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乳管腺葉区域切除

[管理番号:1655]
性別:女性
年齢:39歳
田澤先生、初めまして。最近先生のHPの存在を知り、ブログやQ&Aのコーナーを拝見させて頂いております。多忙極まりない中、様々な症例の質問に真摯に向き合い、且つ丁寧にお答えされているお姿に大変感銘を受け、先生なら私の疑問にも答えて頂けるのではないかと思い質問させて頂こうと思いました。
私は九州在住の現在39歳で、10年前より右胸の経過観察中です。1件目の病院ではマンモとエコーの検査をして、若い人に見られる乳腺が張り巡った状態で特に心配いらないと言われました。
心配性の為、別の病院(南九州の有名な病院)でまた診察を受け、右胸に何かあるが見た感じ悪い物ではないということで半年後にまた来るようにとのことでした。カルテには良性腫瘤と書かれているのが次の受診日に見えました。
その後、半年毎に2回通ったところで主人の転勤で東京へ引っ越し、また別の病院に通うことになりました。そこでエコー中に血流があることが分かり、針を刺しました。細胞診の結果は検体不足で判定不能ということでしたが、担当医によると「エコーにはきちんと針が刺さっているのが写っているし、良性だと細胞がくっついていないので取れにくい」とのことでした。
その後は半年毎のエコーと年に一度のマンモによる経過観察が続きました。この細胞診をした病院では乳腺症と言われていました。
それから数年後にまた九州に戻り、新たな病院(帰省時に幼児を預けて受診できる為、実家のある別の県)にかかりました。
そちらでも同じような経過観察が続き、そこでは針を刺すこともなく、今年3月末に受診した際に、3年診てきて変わりないので何もないとカルテに書くから次からは保険診療にならないと突然言われました。
不信感もあり、子供も就学して通院しやすくなったので、昔通っていた有名病院(健康診断と同じシステムで残念ですが…)に10年ぶりに予約を取り先月末に受診しました。昔の画像は残っておらず比較はできないが、マンモでも右胸に白くなっている所があり、何らかの増殖細胞が集まっていると言われ、針をその場で刺しました。
これまではエコーで黒い楕円状の物が確認できていましたが、マンモではずっと分からないと言われていたので、今回マンモのことも指摘され不安になりました。
そして、この日私は初めて「乳管内乳頭腫」と言う言葉を聞きました。
良性だが早期のガンが隠れている場合があると言われ、帰宅後ネットで調べると分泌物が特徴で下着に血が付いたりして気づくことが多いと書かれていて、ハッとして下着に一度だけ血が付いていたことを思い出したのです!
その時は掻きむしった傷がないのになんだろう?とそこまで気にしませんでした。乳首にも血は付いていなかったと思います。夏以降だとは思うのですが、正確にいつというのがどうしても思い出せません。下着の色によっては気付かないこともあると思うと、その頃毎日出ていたのではと不安にかられました。
そこで自分で痛いくらいに絞ると一箇所からジワーッとわずかに分泌物が出ました。半透明のように感じました。その後数回試しましたが、絞り方のせいなのか出たり出なかったりという感じです。
受診した次の日のことで、担当医に分泌物のことを伝えられなかったことやここ10年で初めて分泌物が出たこと、9月下旬くらいから今までにない右胸から脇にかけての痛みが3週間ほど続いたこと(これについては先生のQ&Aより乳腺症だろうと思い少し安心)、田澤先生のHPに辿り着いたことで色々勉強になり、このまま経過観察だけではダメだと思い病院に連絡して再度予約しましたが、再来週末に同じ先生に相談させて頂くことになりました。
私としては田澤先生が乳管内乳頭腫について日頃おっしゃっている乳管造影をして病変が確認できれば乳管腺葉区域切除をしてスッキリしたいです。
ガンが隠れているかもしれない物を分かっていながらそのままにしているのは不安で、ここ10年間半年毎にドキドキしながら検診に行くのにも疲れました。乳管腺葉区域切除ができれば、その乳管の病変は消えるという解釈でよろしいでしょうか?
大きさは10年前は7mm、その後9mmとか10mm、先日は12mmと言われました。
細胞診の結果は異常なしで、半年後に来るようにと書かれていました。
私のこの10年を正確にお伝えしたく前置きが長くなり、お時間を取らせてしまい申し訳ありません。
質問させて頂きたいのは、
① 下着に付いていた血(はっきり確認したのは一度)はおそらく今回絞ってわずかに出た分泌物と同じ孔からだと想像しているのですが、この場合、一度でも血が出たら血性の分泌物になるのでしょうか?私は若年ですが、それでも血性は血性以外より良くないですよね?
② 10年間マンモでは分からずエコーで確認されていた物が今回初めてマンモでも確認でき、分泌物も出ることに気付いたのですが、何かしら中で変化が起きているのでしょうか?分泌物については下着に付いていた血は別として、昔から絞れば何か出た可能性はありますか?
③ 乳管造影するには強く絞れば出るというのが基本だと書かれていましたが、私のように出たり出なかったりする場合はどうなりますか?乳管造影ができないと乳管腺葉区域切除はできないですよね?
④ 看護師さんに今の不安を電話で聞いて頂き、組織診の為の太い針を刺すには腫瘍が小さいと潰れてしまうのでできないと言われたのですが、12mmだとどうでしょうか?もし潰れた場合、中にガン細胞があった場合は吸収されずに散りますか?
患部を切り取ってからの組織診は、よほど悪性を疑われない限り通常やらないとのことでした。
⑤ 私のような細胞診と画像診断だけでの経過観察は田澤先生はお勧めしないとのお考えですが、私も心配になり、分泌物が常に確認できるような状態であれば飛んでいきたいくらいです。ただ、先生に診て頂けたとしても分泌物がその時に出なければおしまいだと思い、上京するのをためらってしまいます。私のケースだと今後どのようにしていけばいいのでしょうか?乳管造影ができない場合、先生はどのようにされていますか?
⑥ 仮に結果として腫瘍が100%良性だったとして、乳管造影や乳管腺葉区域切除はその腫瘍や周囲に悪影響がありますか?また、逆にガン細胞が隠れていた場合、細胞診や組織診を繰り返すと悪影響がありますか?
⑦ 乳管内乳頭腫の画像と非浸潤ガンの腫瘍の画像は見分けがつきにくいそうですが、もし、このまま経過観察しかできない場合、乳頭腫の近傍にガンが出現しても画像だけでは分からないということでしょうか?
前置きも質問も長文で申し訳ありません。 一度もお会いしていないのに不思議ですが、今は先生のことだけが信頼できるお医者様と思えてなりません。
お時間がある時で構いませんのでお返事頂けると幸いです。よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
乳管内乳頭腫疑いとの事
ただ、「分泌が少ない」ことが診断(乳管造影)のネックとなりそうです。

回答

「乳管造影をして病変が確認できれば乳管腺葉区域切除をしてスッキリしたいです」
⇒ひとつ誤解が有るかもしれません。
 「乳管造影をして病変が確認」と記載がありますが、この場合には「乳管造影をして、その(分泌している)乳管と(エコーで見えている)腫瘍の関係を見る」となります。
 もしかすると、(分泌のある)乳管と(エコーで見えている)しこりとは無関係の場合もあります(分泌液が少量の場合には起こりえます)
 その場合には、分泌乳管に対して「乳管腺葉区域切除」をしても(エコーで見えている)「しこりは取れない」と言う事になってしまいます。
 そのために、「事前に乳管造影検査をすることで」『分泌乳管としこりの関係を調べておく必要がある』のです。
 ○本来「分泌はあるけれど、(エコーで)しこりが不明」というものに対して、「分泌乳管内にしこりを証明」するためのものです。
  
「乳管腺葉区域切除ができれば、その乳管の病変は消えるという解釈でよろしいでしょうか?」
⇒その通りです。
 ただ、「分泌乳管と(その)しこりとの関係が、証明されていない」ことに注意が必要です。(その関係性を確認するのが乳管造影です)
 
「一度でも血が出たら血性の分泌物になるのでしょうか?私は若年ですが、それでも血性は血性以外より良くないですよね?」
⇒現在、「血性でない」のであれば「血性分泌とはいいません」
 質問者の場合には「10年来の病変」なので、「悪性の可能性は低い」とは思います。
 ○癌だったら、さすがに「もう少し変化(大きくなったり、形状が不整形となったり)」することが普通です。
 
「10年間マンモでは分からずエコーで確認されていた物が今回初めてマンモでも確認でき、分泌物も出ることに気付いたのですが、何かしら中で変化が起きているのでしょうか?」
⇒「大きな変化」ではないと思います。
 「マンモで見えるようになった」と言っても「超音波での大きさ」は「数ミリしか違わない」わけですから、むしろ「周辺の乳腺の状況の変化」の方が影響ありそうです(乳腺濃度の低下やポジショニングの違いなど)
  
「分泌物については下着に付いていた血は別として、昔から絞れば何か出た可能性はありますか?」
⇒現状でも「強く絞って、出たり出なかったり」という位なので、「気づかなくても」仕方がありません。
 同程度の感じだったかもしれません。
 
「私のように出たり出なかったりする場合はどうなりますか?乳管造影ができないと乳管腺葉区域切除はできないですよね?」
⇒「乳管造影はできない」可能性はありますが、「乳管区域切除はできる」と思います。
 何故なら、「乳管(腺葉)区域切除」は全身麻酔で行うからです。
 「乳管造影では(ご本人が当然痛がるため)絞る力にも限度がある」わけですが、「手術時には、思い切って強く絞る」ことができるのです。
 ○乳管造影を行うと「造影剤のために乳管が閉塞して分泌液が出なくなる」ことを、しばしば経験します。
 ただし、「術中には、強く絞れる」ので『乳管区域切除ができないケースは皆無』です。
 
 
「組織診の為の太い針を刺すには腫瘍が小さいと潰れてしまうのでできないと言われたのですが、12mmだとどうでしょうか?」
⇒正直、12mmというのは「十分な大きさ」です。
 ○「12mmで針生検をしない」とすれば、逆に『一体、どの位の大きさであれば針生検するのか?』聞いてみたい位です。
 
「もし潰れた場合、中にガン細胞があった場合は吸収されずに散りますか?」
⇒「嚢胞内腫瘍」ではない限り、「潰れたり」はしません。
 そんなことを言ったら「全ての針生検やマンモトーム生検が成り立たない」ことになります。
 
「患部を切り取ってからの組織診は、よほど悪性を疑われない限り通常やらないとのことでした」
⇒通常、そんな事はありません。
 「何らかの理由(嚢胞内腫瘍である)がない限り」は「針生検で診断がつく」わけなので、「診断目的で用いられること」は少なくなりました。
 ただ、「患者さん本人が摘出希望(不安だから,取ってしまいたい)」であれば、「良性であっても摘出する」ことは時々あります。
 
「乳管造影ができない場合、先生はどのようにされていますか?」
⇒その「しこり」を針生検(この場合にはマンモトーム生検)してしまいます。
 それで「そのしこり」については「確定診断」となります。
 ただ、「明らかな分泌の有る場合」には「乳管ごと摘出=乳管区域切除」した方が、「周辺にあるかもしれない微小な癌」も一緒に診断できるから勧めるのです。
 ♯一つの乳管に「乳管内病変ができた」場合には「同一乳管内にも多発」しているケースがあり、それが『癌が隠れているかもしれない』と表現される所以なのです。
 ただ、質問者のケースのように、「分泌がはっきりしない」のであれば、「今問題となっているしこり=12mm」だけでも診断すべきとなるのです。
 
「乳管造影や乳管腺葉区域切除はその腫瘍や周囲に悪影響がありますか?」
⇒ありません。
 質問者は勘違いされています。
「乳管区域切除」はその「周囲に隠れているかも知れない病巣ごと」摘出するのです。
 
「また、逆にガン細胞が隠れていた場合、細胞診や組織診を繰り返すと悪影響がありますか?」
⇒ありません。
 そのように心配される人たちが実に多いですが、全くの事実無根です。
 
「このまま経過観察しかできない場合、乳頭腫の近傍にガンが出現しても画像だけでは分からないということでしょうか?」
⇒「有る程度の大きさ」となれば「画像で見えて」きます。
 「3mm以上」となれば「画像で認識」できるようになります。
 
 「乳頭分泌を主訴」として受診される患者さん達の「前医での診療内容をみるにつけ」乳頭分泌の診療がきちんとできる医師(乳管造影をできる医師)が居ない事に失望する日々です。
 少しでも多くの患者さんが「正しい診療を受ける」ことを願います。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

大変お忙しい中、早速丁寧に回答して頂き、本当にありがとうございま
す。長文でお時間取らせてしまい、申し訳ありませんでした。
先生の回答を読ませて頂き、再度質問させて下さい。よろしくお願い申
し上げます。
少量ですが分泌のあった乳管と10年間経過観察しているしこりは別の物
の可能性も考えられるとのことで、乳管造影で乳管としこりの関係を調
べないとはっきりしないが、私の場合は乳管造影ができない(分泌が少な
過ぎ)かもしれないので、造影はせずに全身麻酔をして乳管腺葉区域切除
をして、しこりに対してはマンモトーム生検をするという方法があると
いう解釈でよろしいでしょうか?
この場合のマンモトーム生検とはエコー下で行うものの方ですか?
また、このマンモトーム生検は予約した診察時にすぐ行なえるような物
ですか?
私のように分泌物が少ない現在の状態で乳管造影ができないかもしれな
いケースでも、造影はできなくても全身麻酔をして乳管腺葉区域切除を
勧められますか?又はその乳管はとりあえず経過観察をして、エコーで
はっきりしているしこりにマンモトーム生検をすればいいでしょうか?
来週、相談の為に担当医の予約を取っているのですが、もし細胞診で良
性だからそこまでする必要がないとマンモトーム生検を断られた場合、
今後の経過観察は今まで通り半年毎で大丈夫でしょうか?3ヶ月毎など
間を短くしなくても大丈夫でしょうか?また、細胞診とは言え、定期的
にした方がいいでしょうか?
先生に頂いた回答の中に、
♯一つの乳管に「乳管内病変ができた」場合には「同一乳管内にも多
発」しているケースがあり、それが『癌が隠れているかもしれない』と
表現される所以なのです。
という記載がありました。
私の場合は10年来の病変で悪性の可能性は低いだろうとのことでした
が、乳管としこりに関係性があった場合、10年間ほとんど変化がないと
いうことは同一乳管内には他の病変はないと思ってもいいのでしょう
か?また、今後同じ乳管に病変が多発していき、ガンが隠れているとい
うことは考えられますか?一生多発しないということはどのくらいの割
合であるのでしょうか?
お時間がある時で構いませんので、ご回答頂けたら幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「全身麻酔をして乳管腺葉区域切除をして、しこりに対してはマンモトーム生検をするという方法があるという解釈でよろしいでしょうか?」
⇒その通りです。
 「分泌している乳管」を「摘出して調べる」ことと(10年来のしこりが別の乳管系ならば)「別個に調べる」ということです。
 ○another choiceとしては、「乳管区域切除と同時」に「10年来のしこりも摘出」する。(どうせ全身麻酔しているのだから)という方法もあります。
 
「この場合のマンモトーム生検とはエコー下で行うものの方ですか?」
⇒その通りです。
 「(レントゲンに写る)石灰化」は(レントゲン室で行う)「ステレオガイド下マンモトーム」ですが、今回のような「超音波で見えるしこりは超音波で見ながら行
う」超音波ガイド下マンモトームとなります。
 
「また、このマンモトーム生検は予約した診察時にすぐ行なえるような物ですか?」
⇒私であれば、その場で行います。(20分位)
 ♯他では、「予約しなおして」検査しているようですが…
 
「分泌物が少ない現在の状態で乳管造影ができないかもしれないケースでも、造影はできなくても全身麻酔をして乳管腺葉区域切除を勧められますか?」
⇒患者さんの希望によります。
 「どうしても気になるから是非、白黒付けてほしい」であれば、「確実な診断方法」として勧めますし、
 「できるだけ経過観察としたい」というのであれば、「経過観察」とします。
 ○私個人的には「少量で乳管造影がそもそもできない」ケースでは「積極的に勧めたりはしません」
  ただ、「選択肢として提示」はします。
 
「又はその乳管はとりあえず経過観察をして、エコーではっきりしているしこりにマンモトーム生検をすればいいでしょうか?」
⇒しこりの大きさ(分泌乳管内に腫瘍があるとしても、エコーで見えているものよはかなり小さい訳です)を考えて優先順位が決まります。
 その意味では「最低限、エコーで見えているしこり」を診断すれば大事に至らないと言えます。
 
「もし細胞診で良性だからそこまでする必要がないとマンモトーム生検を断られた場合、今後の経過観察は今まで通り半年毎で大丈夫でしょうか?3ヶ月毎など間を短く
しなくても大丈夫でしょうか?」
⇒それは私には判断できません。
 何故なら「細胞診所見」だけでなく「臨床所見(エコー像)」などを実際に見ないと(其の辺のニュアンスは)判断できないからです。
 
「細胞診とは言え、定期的にした方がいいでしょうか?」
⇒私には「細胞診を何回も行う」という習慣がありません。
 「細胞診を定期的に行う」位なら「マンモトーム1回すれば済む話」です。
 ★その方が圧倒的に確実だし、(質問者に取っても、何回も来るよりも)圧倒的に楽でしょう。
 
「10年間ほとんど変化がないということは同一乳管内には他の病変はないと思ってもいいのでしょうか?」
⇒「しこりが乳管内乳頭腫と仮定」すると、「その乳管には同時性、異時性に多発」する可能性があります。
 つまり、「10年来変わらないしこり」とは全く別に、「少しずつ成長しているしこりが現にあるかもしれない(同時性)」し、「これからできるかもしれない(異時性)」のです。
 
「今後同じ乳管に病変が多発していき、ガンが隠れているということは考えられますか?」
⇒考えられます。
 同時性、異時性に起こりえるのです。
 
「一生多発しないということはどのくらいの割合であるのでしょうか?」
⇒不明です。
 統計的に「知りえない数字」と言えます。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

再度丁寧に回答して頂き、ありがとうございます。
田澤先生のご意見を参考に、来週の受診日に担当医に相談しようと思い
ます。また疑問がある時には質問させて頂けたらと思います。その際は
どうぞよろしくお願い致します。
毎回長文で申し訳ありませんでした。