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抗がん剤における白血球低下および、病理についての質問

[管理番号:3642]
性別:女性
年齢:43歳

先生、初めてご相談申し上げます。
私は5月末に乳がんと診断され、7月末に皮下全摘、同時再建術を受けました。
トリプルネガティブとのことで、現在は抗がん剤治療中です。
御相談は2点あります。

ウィークリーパクリタキセルを点滴していますが、わずか2回受けたところで白血球が
基準範囲の7割程度
(3300μL~のところ2802)になり、1週空けたものの今度は好中球が低く(42%~のところ40.9%)足踏み状態です。
主治医からは次回受けることができる状態なら、75%の量でやりましょう、と言われましたがそれでも効果があるのでしょうか。

もう1点が、病理診断の件です。
術後、病理診断が出て、主治医からは「断端に近い所まで癌があった。
部分切除じゃなく、全摘にしてよかった」と言われました。

病理報告書を下に記します。
Breast(rt):Invasive ductal carcinoma
Papillotubular carcinoma with an intraductal component involving the mammary tissue and the adjacent adipose tissue(2,4,7,12),20×13×22mm in size,pT2 nuclear grade2,ly1,v1,Immunohistochemically,the carcinooma cells are negative for estrogen receptor(0%) or progesteron receptor(0%).HER2 is not expressed(score 0).
MIB-1 labeling index is approximately 10%.
The lateral surgical margin seems to be partly involved by the intradutal component of the carcinoma cells(2).

これは断端陽性、ということではないのでしょうか。
残った癌細胞があるということでは…?
抗がん剤も足踏み中ですし、大変心配です。
先生のご意見をお伺いできればと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「ウィークリーパクリタキセルを点滴していますが、わずか2回受けたところで白血球が基準範囲の7割程度(3300μL~のところ2802)になり、1週空けたものの今度は好中球が低く(42%~のところ40.9%)足踏み状態です。主治医からは次回受けることができる状態なら、75%の量でやりましょう、と言われましたがそれでも効果があるのでしょうか。」
⇒weekly PTXであれば白血球は2000以上あれば十分だと思いますが…

「これは断端陽性、ということではないのでしょうか。残った癌細胞があるということでは…?」
⇒全摘しているのだから問題ありません。
 Intraductal componentというのは「乳管内」成分だから「乳腺を全摘している」のだから残っている筈がありません。(病理医は、手術の状況を見ている訳ではないので仕方がないのです)

 
 


 

質問者様から 【結果2 】

骨転移と診断
性別:女性
年齢:48歳
病名:骨転移
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]

再発治療としてAC療法

<Q&A結果>

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

トリネガ骨転移について
性別:女性
年齢:48
病名:骨転移
症状:症状はとくになし
投稿日:2020年6月22日

管理番号 3642
先生、4年ほど前に質問させていただきました。

2016年に右乳がんと診断、しばらくは何事もなく過ごしていましたが、今年2月に骨転移と診断されました。

PET-CT等の結果、現在胸骨に7センチほどのガンがあるということです。

トリプルネガティブではあるものの早期に治療できたと思っていたので、とてもショックです。

でも11歳の子どもが成人するまで、ただ生きて成長を見守りたい、それさえも私にはゆるされていないのか、と絶望しています。

少しでも長く生きるためなら、どんな治療にも臨むつもりです。

先生にアドバイスいただきたいのはその治療についてです。

初発の時はウィークリーパクリタキセルのみ。
24回投与を受けました。

再発治療として今AC療法とランマークを4週に1度のペースで受けています。
当初CA15-3が56.7 でしたが、4回終了した現在、34.6までは下がっています。
放射線治療は受けた経験がありません。

AC療法は心臓に負担があるため最大8回まで、と主治医から聞いています。

主治医はその最大数までこの治療を続ける方針のようです。

心臓に負担があるものをMAXまで使うべきかも不安ですが、遺伝子検査の結果、BRCAもマイナス、HER2も0パーセントなので、使える薬が本当に限られており、どのように治療していくのが一番長生きできるのか、ぜひお知恵を貸していただけないでしょうか。

先生のQ&Aで見かける、bevacizumab+paclitaxelの治療は、一度パクリタキセルで治療している私には適応外でしょうか。

今のところ胸骨のみの単独転移なので、重粒子などの自費治療にも臨むべきかも悩んでいます。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「心臓に負担があるものをMAXまで使うべきかも不安」
⇒効果があるのであれば、是非続けるべきです。(主治医に賛成)

「遺伝子検査の結果、BRCAもマイナス、HER2も0パーセントなので、使える薬が本当に限られており」
⇒PD-L1も調べていますか?

「先生のQ&Aで見かける、bevacizumab+paclitaxelの治療は、一度パクリタキセルで治療している私には適応外でしょうか。」
⇒とんでもない!

 適応「ど真ん中」です。
 皆さんの勘違いに「以前使った抗がん剤は使えない」というものがあるようですが…
 パクリタキセルは術後補助療法で使用しただけで(そのおかげで)「4年間癌の再
発を抑えていた」立役者とも考えることができます。

 つまり、「その薬剤を使用している最中に病勢悪化したら、(その薬剤は)再度使用できない(しても意味がない)となりますが、今回は全く違うのです。

★まずは(画像上)完全緩解を目指しましょう。
 そのためにはanthracyclineで十分に叩きながら、PD-L1も測定しておきましょう(2週間程度で結果がでます)
  ACの後は、
 1.(PD-L1が陽性ならば)atezolizumab + nab-paclitaxel
 2.Bevacizumab + paclitaxel
 3.Eribulin
 4.Docetaxel

その後照射(tomotherapy)してもいいでしょう。

「今のところ胸骨のみの単独転移なので、重粒子などの自費治療にも臨むべきかも悩んでいます。」
⇒その前に…

 通常の照射(上記)を検討すべきです。

 
 

 

質問者様から 【質問4 】

管理番号 3642 「トリネガ骨転移について」
性別:女性
年齢:47歳
病名:骨転移
症状:症状はとくになし
投稿日:2020年9月25日

先生、前回はパクリタキセルの治療について、くわしく教えていただきありがとうございました。

先生のアドバイス通りPD-L1の検査もしましたが、(残念ながら?)陰性でした。

その後AC療法を続けて、数値は正常値になりPET画像上は赤いところは見えなくなりました。

ということで、主治医からは放射線を提案されています。

ただ、放射線を実施している期間は抗がん剤が併用できないそうで、
普通は30回ほどかけてしましょう、となっていましたが(総線量50~60Gy)先生同士の会議?にかけて反対意見が出たそうで、出力を倍にし、半分の回数で終了させるそうです。

このような方法、先生はどう思われますでしょうか。
皮膚の炎症が心配だけども、「皮膚のことだから・・・」とのことです。

またそれを聞くと、たった2カ月ほどの間も抗がん剤を休むと、進行の危険があるのか…とトリプルネガティブの恐ろしさを感じ、また夜も眠れなくなってしまいます。

いつも先生のコラムや御回答からは希望をいただいています。
特にコラム244245は大変参考になりました
・・・が、コラムで拝見する、遠隔転移でも長期予後を保っていらっしゃる方はHER2療法の恩恵を受けた方々か、いわゆる「大人しいホルモン陽性タイプ」の方々のようにお見受けします。
(勘違いでしたら申し訳ありません)
先生の患者さんで、トリプルネガティブの遠隔転移の方でも、長期予後を保っていらっしゃる例がありましたら、ぜひ教えていただきたいです!
また、コラム228回「薬物療法」でトリプルネガティブの「第二ステップ」で記されている、「低用量抗がん剤」とは、具体的には、TS1などの飲む抗がん剤の事でしょうか?もしくはパクリタキセルなどを間隔を空けたり、量を減らしたりという事でしょうか・・・
ご教示いただけたらとおもいます

 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは田澤です。

「半分の回数で終了させるそうです。
このような方法、先生はどう思われますでしょうか。」

⇒焦る必要など「何処にも」無いのだから、普通に照射すべきでは?

「先生の患者さんで、トリプルネガティブの遠隔転移の方でも、長期予後を保っていらっしゃる例がありましたら、ぜひ教えていただきたいです!」
⇒サブタイプに拘りすぎです。
 普通にいらっしゃいます。

「また、コラム228回「薬物療法」でトリプルネガティブの「第二ステップ」で記されている、「低用量抗がん剤」とは、具体的には、TS1などの飲む抗がん剤の事でしょうか?もしくはパクリタキセルなどを間隔を空けたり、量を減らしたりという事でしょうか・・・」
⇒後者です。
 私が(効果と副作用のバランスが極めて悪い)経口抗がん剤を用いることは殆どありません。