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断端陽性について

[管理番号:4211]
性別:女性
年齢:75歳
75歳の母のことです。
2年前に市の検診で要精検となり乳腺外科にて嚢胞との診断を受けていましたが、
昨年11月の定期検査で大きくなっていることから針生検を受け非浸潤癌と診断され、
12月に右乳房温存手術を受けました。
病理組織診断
 Ductal carcinoma in situ with microinvasion of the right breast、D area、
Bp、
g、pT1mi、
ly(-)、V(-)、NG1、pR1
所見
 ●右乳房部分切除(Bp)で、D領域12.5×9.0×2.0cm大の皮膚を含まない検体とセンチネルリンパ節が提出されています。
 ●組織学的には、low grade DCIS(papillary type)の集簇が認められます。
また、1mm未満の
  間質浸潤が認められ、乳管内進展を高度に認めます。
  頭側、乳頭側、尾側、外側の断端に腫瘍細胞を認めませんが、深側断端および皮膚側断端に
  DCISが見られます。
 (乳頭側断端は迅速検体の乳管に異型上皮が見られましたが、追加の検体では陰性でした。)
  静脈侵襲、リンパ管侵襲は認めません。
  センチネルリンパ節の戻し標本でも腫瘍細胞を認めません。
(0/2)
  DCISですが参考に核グレードを示します。
  核グレード:1
  核異型スコア:2
  核分裂像スコア:1
  ER(3+),PgR(2+),HER2(-),Ki-67 陽性核は20%程度
  推奨治療は内分泌治療5年と温存乳房照射です。
  抗がん剤投与は推奨しません。
との説明を受けアナストロゾール錠を内服し始めました。
放射線照射もします。
断端陽性は水平方向ではなく垂直方向なので放射線照射で大丈夫と言われているのですが、
その根拠がよくわかりません。
再手術は必要ありませんか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「推奨治療は内分泌治療5年と温存乳房照射です。」
⇒内分泌療法が必要かどうか?
 私であれば「非浸潤癌(微小浸潤も含め)で内分泌療法は行いません」
 もうひとつ付け加えると、(非浸潤癌で唯一エビデンスがあるホルモン療法は)タモキシフェンです。
 ○閉経後だからといっても、「非浸潤癌(微小浸潤も含め)でアロマターゼ阻害剤
(アナストロゾール)は、決してお勧めできません」
「抗がん剤投与は推奨しません。」
⇒「推奨しない」というよりも、『決して、行ってはいけない』とすべきです。
「断端陽性は水平方向ではなく垂直方向なので放射線照射で大丈夫と言われているのですが、その根拠がよくわかりません。」
⇒これは、想像してもらえば解ります。
 乳腺は水平方向には連続していますが、垂直方向には連続していません。(皮膚側には皮下脂肪⇒皮膚、深部側には乳腺後脂肪⇒大胸筋)
 つまり、(水平方向には、癌が連続している所を無理やり切っている可能性がありますが)「垂直方向には、乳腺を全て取りきれば、それ以上取る必要がない」(乳腺表面の脂肪浸潤していても、術中に削っているから通常大丈夫です)
「再手術は必要ありませんか?」
⇒上記コメント通りです。
 術者が余程、「適応に手術していない」限り、「垂直方向は全く問題無い」のです。