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術前と術後の病理検査結果について(主にHER2です)

[管理番号:2960]
性別:女性
年齢:38歳
田澤先生
はじめまして。
どうぞよろしくお願い致します。
今月乳がんの乳房温存手術を受けました。
術前に受けた針生検の結果では
HER2 3+ ki67 18% でしたが
術後の病理結果では
HER2 1+ ki67 8% リンパ転移なし、浸潤部分は最大で3mm(腫瘍は2cm)ホルモン受容体が陽性
となっておりました。
[管理番号:2338「手術後の病理検査結果について」]の方の質問回答を拝見させていただくと
「術前針生検」と「手術標本」では「術前針生検」の方が正しいとのことでしたので
今回の私の場合も、術後のHER2 1+ではなく、術前のHER2 3+が正しいということでしょうか。
術前の病理結果と術後の病理結果では
術後の病理結果のほうが正しいとよく見るのですが
HER2に限っては違うのでしょうか
このように術前と術後、HER2が陽性や陰性にかわったりする事はよくあるのでしょうか。
術前はハーセプチンと抗がん剤治療をする予定でしたが
もうしなくていいと言われ不安になってきました。
病理のセカンドオピニオンにいくなど、私にできることがあれば教えていただけますでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
病理結果は基本的に「手術標本全体で見る必要」があり、当然「手術標本での評価が正しい」と言えます。
但し、免疫染色(ER, PgR, HER2, Ki67など)に関しては注意点が必要です。
針生検標本では、「小さい検体を、採取後すぐにホルマリン瓶で固定」するから「染色性がいい状態(生鮮食品で言えば新鮮な状態)が保存」されます。
それに対して、手術標本では「大きな検体を、(摘出後すぐにホルマリン固定するわけではなく)場合によっては、管理ミスで暫く保治されてから固定」されるわけです。
 つまり(生鮮食品で例えれば)「鮮度が悪くなってから固定される」可能性がでてきます。
 ○その施設の(手術標本の)管理状態によって異なりますが、「針生検よりも鮮度
がいい」ということは決してありません。
 Ki67も同様なのですが、「ER, PgR, HER2は(病変の)どこをみても同じ」であるのに対し「Ki67は(病変の部分によっては)高かったり、低かったりする」のです。
 だから、「Ki67は(針生検標本はあてにはならず)手術標本で評価すべき」となるのです。
○ただし、質問者の場合にはそもそも「浸潤径が3mm」という時点で「抗HER2療法を含む化学療法の適応外」です。
 
「今回の私の場合も、術後のHER2 1+ではなく、術前のHER2 3+が正しいということでしょうか。」
⇒その可能性はあります。
 ただし、本当に(術前に)「針生検標本でのHER2 3+との評価」が正しいのか再検討(場合によってはFISHオーダー)すべきです。
「術前の病理結果と術後の病理結果では
術後の病理結果のほうが正しいとよく見るのですがHER2に限っては違うのでしょうか」
⇒冒頭のコメント通りです。
 免疫染色に関しては「針生検の標本の方が正しい」と言えます。
 
「このように術前と術後、HER2が陽性や陰性にかわったりする事はよくあるのでしょうか。」
⇒よくはありません。
 
「術前はハーセプチンと抗がん剤治療をする予定でしたがもうしなくていいと言われ不安になってきました。」
⇒「HER2が陽性かどうか」ではなく、「浸潤径3mm」ということで適応外となります。
 
「病理のセカンドオピニオンにいくなど、私にできることがあれば教えていただけますでしょうか。」
⇒治療方針には無関係となるので不要と思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

お忙しい中、早々に教えていただき、ありがとうございました。
丁寧に教えてくださったので、とてもわかりやすかったです。
早速主治医にFISH検査をしていただけるようお願いしました。
結果は1.4で陰性でした。
すでに始めておりますが、今後は放射線治療、ホルモン治療を行う予定になりました。
見ず知らずの私に知恵を授けてくださり、本当にありがとうございました。
不安も和らぎ、とても心強かったです。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
すっきりして、とてもよかったです。
浸潤径3mm , luminalA 全く心配ありません。