経後が適応である)エキセメスタンと(閉経前が適応である)ゴセレリンを併用して成績が良いという結果があります。
   ただし、日本の適応では エキセメスタンの添付文章の【効能・効果】には閉経後乳癌と明記されています。
   つまり、(いくら、海外でのデータがあっても)日本の保険診療上「エキセメスタンは閉経前には使えない」のです。
   ♯それを平気で使っている医師がいるのです。(適応外治療)
「お医者様個人ですか?それとも病院の方針ですか?あるようでない癌センターとやらのガイドラインでしょうか。」
⇒質問者は「大きな勘違い」をしています。
 「適応」は保険診療を行う上での法律であり、「ガイドライン」とは、あくまでも「保険診療の範囲内で、(学会などが)推奨する治療」という位置づけです。
 つまり、保険診療を行う以上、「適応内診療」でなくてはならない(逆に言うと、
適応内診療を行っていれば医師は守られているが、適応外診療を行って「何かがあったら」医師は守られないのです)
 ♯「適応外診療」がガイドラインに盛り込まれる事は決してありません。
 ♯♯解り易く言えば、「添付文章にある適応」は「法律」であり、「ガイドライン」はあくまでも(法的拘束力は無いが)「医師自身を守る(治療に対して非難されない)ための「マニュアル」なのです。(全く「拘束力」が違います)
「この肺炎は、感染症が原因によるものなのでしょうか。」「副作用による間質性肺炎の可能はありませんか?炎症の値は現在20台を推移しています。」
⇒普通に考えれば…
 抗癌剤による「骨髄抑制」⇒「感染」はあるとは思いますが、
 普通の(感染による)肺炎にして経過が急すぎます。
 薬剤性の間質性肺炎かもしれません。
「先生がみられた患者様の中でこういった症状になられた方はいらっしゃいませんでしたか?症例が知りたいのです。」
⇒冒頭に示した様に…
 居ません。
 熱が出ることは(むしろ)当たり前ですが、「肺炎となる事自体」ありません。
 
★「適応内診療」「ガイドライン」という観点から言えば…
 アンスラサイクリン(CEF)もハーセプチンを用いた治療(ハーセプチン+パージェタも含む)も「適応内診療」です。
 ただし、「ガイドライン」からすれば、「ハーセプチン+パージェタ+ドセタキセル」が第1選択となります。
 そして、「HER2陽性の手術不能乳癌」で(適応外ではないが)「敢えて、アンスラサイクリンを先行させる」専門家はいないでしょう。
 私が推測するに…
 担当医のガイドラインは(手術不能乳癌ではなく)「通常の術前化学療法のガイドライン」ではないでしょうか?