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医師主導治験

[管理番号:692]
性別:女性
年齢:33歳
病理診断がHER2:3+
ER-。PGR-でした。
手術するのが先とは思ったのですが、初診した時手術するまで混んでて2ヶ月以上待たなければいけないと言われました。
その間に何か出来る事はないのかと思い先生に相談したところ、術前療法があると言われそれを選択したのですが…その後に私の検査の結果をみた先生がちょうど今医師主導治験の話があると言われ内容を聞いてやってみる価値があると思い申込みをしました。
ところが…私の仕事場の人達が色々調べたり身内の医療関係の人に調べてもらってたらしく先に手術をするべき!と言われたみたいで皆で私の説得に入ってきました。
仕事場の人達も私を心配してくれて色々調べたりしてくれたのはわかりますでも、たいはんが手術が先と言われたみたいでした。
私はセカンドオピニオンもしたことないし、初めて他の人の意見も聞こうと思いました。
今日主治医を訪ねて臨床試験科の人と3人で話したのですが、先生の話を聞けば納得できるのですが…
どうしたらいいのかわかりません。
先生の提案してる事は間違ってないのでしょうか?
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「HER2タイプの術前行う臨床試験」であれば、JBCRG-20(Neo-Peaks)だと推測します。
 この臨床試験では (通常診療で用いることのできる)TCH(ドセタキセル、カルボプラチン、ハーセプチン)に加えて(再発後にしか保険適応ではない)pertuzumabを用います。(更に、T-DM1も用いる可能性も半数にあります)
ここで問題となっているのは
①術前抗がん剤の適応か?
②この臨床試験に入るべきか?
この2点となります。
其々のメリットは全く異なっています。(患者さん側からの視点では)
①術前抗がん剤のメリット
⇒(現時点で温存できない大きさであり)「術前抗がん剤をすることにより」温存を狙う。
②Neo-Peaksのメリット
⇒本来術前後に適応がある薬剤(TCH)に加え、『本来適応ではないpertuzumabや(場合によっては)T-DM1などを補助療法(予防)として使える』ことにあります。
 実際には「再発高リスクの方」では、「(実際に再発した後でしか)使えない薬剤であるpertuzumabやT-DM1」を(補助療法)予防投与することで予後改善する可能性があるのです。
 

回答

「先生の提案してる事は間違ってないのでしょうか?」
⇒この答えは「質問者自身の状況」にあります。
 私は質問者の病状(腫瘍径やリンパ節転移転移の有無)を知らないので、現時点では明確に回答できません。
○質問者の「腫瘍径が大きく、リンパ節転移も数多い」ハイリスクである場合には正しい提案と言えます。
(本来使えない薬剤である)pertuzumabやT-DM1を使用することで、予後改善する可能性が期待できます。
△逆に「十分早期」な場合は「良くない提案」と言えます。
 もともと「通常の化学療法(術前にしろ、術後にしろ)で十分予後良好」なのに、(適応外の)これらの薬剤を投与される事で、「無用な副作用」で苦しめられる可能性があります。
 ♯pertuzumbやT-DM1は補助療法での安全性は確認されていないのです。
 
○周りの人から「手術先行」を勧められているという事実から「腫瘍も小さく、早期」なのでは?と想像しています。
 その場合には「Neo-Peaksには参加しない方がいい」と私は思います。
 手術先行(温存にしろ、全摘にしろ)して術後「ハーセプチンを含んだ化学療法」(いろいろありますが、TC+Hなど)を普通に行えばいいのです。
★私は、このNeo-Peaksの「本当の適応(患者さん目線での)」は『(進行しているので補助療法としてpertuzumabなどを使っておきたい)HER2タイプ』と捉えています。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

お返事ありがとうございました。
しこりの大きさは2センチ弱です。
転移なしです。
手術が先に出来るならば私も手術をしたいと思っています。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 やはり早期(pT1c, pN0)でしたね。
 Neo-Peaksでしか使用できない『pertuzumabやT-DM1』を用いる意味がありません。
 しかも「2センチ弱」であれば、そのまま「手術先行で」温存できます。
 私は「術前化学療法」も「Neo-Peaks」も全くお勧めしません。
○この臨床試験で恩恵を被るのは、ある程度の「ハイリスク」なのです。