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外科生検

[管理番号:583]
性別:女性
年齢:50歳
初めて質問させていただきます。
カリフォルニアに在住しているものですが、医療の専門分野が細分化されすぎているため、検査、診断、手術、がすべて別な施設、クリニック、病院、医師のため、総合的なことをなかなか質問できず戸惑うことばかりです。
毎年マンモグラフィーを受けています。が、たまたま去年は引越しなどと重なり、行くことが出来ませんでした。
4月の半ばに2年ぶりにマンモグラフィーをしたところ、少し問題があるといわれ、5月の半ばにエコーで再検査しました。エコーは、胸を専門にしている放射線科医にしてもらいました。
左胸の乳首の少しした(4時の方向)に1cmほどの嚢胞が見つかりました。
横に流れる楕円形ですが、下部にもやもやとした白いつぶつぶした影が映っていました。
ただの嚢胞ではないかもしれないので、詳しい検査が必要と言われ、その場で「コアニードルバイオプシーか外科生検のオプションがあるけど、どうしますか?」って言われ、一旦家に帰り、マンモグラフィーに送ってくれた、婦人科の先生に外科を紹介してもらいました。
マンモやエコーの記録を持って、外科に相談に行き、手術で取ってしまえるのなら、そのほうが一度ですむから良いのではないかと相談したところ、まずはコアニードルバイオプシーで良いのではないかと言われ、6月のはじめに受けました。
針生検のとき、最初、技師の人がエコーしてくれたときは、「大丈夫、液体がたまってるだけだから、コアニードルやるときに先生がナカの液を抜いてくれたら終わるわよ。」と言ってくれてぬか喜びしたのですが、医師がエコーをしてくれたところ、嚢胞の中にAbnormalな細胞があるから、少し多めにサンプルを取ります。と、普通よりたくさん細胞を取られました。
どきどきして待っていたのに、結果は、また100%癌とも、癌で無いとも言えない。グレーだと…。
そのときのレポートには
an atypical Papillary lesion. Papillary carcinoma in situ versus intracystic papillary carcinoma.
と書いてありました。
レポートに書いてあったことを自分なりに翻訳したところ、非定型乳頭病変。「上皮内乳頭状癌腫」か「嚢胞内乳頭癌。」
となり、もう、自分は癌なのではないかと言う思いになり、暗い気持ちです。
そのレポートを持って、外科に行き、7月のはじめに外科生検をすることになりました。
コアニードルをしてくれた医師も、外科の医師も、「まだ癌と100%決まっていないし、自分としては、癌の確立は低いと考えています。」と言ってくれているのですが…。
検査で「次こそは、きっと違うって言ってもらえる。」と思いながら、どんどん検査の度合いが深くなり、とうとう手術を受けることになり、疑心暗鬼になってしまっているので、素直に聞くことが出来なくなっています。
外科での説明によると、まずは、Left Breast Lumpectomy with Jwireと言う手術をするそうです。
現在、嚢胞から液は抜いたため、マーカーが入っていますが、手術前にマンモグラフィーかエコーで幹部を探し、そこに細いワイヤーを入れて目印をつけ、そのあと、外科医師が横から穴を開けて、内視鏡手術(だと思うのですが…。切るのではなくて穴を開けてと言ってたので)で、1cmの3倍の3cm細胞を切り取って病理検査をするとのことです。
その結果、癌でなければそこで終わり。癌であれば、次はリンパを3つくらい取り出して病理検査をする。
そこで、リンパに問題なければそこで終わり、リンパに問題があれば、さらに嚢胞があったところの周りと大きく切りとる。との説明でした。
半ば、わたしは、癌だと思ってしまっているので、外科の先生に「Lumpectomyのときに、リンパもついでにやれないのか?」とお聞きしましたが、まだ癌と決まってないのに、そこまではしないでも良いとのお返事でした。
でも、Lumpectomyって言うと、癌の方の乳房温存手術と同じですよね?
検査だけでも、それは必要なのでしょうか?それとも、もう、これは治療なのでしょうか?
5年ほど前に、子宮でも同じようなことがあり、その時、腫瘍の摘出手術が、治療をかねての病理検査でした(そのときは幸い、癌ではありませんでした)。
なので、今回も、そうなのかしら?と思いますが、こちらで一人暮らしで、家族も居ないため、ネットで調べすぎて、考えすぎて、不安ばかりが大きくなり、毎日もんもんとしています。
針生検で、嚢胞をつぶしてもらったから、乳房の形がゆがんでしまっていて、細胞を取ったところが、ちくちく針を刺すみたいに、毎日痛み、余計気持ちが沈みます。
わたしが今、してもらっている、検査(または治療)は正しいものなのでしょうか?
現在、検査の結果がグレーばかりなので、セカンドオピニオンは、もとめようが無い気がします。あと、外科生検は、全身麻酔(本人が希望すれば)でやっても大丈夫なそうですが、もう一度、痛かった、針生検をするのは怖いです。
まとまりのない、長文でもうしわけありません。
なにか、先生のご意見をいただければ幸いです。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 医療の細分化ですか。
 アメリカらしいシステムですが、「診断~治療まで一人の医師が責任を持って行う」べきだと私は思っています。

回答

「嚢胞の中にAbnormalな細胞がある」
⇒嚢胞内腫瘍のようです。
 
「an atypical Papillary lesion. Papillary carcinoma in situ versus intracystic papillary carcinoma」
⇒前半(an atypical Papillary lesion)は良性の範疇ですが、後半は「癌」との診断です。
 この記載だと、(針生検の標本では)「異型がある」とまでしか言えない。鑑別として「癌」が挙げられる。という内容のようです。
 「癌とまでは確定できない。」 嚢胞内腫瘍の診断は「摘出(外科的生検)しないと困難」な事が多いのです。
 
「まだ癌と100%決まっていないし、自分としては、癌の確立は低いと考えています。」
⇒アメリカでは「癌(cancer)=浸潤癌(invasive cancer)」としていると思います。
 その意味では癌(浸潤癌)では無いかもしれません。
 非浸潤癌の可能性も高そうです。
 
「Lumpectomyって言うと、癌の方の乳房温存手術と同じですよね?」
⇒その通りです。
 
 外科的生検といっても、「しっかりとマージンを取ろう」という意志を持っているという事です。
 言いかえれば、「癌であっても、そのまま対応できるように」という事です。
 
「検査だけでも、それは必要なのでしょうか?それとも、もう、これは治療なのでしょうか?」
⇒検査として必要です。
 「嚢胞内腫瘍の診断」は大変難しいのです。
 病変全体の摘出が必要であり、「手術的に手をつける」以上は、「取り残しが無いように」という配慮です。
 
「その結果、癌でなければそこで終わり。癌であれば、次はリンパを3つくらい取り出して病理検査をする」
⇒癌であっても「非浸潤癌」であれば、「センチネルリンパ節生検」は必要ない筈ですが…
 
 ただ、アメリカでは「非浸潤癌」を所謂「癌」(cancer)には含めていないかもしれません。
 とすると、この文面は「癌⇒浸潤癌」と読み替える必要がありそうです。
 
『「Lumpectomyのときに、リンパもついでにやれないのか?」とお聞きしましたが、まだ癌と決まってないのに、そこまではしないでも良いとのお返事』
⇒これは担当医の言う通りです。
 癌の診断が確定していないのに「リンパ節に手を付けてはいけません」
 たとえ「センチネルリンパ節生検(リンパを3つくらい取り出して病理検査をすると表現しているようですが…)」だけでも、「癌以外ではやってはいけない」事なのです。
 そこは日本もアメリカも同様です。
 
○私の意見
①外科的生検(lumpectomy)を行い、診断をつける:嚢胞内腫瘍の場合には「確定診断は摘出以外では困難」なのです。
②結果、浸潤癌であれば、「センチネルリンパ節生検」を行う。
③センチネルリンパ節に転移があれば、「追加郭清」をする。(術中迅速診断なので、連続で行う事ができます)
♯③の場合に「更に乳腺を大きく摘出するか?」は微妙なところです。①の段階で「きちんとしたマージン」があれば、必須ではないと思います。
 
 

 

質問者様から 【感想2】

外科生検が決まってから、手術を受けることへの不安、結果への不安でおしつぶされそうな時に、こちらで、田澤先生に、丁寧なアドバイスをいただいて、本当に感謝しています。
先生の回答をプリントして、持ち歩いて、時間があれば読んでいました。もちろん手術当日にも持っていき、何度も読み返して勇気をいただきました。
7月3日に外科生検(lumpectomy with Jwire)を受け、今日、病理検査の結果を聞いてきました。
良性で、癌の兆候は見られないので、これからは、普通に一年に一度マンモグラフィーを受けるようにとのことでした。
わたしと同じように、針生検をしても、グレーを抜けさせないで、不安をかかえていらっしゃる方も多いと思いますが、外科生検は、思っていたより、怖く無かったです。
病理の診断は…
BENIGN BREAST TISSUE WITH PRIOR BIOPSY SITE CHANGES AND FIBROCYSTIC CHANGES WITH FOCAL MICROCALCIFICATIONS
NO RESIDUAL PAPILLARY LESION PRESENT
NO ATYPIA OR MALIGNANCY IDENTIFIED
良性なので(癌と告知された方に不愉快な思いをさせてしまうのではないかと思って)、こちらに書き込むのは申し訳ないような気がしましたが、どうしてもお礼が言いたくてこちらに書かせていただきました。
毎日、診察だけでもお忙しいのに、たくさんの方の質問に答えていらっしゃっるので、いつ休まれているのかな?と少し心配になります。無理しないようにしてくださいね。
本当にありがとうございました。