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抗HER2療法(アンスラor 非アンスラ)の選択について

[管理番号:1796]
性別:女性
年齢:52歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
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管理番号:1711「術後補助療法について

 
 
先日はお忙しい中、早速に回答下さいまして、ありがとうございました。
その後FISHの結果が陽性と出て、先日主治医よりこれからの治療についての説明を受けました。
①TC(3か月)+ハーセプチン(1年)+ホルモン療法(5年)
②AC(3か月)+タキサン系(3か月)+ハーセプチン(1年)+ホルモン療法(5年)
①と②のどちらかを撰ぶように言われていますが、とても迷っています。
私としては抗がん剤への不安から短期の①にしたいのですが、主治医より先に示されましたのが②であり、こちらの方が効き目があると言われています。
私には①で十分であるのか、それとも②を選んだ方が良いのか? この2日で決めなければなりません。
田澤先生はどちらが良いとお考えでしょうか。
又、無治療の場合、①、②をそれぞれ選択した場合の生存率、再発率はどうなのかをお示し下さると参考にになります。
お忙しいところ度々申し訳ありません。先生からご意見頂ければ、迷うことなく治療にむかう事ができます。宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
FISH陽性でしたか。
この場合には前回回答したようにpT1bではありますが、「抗HER2療法」をお勧めします。
「私には①で十分であるのか、それとも②を選んだ方が良いのか? この2日で決めなければなりません。」
⇒私なら「全く迷うことなく」①とします。
 ②は所謂「スタンダードレジメン」であり、過去長い期間の「抗HER2療法のスタンダード」でした。
 ただ、アンスラサイクリン(この場合にはACのA:アドリアマイシン)による心毒性を含めた副作用の問題があり、「low riskに対する非アンスラサイクリンレジメン」が好まれるようになり、現在エビデンスが構築されつつあります。
 今、行われている「非アンスラサイクリンレジメン」は 
A)
パクリタキセルとハーセプチンを毎週投与(12回)⇒ハーセプチン単剤(14回)
「最初の12回の毎週通院」は「通院は大変」ですが、「副作用は格段に楽」です。
その後のハーセプチン単剤には副作用はありません。
B)
タキソテール+エンドキサン+ハーセプチン(4回)⇒ハーセプチン単剤(14回)
 これは、「全て3週毎通院」となります。
 ①と比較すると「通院回数が少ない」ことが利点ですが、「副作用は①よりは、やや強い」と言えます。
 効果に関しては①との直接比較はありませんが、「パクリタキセル(毎週12回)=ドセタキセル(3週投毎投与4回)」と考えると②の方が「エンドキサン分」上乗せされると思います。
C)
タキソテール+カルボプラチン+ハーセプチン(6回)⇒ハーセプチン単剤(12回)
この中でB)の選択肢を提示されているわけですが、(B)は「江戸川病院でのlowriskに対する抗HER2療法のスタンダード」でもあります。
 
「主治医より先に示されましたのが②であり、こちらの方が効き目があると言われています。」
⇒直接比較のデータが有るわけではありません。
 単に「タキサン単剤よりはアンスラサイクリン+タキサンの方が強力だろう」というイメージ(感覚的には正しいと思いますが)と「歴史的重み」からの判断にすぎません。
 
「無治療の場合、①、②をそれぞれ選択した場合の生存率、再発率はどうなのかをお示し下さると参考にになります。」
⇒上記でコメントしたように①と②の差についてはデータがありません。

  10年再発率 10年生存率
無治療(ホルモン療法無し) 19% 91%
ホルモン療法単剤 12% (上乗せ7%) 93%
ホルモン療法+抗HER2療法 7% (更に上乗せ5%) 94%

①と②の差は「あったとしても」かなり微妙なものとなる筈です。
○考え方としては「質問者のようなlow risk」では、そもそも「化学療法による上乗せの数字が小さい=5%」となります。
 そうすると、「①と②の差が存在するとしても、かなり圧縮」される筈です(想像するに1%前後)
 これが「high riskの方」であれば、そもそもの「化学療法による上乗せの数字が大きい=40%」だとすれば、①と②の差も5%位はでてくるかも知れないと思います。