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術前化学療法の治験に参加するべきか

[管理番号:5200]
性別:女性
年齢:50歳
いつも、大変勉強させていただいております。
お忙しいこととは思いますが、よろしくお願い致します。
2017/6/(下旬)
 右乳房のしこりを自覚して近所のクリニックにて乳腺エコー検査。
形状および、固さからがんが疑われるとのことで、穿刺細胞診もおこないました。
エコー画像確認でしこり直径1.5~1.6cmでした。
7/(上旬)
 クリニックで結果確認。
陰性。
ただし、エコー画像の見た目がわるいので、総合病院を紹介され、再検査するように言われる。
7/(上旬)
 ○○労災病院受診。
超音波で確認。
念のため針生検をすることにして予約。
7/(中旬)
 針生検。
即座に目視により癌が疑われるとのこと。
エコー画像確認で
1.8cm。
CT撮影。
さらにMRIの撮影が混んでいるとのことで、それができる近くの病院を紹介され、MRIのみそちらで撮影。
7/(中旬)
 ○○センターでMRI撮影。
7/(下旬)
 確定診断。
 ステージⅡA。
浸潤性乳管癌、充実腺管癌>硬癌。
組織学的グレード3。
エストロゲン・プレゲステロンー(0%)。
HER2蛋白過剰発現3+。
HER2遺伝子増幅は引き続き検査中。
Ki-67は50%。
直径2.2~
2.3cm。
さらに、小さな別の影が同じ右乳房にあるので、それについて穿刺細胞診を2日後に行う予定。
7/(下旬)
 小さい影を穿刺細胞診。
体にビニールをあて、場所をマジックで型取りして保存。
針を刺して吸い取ったところ液体のものが吸い取られた。
その中に怪しい細胞があったとのこと。
影は無くなり、エコー画像での確認もできなくなり、その部分を再度採取することは不可能になった。
 治療法
① 手術→化学療法(抗がん剤TCとAC+ハーセプチン)
② 化学療法後(アブラキサン+ハーセプチン)→手術(可能なら温存)
①の場合、全摘。
②の場合、ハーセプチンとアブラキサンを1/3W×4を行って、腫瘍が小さくなるかどうか確認。
ただし、これは「ER陰性HER2陽性乳がんに対するNabpaclitaxel+Transtuzumab併用術前化学療法臨床第Ⅱ相試験」に参加してはどうか。
との提案でした。
この場合、ACを省けるかもしれない可能性があるとのことでした。
そこで、質問です。
 私の希望は先に手術をして、のちに化学療法です。
温存にはこだわりませんが、再建はしたいと考えています。
ただ、治験に応じれば、抗がん剤ACを省けるかもというのは魅力です。
 ①、②いずれにしても治療開始は8月中旬以降になる予定だそうです。
 先生は、①と②のどちらを勧められますか?または、それ以外に最適な方法があれば教えてください。
もう一つ、カドサイラというハーセプ
チンに抗がん薬を結合させた薬があると、HPでみました。
こちらの方が、副作用が軽度なようなので、使えるならと希望したのですが、再発の場合に使用する薬で、今回は保険適応でないので使えないとのことでした。
民間の病院でしたら初回治療からカドサイラを使える病院もあるのでしょうか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
このメール内容を読んで、「質問者が重要なことを誤解している」ことを指摘します。
「この場合、ACを省けるかもしれない可能性があるとのこと」
⇒この表現が(担当医は無意識なのかもしれませんが)質問者を誤解させているようです。
 そもそもNabpaclitaxel(アブラキサン)は術前術後の化学療法としては適切ではない(添付文章を参照)ので治験でなければ使用できないことは事実です。
 ただし、ACを使わない抗HER2療法のレジメンはいくらでもあるので、『治験に参加しなければACをしなくてはならない』という質問者の理解は1000%誤りなのです。
 例 AC抜きの抗HER2療法(非アンスラサイクリンレジメン)
   ①weekPTX+HER
   ②TC+HER
   ③TCH
    これらは、「治験でなくとも」普通に術前術後に行われるレジメンです。
「先生は、①と②のどちらを勧められますか?」
⇒どちらも勧めません。
「または、それ以外に最適な方法があれば教えてください。」
⇒手術して術後は(ご本人が嫌うAC抜きの)抗HER2療法です。
「民間の病院でしたら初回治療からカドサイラを使える病院もあるのでしょうか?」
⇒ありません。
 ただ、「再発と偽って」カドサイラを使用している病院があることは事実です。
(とても勧められません)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

術前化学療法の治験に参加するべきか
性別:女性
年齢:50歳
先日は、お忙しい中色々と教えていただき、ありがとうございました。
先生の回答をいただき、治験への参加の是非をいろいろと考え、ACについても受けた法が良いと考えを変えまして、主治医に手術先行で標準治療を行いたいと申しました。
2017/8/(上旬) 治療方針決定
8/(下旬) 右乳房全摘手術、一次再建予定。
9月下旬より AC + TC + HER
検査結果のうち、新たにわかったのは、下記の通りです。
大きな方の腫瘍と小さな方の病変との距離 1.5cm
HER2遺伝子増幅 11.1
まだまだ分からないことだらけで、正直、これでいいのかどうかも確信が持てません。
今日教えていただきたいのは
HER2遺伝子増幅 11.1 と言う数値は非常に高い数値だと思われますが
どのような意味を持つのでしょうか。
ハーセプチンの投与が4ヶ月先になることが不安です。
これは微小転移などを考えた時デメリットがありますでしょうか。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
またもや、質問者は大きな勘違いをしているようです。
このQandAを隅々まで読めば、私が「目に見ない癌細胞(今回はこれを微小転移と表現していますね?)を先にたたくために術前抗がん剤すべきだ!」などという戯言に反対の立場であることが「すぐに」お解りでしょう。
○術前抗がん剤は「小さくして温存を望む場合のみ」です。
 ♯それ以外の「戯言(見えない癌細胞を先に叩くとか、術前に行えば効く抗癌剤が解るなど)」は全く無視しています。
「HER2遺伝子増幅 11.1 と言う数値は非常に高い数値だと思われますがどのような意味を持つのでしょうか。」
⇒HER2遺伝子のコピー数と抗HER2療法の効き目についての「信頼に足るエビデンス」はありませんが、(イメージとして)「抗HER2療法が期待し易い」ように感じます。
「ハーセプチンの投与が4ヶ月先になることが不安です。これは微小転移などを考えた時デメリットがありますでしょうか。」
⇒冒頭でコメントした通りです。
 私は「術前抗がん剤の(適応の)拡大解釈」には絶対反対の立場です。