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治療方針について

[管理番号:4220]
性別:女性
年齢:56歳
母が先日乳がんと診断され手術を行いました。
そのため、今後の治療方針について質問させてください。
11月(中旬)日 CNB
[所見]
免疫組織化学染色を施行しました。
ER(+),J-score 3b,
PgR J-score2,
HER2(-)score0
MIB-1 labeling index60%@hot spotです。
12月(中旬)日 手術
[所見]
右乳房①~13およびLevel I リンパ節14(9個)切除組織標本が作製されています。
肉眼所見に一致して切片6,7,11,12,上に大型充実性胞巣を形成して浸潤性
に増殖するinvasive ductal carcinoma,
solid-tubular carcinomaを認めます。
nuclear grade 2相当です。
腫瘍の進
展は乳腺外脂肪織に一部および、また、腫瘍周辺には小範囲に乳管内進
展も認めます。
HE染色レベルで明らかな静脈侵襲を認めます。
断端は
free of tumorです。
リンパ節に転移は認めません。
n(Level I)(-)0/9です。
[Rt.C,30x20mm in size,invasive ductal carcinoma,solid-tubular
carcinoma,nuclear grade2(atypia 2 pts+mitosis 2pts=4 pts,LVI(+),
n(Level I)(-)0/9,surgical margin free]
主治医からはリンパ転移もないし、ホルモン療法が効くものと出てるから今後はホルモン療法のみでと言われ本日よりアミリデックスを処方されました。
しかし、MIB-1の値が60%と高くルミナルBではないかと思っています。
MIB-1が60%だとルミナルBとなり抗がん剤したほうがいいのではないかと先生に確認しましたが、先生はリンパに転移してないし、抗がん剤は副作用があるしな~…と曖昧でホルモン療法だけでいいとの事でした。
また後でもできるからとも言っていた気が…あまりはっきり言わない先生なのではっきりわからず…。
後でもできるというのは再発した時にやったほうがいいと思っているという事でしょうか?
本当にホルモン療法だけでいいのでしょうか?
母は分からないから先生の言う通りにするだけ。
と言っています。
抗がん剤はやりたくないというのは当たり前ですよね。
母がホルモン療法だけでいいと思っているところで私が抗がん剤したほうがいいと言うのも少々気がひけます。
でもできるだけ再発しないで長く生きてほしいです。
母のような癌の場合ホルモン療法単独でも大丈夫なのでしょうか?
ホルモン療法単独の場合と抗がん剤を上乗せした場合では再発率はどれくらい変わりますか?
また生存率はどれくらいなのでしょうか?
根治できますか?
母には抗がん剤で辛い思いをしてほしくないという一方で、できることはやってほしいと思ってしまいます。
もし、抗がん剤を行う場合は何の薬剤を使ってどれくらいの期間がいいのでしょうか?
またその薬剤ではどのような副作用があるのでしょうか?
次回の受診は1ヶ月後なのですが、抗がん剤を行うとしたらいつまでに行えばいいのでしょうか?
手術から1ヶ月たってしまいますがもう遅いですか?
また話は変わってしまいますがERやMIB-1は手術前に調べているため手術後は調べないそうです。
それでいいのでしょうか?
HE染色レベルで明らかな静脈侵襲を認めます。
というところも気になります。
転移しやすいのでしょうか?
オンコタイプDXは高額なためできませんが、高リスクとなる可能性が高いですか?
アジュバンドオンラインも英語で分からず…すいません。
とにかく不安で…相談できるところがないためこちらに相談させていただきました。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT2(30mm), pN0, luminal
早期乳癌です。
ただ、ひとつ疑問なのは「リンパ節転移無」なのに「何故センチネルリンパ節生検をしていないのか?」
通常「術前、画像診断で余程リンパ節転移を強く疑う」以外には行うものですが…
「母のような癌の場合ホルモン療法単独でも大丈夫なのでしょうか?」
⇒ご本人のおっしゃるように(術前針生検の結果とはいえ)「ルミナールB」と判断せざるを得ません。
 それなのに「抗ガン剤を勧めない」ことは正しい情報開示とは思いません。
「ホルモン療法単独の場合と抗がん剤を上乗せした場合では再発率はどれくらい変わりますか? また生存率はどれくらいなのでしょうか?」
⇒NeoAdjuvant. Comで調べると…

再発率 10年生存率
ホルモン療法単独 16% 84%
ホルモン+化学療法 12% 85%

 ♯これでみると「化学療法の上乗せが小さい」ように感じますが… このソフトでは「Ki67は考慮していない」ことは了解が必要です。
「根治できますか?」
⇒10年生存率は80%以上ですよ。 かなりの確率で根治することを確認ください。
「もし、抗がん剤を行う場合は何の薬剤を使ってどれくらいの期間がいいのでしょうか?」
⇒ルミナールタイプの抗ガン剤は…
 TC療法です。(3週間に1回、3カ月間)
「またその薬剤ではどのような副作用があるのでしょうか?」
⇒(短期)筋肉痛、全身倦怠感
 (長期)浮腫み、痺れ
 脱毛も必ずします。
「次回の受診は1ヶ月後なのですが、抗がん剤を行うとしたらいつまでに行えばいいのでしょうか?手術から1ヶ月たってしまいますがもう遅いですか?」
⇒特に絶対の基準はありませんが…
 3カ月以内が一つの目安です。
「また話は変わってしまいますがERやMIB-1は手術前に調べているため手術後は調べないそうです。それでいいのでしょうか?」
⇒本来は「術後に病変全体で検索すべき」です。
「HE染色レベルで明らかな静脈侵襲を認めます。というところも気になりす。転移しやすいのでしょうか?」
⇒無関係です。 気にしない様にしましょう。
「オンコタイプDXは高額なためできませんが、高リスクとなる可能性が高いですか?」
⇒『今週のコラム53回目 Ki67が「30未満」ならホルモン療法単独、Ki67が「30以上なら、Oncotype DXを推奨」しています。』の表をご参照ください。
 Ki67>39%以上では 80%以上が「高リスク」となります。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日はお返事いただきありがとうございました。
先生のお返事で納得し、家族や主治医とも話をする事ができました。
センチネルリンパ節生検という言葉はなかったのでやっていないのではないかと思います。
前に先生が痛い思いをしたとかで、少し多めにリンパを取ってきて調べると言われて納得してしまいました。
いろいろ話を聞いて取ったリンパの数が多い事に後悔していますが、もう取ってしまった後なので…。
リンパ9個でリンパ浮腫になる事はありますか?
手術の前には数は多くないからよっぽど大丈夫だと言われていたのですが…今さら心配になってきました…。
あれから家族と相談し、セカンドオピニオンに行って抗がん剤が必要と言われれば納得してくれるかも…と思い、病院にお願いの電話をしたところ一度診察に来なさいと言われ、行ってきました。
セカンドオピニオンをする事を怒られるのかとドキドキしながら行ったのですが、診察室に入って早々に抗がん剤の話をされました。
正直拍子抜けでしたが…。
母の場合1年前の市のマンモの検査では発見されず、今年のマンモで2センチのしこりを発見(自分でもその時分かったと)されたため、急激に大きくなっているからという事と抗がん剤をしたほうがいいという値だからと言われました。
術前に分かっていたはずなのに今更?私が指摘したからか?セカンドオピニオンに行くと言ったからか?と少しモヤモヤしましたが、先生が言っている事は私が思っていた事と同じ事を言われたため納得して帰ってきました。
薬剤について尋ねるとFAC(ファックと言っていたのでFACですよね?)を4回~6回だと。
TCについて確認すると副作用はそれほど変わらないと聞きました。
それは本当でしょうか?
心臓にも関係する副作用があるからと心エコーの検査をすることになっています。
心臓への副作用はどれくらいの確率であらわれるのでしょうか?
また白血病になるリスクもあると見ましたが、そちらもどれくらいの確率なのでしょうか?
TC4回とFAC4回だとどちらの方が効果がありますか?
FAC6回までやらないとTC4回と同等の効果が出ないのでしょうか?
そもそもFACでいいのでしょうか?
FACとFECは違うものですか?
先生は薬はやるまでに決めればいいからと言っていましたが…。
もし今回FACを使った場合再発した時にもまた使えるのでしょうか?
TCの場合は同じですか?
また、MIBの値が高いと抗がん剤が効きやすいと考えてもいいのでしょうか?
前回の時に再発率など教えていただきましたが、MIBの値も考慮すると値が高いともう少し再発率が高くなるという事ですか?
MIBの値が高かったので1年で急に大きくなったのでしょうか?
術後に測定した場合数値は下がることもありますか?
それとも上がることのほうが多いのでしょうか?
グレード2だったためMIBの値が下がるのでは?と素人ながらに考えてしまいました。
先日アリミデックスを処方されましたが、診察の日から一旦中止してと言われました。
抗がん剤はまだ決まってませんが2月に行う事になってます。
それまでホルモン剤はのまなくても再発したりしませんか?
抗がん剤との併用はしないほうがいいのでしょうか?
今の時点でもう再発しているという事はないですか?
PETや骨シンチなどは行っていません。
今後必要と言われた時には転移しているのでは…ととにかく不安になってしまって…
前回早期と言っていただけたのにMIBの値が高い事で再発しやすいので
はないか、再発率の12%の中はMIBの値が高い人が多いのではないか…
と悪い方向に考えてしまいます。
あと、ERやPgR、HER2は術前と術後は変わりませんか?
主治医に確認すると変わらない。
針生検の結果で術前化学療法もやるの
だからと言われ納得したのですが、不安になってしまって…
とりとめのない文章で、長文になってしまいましたが教えていただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「センチネルリンパ節生検という言葉はなかったのでやっていない」
「前に先生が痛い思いをしたとかで、少し多めにリンパを取ってきて調べると言われて納得」

⇒「痛い思い」とはおそらく…
 センチネルリンパ節生検で陰性だったので、郭清省略したら「リンパ節再発した」というようなことだと推測しますが…
 担当医自身の不手際のせいで(他の)「患者さんの不利益」が起こるとしたら、とても悲しい事です。
「リンパ9個でリンパ浮腫になる事はありますか?」
⇒通常は「リンパ浮腫」などは起こらない筈です。
 ただ、腋窩の操作は「手術精度」によるので私からコメントはできません。
「TCについて確認すると副作用はそれほど変わらない」「それは本当でしょうか?」
⇒全く違います。
 アンスラサイクリンは「吐き気」が中心なのに対し、(TCなど)タキサン系は「全身倦怠感、浮腫み、痺れ」が中心となります。
 どちらが副作用が強いのか?ではなく、そのベクトルが違うのです。
 ECよりTCを勧める理由は(副作用が、どちらが酷いのか?ではなく)「TC>AC」と言う事実からです。
「心臓への副作用はどれくらいの確率であらわれるのでしょうか?」
⇒これは確率ではありません。
 アンスラサイクリンによる心毒性は不可逆的なものであり、生涯投与量が規定されています。(ドキソルビシンで450mg/m2、エピルビシンで800mg/m2)
 その量を超えるとかなりの確率で心毒性が顕著となります。
「また白血病になるリスクもあると見ましたが、そちらもどれくらいの確率なのでしょうか?」
⇒数字にできないくらい「低頻度」です。
「TC4回とFAC4回だとどちらの方が効果がありますか?」
⇒TCです。
 TC>AC4回=FEC6回となります。
「FAC6回までやらないとTC4回と同等の効果が出ないのでしょうか?」
⇒上記をご覧ください。
 FAC6回でもTCが上です。
「そもそもFACでいいのでしょうか?」
⇒TCです。
「FACとFECは違うものですか?」
⇒(同じアンスラサイクリン系ですが)Aはアドリアシン(ドキソルビシン)Eはファルモルビシン(エピルビシン)です。
「もし今回FACを使った場合再発した時にもまた使えるのでしょうか?」
⇒アンスラサイクリンは(上記でコメントしたように)生涯投与量があるので、注意が必要です。
「TCの場合は同じですか?」
⇒T(ドセタキセル)は生涯投与量は無いので、(効いている限り)使えます。
「また、MIBの値が高いと抗がん剤が効きやすいと考えてもいいのでしょうか?」
⇒理屈ではそうですが…
 誰も証明してはいません。
「前回の時に再発率など教えていただきましたが、MIBの値も考慮すると値が高いともう少し再発率が高くなるという事ですか?」
⇒それは、あくまでも可能性です。
 本当に知りたかったらOncotypeDXすべきです。
「MIBの値が高かったので1年で急に大きくなったのでしょうか?」
⇒イメージだけで語る事はできません。
「術後に測定した場合数値は下がることもありますか?それとも上がることのほうが多いのでしょうか?」
⇒無関係です。
 単に(術前は)「サンプリング」であり、(術後の)「病変全体での評価とは異なる」というだけです。
「それまでホルモン剤はのまなくても再発したりしませんか?」
⇒乳癌は、そんなに早期に再発しません。
「抗がん剤との併用はしないほうがいいのでしょうか?」
⇒「してはいけない」という信頼に足るデータなどありません。
「今の時点でもう再発しているという事はないですか?」
⇒ありえません。
「PETや骨シンチなどは行っていません。」
⇒不要です。全く無駄な被爆です。
「ERやPgR、HER2は術前と術後は変わりませんか?」
⇒変わりません。
「針生検の結果で術前化学療法もやるのだから」
⇒これは「誤り」です。
 サブタイプで「術前化がう療法を決める」ことはそもそも誤りです。(トリプルネガティブだから術前抗がん剤を行うとか、HER2陽性だから術前抗がん剤を行うという考え方は誤りです)