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治療方法について

[管理番号:5358]
性別:女性
年齢:54歳
田澤先生、初めまして。
お忙しいところ申し訳ありませんが質問させてください。
今年の6月、検診で右胸にしこりが見つかり針生検で悪性と診断されて、7月末に温存手術を受けました。
(センチネルリンパ節切除は転移なし)
今後の治療について迷っています。
先生のご意見をお伺い出来ればと思います。
組織診断結果です。
病理所見
組織学的に異型乳管上皮が癒合腺管状、篩状に増殖する腫瘤を認めます。
乳頭腺管がんです。
粘液を背景に小腺管状、微小乳頭状に増殖する、粘液癌様の成分を腫瘤の10%程度に認めます。
その他非浸潤性乳管癌が混在します。
まず、この病理所見について担当医師からの説明は特になかったのですが、気にするような点が無かったからと解釈してよろしいでしょうか?
最初の生検で混合型かもしれないという記載があり、ネットで検索、あまり良くないような事を目にした記憶があるのですが、私は混合型ですか?であるとすると予後はあまり良くないのですか?
それと温存乳房の断端からのマージンについて、書かれている方がたくさん見えますが、マージンについての記載は無いように思います。
温存手術の診断結果には必ず記載されているものなのでしょうか?
温存か全摘かで迷いも有りましたが、「全摘すれば右側には再発することがない、ただそれだけです。
温存も全摘も予後は同じです。
ただ、開いてみない事には絶対大丈夫とは言えないので、再手術がどうしても嫌だと思われる方には全摘をおすすめしています。」という主治医のお話でしたので、取り残しがあって再発したら次は全摘すればいいという覚悟で温存する事に決めましたが、その解釈は合っていますか?それとも万が一取り残していたら、多臓器等に転移する可能性が大きいのでしょうか?
腫瘍の大きさ 0.9cm
リンパ節転移の個数 4個中0
腫瘍の悪性度 → 1
脈管(リンパ管・血管)侵襲 → なし
ER 95% 陽性
PgR 90% 陽性
HER2 2+  (現在FISH結果待ち)
MIB-1(Ki-67 ) → 21%  (Dr.曰く、高くはないが低いとも言い難い)
「FISHの結果が陽性となれば、抗がん剤になると思いますが、陰性の場合でもKi-67が21%という微妙な値なので、抗がん剤治療をした方がいいかも知れません。
決めるのは患者さんご自身です。」と言われました。
先ず、FISHの結果が陰性となる確率が3/4だと聞いていますが、こう
なった場合シンプルに、自分は陰性だと考えたらいいですか?
どちらかと言えば陰性と言うことで、HER2タンパクの薬が少しは効くということですか?それともFISHの結果が陰性となれば、もし抗がん剤治療を選択したとしても、抗HER2療法にはならないと言うことでしょうか?落ち込むだけだと思い、ネット検索するのも止め、癌について勉強していなかった私は、てっきり放射線+ホルモン治療だけだと思っていたので、
何一つ質問することができませんでした。
後悔しました。
自分自身の病気なのだから自分自身が一番勉強するべきでした。
お医者さんの言うことは絶対!などという考えでは癌という病気に立ち向かえませんよね。
この1週間、出来るだけ同じ質問をされているQ&Aを読み込んだつもりですが、すみません、同じ質問をさせて下さい。
HER2陰性となれば、この21%という値は決して高くはなく抗がん剤は必要なしと、先生が回答されていたと思います。
主治医からは特にすすめられませんでしたが、OncotypeDXの検査は知っていましたし、した方がいいだろうというのは解ります。
しかしながら私事ですが、母子家庭、子供2人(ようやく社会人になりましたが)、住宅ローン有り、子供の奨学金返済もなかなかの額で、おまけに長年かけ続けたがん保険の金額がグッと上がったタイミングで解約してしまい、何かいい保険はないかと探しているところに、乳がん発症。
で、高額な検査に踏みきれないでいます。
OncotypeDXの検査結果で要抗がん剤となったとしても、例えば詳しい検査によって抗がん剤のチョイスが的確になるとかのメリットはありますか?
無理してこれだけの額を出してもする価値はありますか?
今から検査しても検査結果が出るまで又時間を要する訳ですが、先にホルモン治療なり放射線治療を始めた方がよろしいのでしょうか?
子供たちは、たとえ1%でも再発リスクが減るのであれば、抗がん剤治療をやった方がいいと言うのですが、やはり副作用のことを考えると、できればやりたくないのが本音です。
それから、わたしの癌は早期だと思うのですが、先生がどこかで「診断にMRIを用いる/極めて早期癌なのにCTを撮影する事が自分の考えとは全く異なる 」と回答されていたと思います。
私は大学病院で治療中です、初診の日にできるだけの検査をやりましょうと言われ、マン
モ、超音波、血液検査、CT、続けてMRIをしました。
必要なかったのでしょうか?
大学病院の医師はしないよりはやった方がいいという考えで、検査することが普通になっているのでしょうか?抗がん剤もそのような考えから、出来るだけすすめるように指導されているのでしょうか?
あともう一つ、これも後から知った事ですが、温存して放射線治療をすると、その後乳房再建が難しいというのは本当ですか?全摘される方が多いのは放射線治療を避けたいからでしょうか?手術前に知っていたら、もしかしたら全摘を選んだのかもと思ってしまったりしますが、温存した今となっては、放射線治療は絶対なんですよね?
それと放射線は近くの病院でも大丈夫ですと言われたのですが、放射線にもいろいろあるんですよねリニアック?とか、近くの病院は一応総合病院なのですが、現在新築中で、たとえば装置が古いんじゃないかとかって思ってしまったりします。
考えすぎでしょうか?
同じような質問に幾度となく回答されていると思いますが、私たち乳がん患者は自分自身の病理検査に対して先生がひとつひとつ丁寧に答えて下さる事が何より力になるのだと思います。
有難い事だと感謝しています。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b, pN0, luminal
完璧な早期癌です。
(組織型など)余計な心配をする事自体全くナンセンスです。
「私は混合型ですか?」
⇒違います。
 普通の「乳頭腺管癌」です。
 一部に「粘液産生がある」ことは決して珍しい事では無く。「粘液癌の混合型というのは(基本的に)粘液癌であり、一部に他の組織型が混じる場合を言います)
「あくまでも乳頭腺管癌であるとすると予後はあまり良くないのですか?」
⇒無関係です。
 組織型で予後を判断することは決してありません。

「温存手術の診断結果には必ず記載されているものなのでしょうか?」

⇒記載が無いとすれば…
 (普通に)陰性ということでしょう。
「取り残しがあって再発したら次は全摘すればいいという覚悟で温存する事に決めましたが、その解釈は合っていますか?」
⇒その通りです。
「それとも万が一取り残していたら、多臓器等に転移する可能性が大きいのでしょうか?」
⇒違います。
 以下『今週のコラム 84回目 「初回手術の取り残しを摘出するだけでよい」と言う事なのです』からの抜粋です。
 ☆「乳房温存術の大前提に『もしも(乳房内再発したら)乳房を全摘することで(最初から全摘を選択した場合と)予後は変わらない』というものがあります。☆
「MIB-1(Ki-67 ) → 21%  (Dr.曰く、高くはないが低いとも言い難い)」
⇒これは「間違い」
 明らかに「低い」です。(OncotypeDXをすれば確認できます)
「Ki-67が21%という微妙な値なので、抗がん剤治療をした方がいいかも知れません。」
⇒この値なら(私なら)「1秒も迷うことなく」ホルモン療法単独とします。
 患者さんご自身がどうしても気になる場合にはOncotypeDXを勧めますが、(実際に行っても、私の経験では)この値で「high riskとなることは無かった」との認識があります。
「こうなった場合シンプルに、自分は陰性だと考えたらいいですか?」
⇒その通りです。
「どちらかと言えば陰性と言うことで、HER2タンパクの薬が少しは効くということですか?」
⇒違います。
「HER2陰性となれば、この21%という値は決して高くはなく抗がん剤は必要なしと、先生が回答されていたと思います。」
⇒正しい理解(記憶)です。
「私は大学病院で治療中です、初診の日にできるだけの検査をやりましょう」
⇒全く無駄な検査です。(医療費は患者さんにとっても国庫財政にとっても負担なのです。被爆の問題と共に医療経済的感覚は持たなくてはいけないでしょう)
「抗がん剤もそのような考えから、出来るだけすすめるように指導されているのでしょうか?」
⇒大学病院の医師が何を考えているのか(考えていないだけなのか)解りませんが…
 (勧めない事でクレームが来るより)「勧めておいた方が無難」という認識はあるのかもしれません。
 
「あともう一つ、これも後から知った事ですが、温存して放射線治療をすると、その後乳房再建が難しいというのは本当ですか?」
⇒皮膚が伸びにくくなり、整容性として不利になるかもしれません。
「全摘される方が多いのは放射線治療を避けたいからでしょうか?」
⇒そもそも「全摘が多い」ことは無いと思いますし、(全摘を選択するのは)「MRIなど拡がり診断で、(広い拡がりがあり)温存の選択肢が無い場合」が多いと思います。

「温存した今となっては、放射線治療は絶対なんですよね?」

⇒それが「温存術を選択する条件」とも言えます。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

治療方法について
性別:女性
年齢:54歳
 
先日はお忙しい中、お返事ありがとうございます。
9月(上旬)日にFISHの結果が出ます。
主治医の説明を正しく理解し、きちん
と質問ができるように、今一度、田澤先生のご意見を聞かせて下さい。
① HER2陽性だったら抗がん剤治療を受け入れようと思います。
でも、陰性だったらどうすればいいのか…まだ迷っています。
先日質問させて頂いたのですが、
「MIB-1(Ki-67 ) → 21%  (Dr.曰く、高くはないが低いとも言い難い)」
⇒これは「間違い」 明らかに「低い」です。
「Ki-67が21%という微妙な値なので、抗がん剤治療をした方がいいかも知れません。」
⇒この値なら(私なら)「1秒も迷うことなく」ホルモン療法単独とします。
 というような内容でした。
しかし別の方の質問に
⇒Ki67=20.2はたしかに「グレーゾーン」ですが….と、お返事されていました。
21%はグレーゾーンであることは確かで、抗がん剤を勧める医師もいるが、田澤先生でしたら勧めないと言うことでしょうか?
オンコタイプDXをやるべきか迷っています。
私のようなケースだと、高額でもやってみる価値はありますか?
温存手術をしたのが7/(下旬)、オンコタイプDXをやるとなると治療方針決定までに、また時間を費やしてしまう事になりますが大丈夫でしょうか?
先にホルモン治療や放射線治療を始める事になるのでしょうか?
① HER2陰性だったとして、ホルモン療法単独で再発率、生存率はどれくらいでしょうか。
② また、抗がん剤をプラスした場合の上乗せ効果はどのくらいでしょうか?
③ HER2陽性の場合、プラス抗がん剤、抗HER2療法で、数値はどの位変わってきますでしょうか。
いろんなケースのQ&Aを読んでいると、混乱してしまうのですが、
抗HER2療法は「再発率を半分にする」とありましたがHER2陽性で抗HER2療法をやるのと、HER2陰性なのは、いったいどちらが再発率が低く、予後良好とされているのでしょうか?
度々の質問になりお手間をおかけしますが、よろしくお願い致します。
 
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
最近もよく質問にでてきますが…
おそらく根本的な勘違いがあります。
(ルミナールAかBかを抜きにして)「ホルモン療法単独の場合と化学療法を追加した場合の再発率は?」という質問自体が無意味なのです。
NewAdjuvant.comでの「上乗せ」はルミナールAとBが混ざっています。
たとえば、上記で「上乗せ=5%」とでたとしても 質問者がルミナールAならおそらくゼロであり、ルミナールBならおそらく10%位となるのです。
○その「ルミナールAとBが混ざった上乗せ」を「自分の場合の上乗せ」と捉えて、「化学療法をするべきか?」判断することは無意味なことです。
 
「私のようなケースだと、高額でもやってみる価値はありますか?」
⇒自分がルミナールAなのかBなのか?本当に迷うのであれば、『是非』行ってください。
「また時間を費やしてしまう事になりますが大丈夫でしょうか?」
⇒大丈夫です。
「先にホルモン治療や放射線治療を始める事になるのでしょうか?」
⇒その様にする人も多いです。
「① HER2陰性だったとして、ホルモン療法単独で再発率、生存率はどれくらいでしょうか。」
⇒冒頭で示した通りです。
 その値は実際にルミナールAなのかBなのかで異なります。
 それを知りたいのであれば『是非』オンコタイプしてください。
「② また、抗がん剤をプラスした場合の上乗せ効果はどのくらいでしょうか?」
⇒全く上記通りです。
「③ HER2陽性の場合、プラス抗がん剤、抗HER2療法で、数値はどの位変わってきますでしょうか。」
⇒再発率が半分となります。
「HER2陽性で抗HER2療法をやるのと、HER2陰性なのは、いったいどちらが再発率が低く、予後良好とされているのでしょうか?」
⇒必要な治療を行えば、殆ど変わらないと思います。
 だから「予後はステージできまる」のです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

治療方法について
性別:女性
年齢:54
先日はありがとうございました。
結局田澤先生のご意見通り、主治医もホルモン療法単独で大丈夫でしょう。
と言ってくれました。
抗がん剤治療が無くなり、ようやく放射線治療とホルモン治療に入るのですが、
腫瘍内科医と名乗る方があるサイトで、
放射線治療の効果は適切な照射範囲設定にかかっています。
この設定のためには手術および手術検体を調べた病理組織検査の詳細な情報が必要です。
他施設で放射線治療を行った場合、その情報交換がどうしても不十分になってしまうのが最大の問題点です。
また、放射線治療後のfollow upにおいても、外科医の手元に放射線治療に関するデータがないと、判断に困ることが少なくありません。
ですから、外科医は他施設で放射線治療を受けることを勧めませんし、
放射線治療医は他施設で手術された乳房温存術後患者を引き受けたがりません。
治療中、治療中、治療後のいずれにおいても診療が滞る要因がてんこ盛りだからです。
と、回答されているのを見かけました。
放射線治療を近くの総合病院で予定しています。
主治医も勧めてくれましたが、それで大丈夫なのでしょうか?手術を受けた大学病院で引き続きお願いした方が良いのでしょうか?
ホルモン治療についてもまだまだ解らない事だらけです。
閉経後の乳がんには、抗エストロゲン薬とアロマターゼ阻害薬が用いられるようですが、副作用として
『ほてり、めまい、吐き気、肝機能の低下、コレステロール値の上昇、骨粗しょう症アロマターゼ阻害薬には、骨密度を下げる作用があるため、骨粗しょう症や重篤な関節炎、心血管障害などがある場合は、服用できせん。
タモキシフェンが推奨されるが、脱毛、視覚障害、そして、子宮体がんなどの子宮の病気のリスクを高める』
重篤と言えるかどうかですが、私には関節炎があり、並行して治療ができるのかというところも主治医に相談しようと思っていました。
もし、アロマターゼが使えないとなるとタモキシフェン単独となりますか?支障はないのでしょうか?
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
世の中にはネットが普及して大変便利になったと実感する一方で、患者さん達が「極めて無駄な心配」をさせられる「悪情報も多い」ことを悲しく思います。
「放射線治療を近くの総合病院で予定しています。主治医も勧めてくれましたが、それで大丈夫なのでしょうか?」
⇒勿論、全く問題ありません。
「重篤と言えるかどうかですが、私には関節炎があり、並行して治療ができるのかというところも主治医に相談しようと思っていました。」
⇒副作用の欄をみると「治療を思いとどまらせるため」に書いてある様な内容で溢れています。
 最初から先入感を持つことはとても悲しい事です。
 まずは「実際に内服」してみましょう。
 ○もしも(それで)支障があれば、「その時に、考えればいい」ことです。
「もし、アロマターゼが使えないとなるとタモキシフェン単独となりますか?支障はないのでしょうか?」
⇒まずは「無駄に心配し過ぎる」ことなく、「アロマターゼインヒビターを内服してみる」ことをお勧めします。