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非浸潤性乳管がんと診断されました。

[管理番号:127]
性別:女性
年齢:42歳
 
今月2月中旬に右乳房非浸潤性乳管がんと診断されました。主治医の先生から上半分切除か全摘かどちらか選択できる説明がありました。検査では非浸潤性ということですので、乳頭、乳輪を残した皮下全摘手術を受けようと考えています。
同時再建も考えています。4月中旬頃に手術を予定しています。
質問です。

  1. 乳頭、乳頭を残して再発はありませんか?
    (主治医の先生からは病変から離れているので乳頭乳輪は残せるとのことですが)
  2. 上半分切除しなければならないということは病変が広いということでしょうか?
    手術してみたら浸潤性のものが見つかる確率が高いですか?
  3. 確定診断を受けてから手術まで2ヶ月ぐらい時間がありますが、その間に進行して浸潤性のものができてしまわないのでしょうか?
    血性分泌物が出ていることに気付いたのは昨年末です。
  4. 同時再建をするか気持ちが揺れていますが、全摘だけとプラス同時再建の場合と術後の体調に違いはありますか?

 形成のことも含めて色々質問してしまいました。
 がんになってしまったことがショックで不安がいっぱいです。
 できましたら返信をよろしくお願いします。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「形成のことも含めて色々質問」と書いてありますが、全く構いません。
私の前病院「東北公済病院」では(形成外科医の協力のもと)同時再建も数多くありましたし、今の江戸川病院でも「乳房再建」を開始しており、様々な経験があります。
質問者の質問は「再建を考えている方にとって」大変参考になる内容です。
ご質問ありがとうございます。
それでは回答します。

回答

「1、乳頭、乳輪を残して再発はありませんか?(主治医の先生からは病変から離れているので乳頭乳輪は残せるとのことですが)」
⇒乳頭・乳輪保存の全摘⇒再建 は「それ相応の」リスクを承知しなくてはなりません。
 何が問題なのかというと「乳頭及び乳輪には全ての乳管と連続している」場所であり、この部分を残す操作では「ごく少量だとしても」癌細胞を残すリスクがあるのです。
 
 
 そのリスクを軽減するために、「乳房温存手術」では必ず術後照射をします。(施設によっては非浸潤癌では術後照射をしないところもありますが、「温存するなら、術後照射」が私のポリシーです。
 乳房再建の場合には、(原則として)術後照射はしないはずです。
 「術後照射なしでの乳頭・乳輪温存」は乳腺外科医としては「危うい」と私個人は思っているのです。
 ※乳癌学会のガイドラインでは「乳頭・乳輪温存の乳房切除術」については 推奨グレードC1(個々の症例を見て、十分にリスクを説明した上であれば許容される)となっています。
 質問者のように「非浸潤癌」で十分「乳頭から距離がある」場合には、「リスクを十分に説明した上で」許容されるとは思いますが、「リスクがあることを十分に承知する」必要があります。
 
「2、上半分切除しなければならないということは病変が広いということでしょうか?手術してみたら浸潤性のものが見つかる確率が高いですか?」
⇒医師の説明内容からすると、病変は広いようです。
 一般的には「広範囲であれば、非浸潤癌の中に浸潤部分がみつかる(微小浸潤)」可能性は高いです。
 
「3、確定診断を受けてから手術まで2ヶ月ぐらい時間がありますが、その間に進行して浸潤性のものができてしまわないのでしょうか?血性分泌物が出ていることに気付いたのは昨年末です。」
⇒診断から手術までの期間としては(特に再建もする場合には)2カ月は決して長くはありません。
 期間としては、あまり気にする必要はありません。
 
「4、同時再建をするか気持ちが揺れていますが、全摘だけとプラス同時再建の場合と術後の体調に違いはありますか?」
⇒確認ですが、同時再建はエキスパンダーですよね。
 エキスパンダーであれば術後の体調は(殆ど)変わりありません。(自家組織再建であれば侵襲は大きいので若干かわります)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

 
返信ありがとうございました。
詳しく丁寧に説明して頂き、気持ちが少しすっきりしてきました。自分の病気をしっかり把握して手術にのぞむことは大事なことだと思います。
田澤先生は乳腺外科医として深く勉強していらして心強いです。
これからも乳腺疾患にかかられた方々のためにもこの「乳がんプラザQ&A」を是非続けていって頂きたいと思います。
 
再度質問です。
「皮下全摘手術・乳頭、乳輪を残しての再発はありますか?」と質問しましたが、乳頭を残し放射線療法をしないとして乳頭や皮膚からの再発率はいくつぐらいなのでしょう?
針生険をした跡の皮膚からも再発があるときいたりします。本当ですか?
皮下全摘でも再建予定だったら放射線治療ができないため、温存プラス放射線治療なしと同等で再発率も30%をこえるのでしょうか?
全摘でも乳頭、乳輪を残せるならと少し明るい気持ちでいましたが。。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 先日、質問いただいた方ですね。
 「乳頭温存乳房切除術」についての追加質問ですね。
 この領域は新しいので、十分なエビデンス(証拠)が無いのが実情です。
 解る範囲で回答します。

回答

「乳頭を残し放射線療法をしないとして乳頭や皮膚からの再発率はいくつぐらいなのでしょう?」
⇒(十分にコンセンサスを得るほとの症例蓄積がされていない中での報告ですが)おおよそ5%前後の報告が多いようです。
 
「針生険をした跡の皮膚からも再発があるときいたりします。本当ですか?」
⇒本当です。
 針生検が普及した初期の頃(10年くらい前)には盛んに議論になっていました。
 「病理検査をしてみると5%程度には見つかるが、時間経過と共に消失していくので、実際に問題になることは少ない」という捉え方をしていました。
 とは言え、外科医のポリシーとして
 乳房温存では照射が入るので問題にはなりませんが、乳房切除の場合(術後照射を前提としていないため)には「針生検跡を皮膚の切除範囲にいれる」ようにしています。
 
「皮下全摘でも再建予定だったら放射線治療ができないため、温存プラス放射線治療なしと同等で再発率も30%をこえるのでしょうか?」
⇒そこまで高くはありません。
 温存手術後の局所再発の80%は「腫瘍床」といって「もと腫瘍があった付近」です。
 つまり「温存プラス放射線治療なし」での再発は「乳頭部からの再発」に加え「(乳頭部以上の危険部位)腫瘍床からの再発」を含んでいます。
 「皮下全摘」は乳腺を全摘出しているので「腫瘍床からの再発」は殆どありません。よって、それよりは再発率が低値となります。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

 
先日は重ねての質問に返信をありがとうございました。
 
乳頭皮膚温存全摘手術でお願いすることにしました。
約1ヶ月後に手術予定です。
乳頭を温存することのリスクについて主治医の先生と再度話をし、納得しましたので、そのように進めていこうと思います。
癌のこと、再建のこと、不安は尽きないですが頑張ります。
 
先生に大変お世話になりました。
お忙しいなか、病気について真摯に説明してくださりとても感謝しています。
また何かありましたらメールします。
術後の疑問でもいいのでしょうか?
またよろしくお願いします。
 
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 「治療方針と手術日程」も決まって良かったです。
 手術の日を迎えるまでは、なにかと不安になりがちですが、前向きに治療を頑張ってください。
 「術後の疑問」も大歓迎です。その際には、「Q and A」をお役立てください。
 
 

 

質問者様から 【質問4 乳がん組織型について】

2月に非浸潤性乳管がんと診断され質問したものです。その節は大変お世話になりました。4月に無事手術(右乳房乳頭乳輪温存皮下全摘)が終わり、ティシュエキスパンダー挿入中です。
再度質問です。
病理結果についてです。
術前は非浸潤性乳管がんと診断されていましたが5㎜の浸潤性がんが見つかりました。エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体共に陽性の為、病理結果が出てすぐ、タモキシフェンを服用しています。Her2陰性でした。リンパ節転移もありませんでした。
組織型なのですが、病理結果に微小乳頭癌と書いてあり、不安のなって主治医の先生にきいてみたところ、「そのように見えることがある、純粋型のガッツリしたしこりじゃないし参考程度に思ってもらっていい」と言われました。
微小乳頭がんは悪性度が高い特殊型と書いてあり、それだったかと思うと予後が心配になるのですが、非浸潤性から浸潤性のしこり
になる時?にそう見えること(はっきりしないこと)があるのですか?
乳頭乳輪を残しましたが、再発率など通常の乳がんと同じと考えていいのでしょうか?
MIB1発現率は25%で少し高めでした。この組織型と関係性はありますか?
グレードは1でした。
大変お忙しいと思いますが、返信をよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 術前に「乳頭乳輪温存乳房切除」についてご質問いただいていた方ですね。
 無事に手術が終了して何よりです。
 pT1a(5mm), pN0, luminal A(Ki67=25%)、十分な早期乳癌です。

回答

「微小乳頭がんは悪性度が高い特殊型と書いてあり、それだったかと思うと予後が心配になるのですが、非浸潤性から浸潤性のしこりになる時?にそう見えること(はっきりしないこと)があるのですか?」
⇒確かに「微小乳頭がん」は組織型としては、比較的「増殖が強い」タイプが多いと言われています。
 ただし、今回は(主治医のコメントによると)「そのように見えることがある、純粋型のガッツリしたしこりじゃないし参考程度」とあるように、「部分的に特殊型の組織が見られる」こともありますが、純型の「微小乳頭がん」では無いようです。
 ♯これは、「非浸潤癌から浸潤癌への浸潤過程」で特に見られることではなく、普通に「浸潤性乳管癌の一部に特殊型を含むこと」は良くあるのです。
 
「乳頭乳輪を残しましたが、再発率など通常の乳がんと同じと考えていいのでしょうか?」
⇒「乳頭乳輪の温存によるリスク」はあくまでも「局所再発」です。
 全身的な「再発率」はかわりません。
 また「微小乳頭がん」だからといってかわりません。
 ◎そもそも「浸潤径5mm」は極めて低リスクです。組織型など「気にするレベル」ではありません。
 
「MIB1発現率は25%で少し高めでした。この組織型と関係性はありますか?グレードは1でした。」
⇒MIB1=25%は「十分低値」です。(以前のように14%が基準と考える必要はありません。20%台は十分低値なのです)
 
★全てが非浸潤癌では無かった事は、確かに残念ですが…
 pT1a(5mm), pN0, luminal A(Ki67=25%) 十分な早期乳癌です。
 ホルモン療法単独で十分です。
 
 

 

質問者様から 【質問5 病理結果】

田澤先生、返信ありがとうございました。
 
全部が非浸潤性乳管がんではなかったこと、とてもショックでしたが、この段階で見つかって良かったなと思っています。
浸潤径5mmは組織型を気にするレベルではないとのこと、安心しました。念のためにもう一度確認しますが、もし、純粋型の5㎜の微小乳頭がんだったとしたら、高率で再発、転移などが起こりえるのですか?(微小乳頭がんだと生存率50%と書いてあるのをみると考えてしまいます、怖いです。)
あと、病理結果の断端欄に「一部非浸潤がん部が皮膚に近い場所あり」と書いてあります。これは今後気にしていくものですか?皮膚再発の可能性があるのでしょうか?
 
再度質問です。お忙しいなかすみません。よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答5】

 こんにちは。田澤です。
 pT1a(5mm), pN0, luminal A(Ki67=25%)でしたね。

回答

「純粋型の5㎜の微小乳頭がんだったとしたら、高率で再発、転移などが起こりえるのですか?(微小乳頭がんだと生存率50%と書いてあるのをみると考えてしまいます、怖いです。)」
⇒インターネットの情報でしょうか?
 全く無意味です
 あくまでも、限られた症例での報告です。
 「微小乳頭がん」は特殊型に分類され「進行が速い、リンパ節転移しやすい傾向」などはありますが、
 (例え純型であっても)「進行する前、リンパ節転移する前」に発見すれば「早期発見」であり、予後に大差はありません。(そういう傾向が現実になる前に治療すれば同じなのです)
 
「病理結果の断端欄に「一部非浸潤がん部が皮膚に近い場所あり」と書いてあります。これは今後気にしていくものですか?皮膚再発の可能性があるのでしょうか?」
⇒心配ありません。
 「非浸潤癌部」とありますので、「皮膚に近い」とはいっても「乳腺内にとどまっている」のです。
 乳腺をきちんと切除してあれば、全く問題ありません。
 
 

 

質問者様から 【質問6 授乳していた時期】

病理結果の件、ありがとうございました。
少しでも不安が残ると情報に振り回されてしまいます。田澤先生に説明して頂いたので落ち着きました。
前々から気になっていたことがありました。
 2年前まで授乳していたのですが、もしその頃から乳がんがあった場合、授乳中の子
どもへの影響はないですか?母乳を通る管にがん細胞があったかもしれないと思うと心配になるのですが…。
 

田澤先生から 【回答6】

 こんにちは。田澤です。
 早期乳癌で「細かい組織型」を心配する必要はありません。

回答

「2年前まで授乳していたのですが、もしその頃から乳がんがあった場合、授乳中の
子どもへの影響はないですか?母乳を通る管にがん細胞があったかもしれないと思う
と心配になるのですが」

⇒心配ありません。
 そのように心配される方も多いですが、全く問題ありません。
 
 

 

質問者様から 【感想7】

返信ありがとうございました。
病理結果を含め、不安や疑問に思っていたこと、再度田澤先生にきくことができて、気持ちが落ち着きました。本当にありがとうございました。
乳房再建に向け頑張ります!

 
 

 

質問者様から 【質問8 セカンドオピニオン】

性別:女性
年齢:47歳
病名:浸潤性乳管がん
症状:しこりは触れず

2015年に右乳房に非浸潤性乳管がんが見つかり、皮下全摘→乳頭乳輪温存再建手術をしたものです。
( その後の手術病理結果で、5㎜の浸潤がんがあったことがわかりタモキシフェン服用中です。)
その節は再建手術について、そして患った乳がんについてQ&Aを活用させて頂き、真摯に受け止めて答えてくださった田澤先生のお言葉にどんなに勇気をもらったかわかりません。
本当にありがとうございました。

また質問させてください。

今回は今度はエコーによる定期検査で左乳房に浸潤性乳管がんが見つかりました。
9㎜、硬性がんです。

担当医の最初の説明では温存手術の方向でしたが、MRIを撮ったところ、
「画像上乳房広範囲で広がりがあるような感じもする。
非常に悩ましいですが、全摘したほうがいいかもしれない」と言われました。

全摘ならば再建するかどうかも考えたかったため、時間を頂いています。

そこで質問なのですが、
右乳房を失ったため、左乳房はできたら失いたくない気持ちです。
田澤先生にMRIの画像を見せてない状態でおききするのはおかしいのですが、どこか他の病院でセカンドオピニオンを受けた場合、そこでは温存手術ができるということもありえるのでしょうか?
上記の担当医の言葉からすると、広範囲に広がっているものは悪性なのか(その場合は非浸潤性なのでしょうか??)、良性のものなのか区別しづらいということでしょうか?
そういうMRIの画像を見て他の乳腺外科医の先生によっては違う判断をされることがありますか?
納得して手術を受けたいです。

温存という希望があるのならばセカンドオピニオンを考えます。

田澤先生がご多忙のなか、大変恐縮ですが、返信を頂けたらと思います。

セカンドオピニオンの必要性があるのかないのかおしえてください。

 

田澤先生から 【回答8】

こんにちは。田澤です。

「田澤先生にMRIの画像を見せてない状態でおききするのはおかしいのですが、どこか他の病院でセカンドオピニオンを受けた場合、そこでは温存手術ができるということもありえるのでしょうか?」
→MRI所見次第です。
 「ありえる」というか、そこを訊くのがセカンドオピニオンと言えます。

「上記の担当医の言葉からすると、広範囲に広がっているものは悪性なのか(その場合は非浸潤性なのでしょうか??)、良性のものなのか区別しづらいということでしょうか?」
→そう思います。(それは、しばしばあることです)

 MRIは造影効果を見ているので、良性病変(乳腺症や線維腺腫)でも造影されて区別つきずらいことは「しばしば」あります。

「そういうMRIの画像を見て他の乳腺外科医の先生によっては違う判断をされることがありますか?」
→他院で「癌の広がりの可能性を指摘」されている以上、「自信をもって、この拡がりは良性です」とは、なかなか難しいとは思いますが、
 『良性(乳腺症)という可能性もあるので、まずは温存して術後病理で確認しましょう(一度トライしましょう)』くらいの可能性はあります。

「温存という希望があるのならばセカンドオピニオンを考えます。」
「セカンドオピニオンの必要性があるのかないのかおしえてください。」

→こういうケースでのセカンドオピニオンは普通のことです。(いいと思いますよ)

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