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術後の病理検査

[管理番号:4316]
性別:女性
年齢:54歳
乳癌でトリプルネガティブ リンパ節転移ありで(2b)で温存目的で術前抗ガン剤をやりました。
その後、術前の画像診断では、マンモでしこりは消えていて造影MRIも撮りましたが特に問題はありませんでした。
その後手術の範囲の印付けでエコーをやりました。
手術後の先生の話では、抗ガン剤が非常によく効いて画像ではあまり分からなくなっている状態、エコーではその名残りらしいところがごく僅かにその名残見たいところが同定できたので術前抗ガン剤の画像と照らし合わせて手術範囲を決めてその部分を取ったとの事でした。
特に触っても肉眼でも病変はなくあとは顕微鏡で観てあるかどうかとの事でした。
リンパ節はレベル2までとったそうです。
レベル2,3には見えるリンパ節はなく触っても分からないとの事、あまり大きなものはないがレベル1では確認できるリンパ節はあるが、見た目明らかな転移は見つからなかったそうです。
ですのであとは1ヶ月半後の病理検査の結果次第で放射線の範囲を決めるそうです。
もしリンパ節に1個でも転移が残っていたら鎖骨とかルートのリンパ節にも放射線やった方がいいが、もしなければ乳房だけでいいかもしれないとの事でした。
先生からはおそらく乳房だけの放射線治療の可能性がそこそこ高いと言っていただきました。
このような状況ですが、主治医からは特に具体的にccrとは言われていませんがccr と考えてもよろしいのでしょうか?
また通常の腋窩リンパ節のレベル1 はエコーで確認できるのでしょうか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
状況は解りました。
それでは、このようなケースでの重要な大原則について以下に列記します。
①画像上「腫瘍が消失」しても(じゃー、手術は不要ではなく)必ず、もと腫瘍が存在していた部位は切除が必要
②腋窩リンパ節も「画像上消失」していても(じゃー、センチネルリンパ節生検して転移無ければ郭清省略しようか?ではなく)必ず、「化学療法前の画像診断で転移が存在していたと思われる範囲は郭清が必須」
③術後放射線照射の適応も同様であり、(画像上、もしくは病理所見で転移が消失していたとしても)必ず「化学療法前の画像診断での状況で適応を判断すべき」
質問者の主治医は①②は守っているようですが、どうも③についての理解が希薄のようです。
「病理検査の結果次第で放射線の範囲を決める」
⇒ここが誤りです。
 本来は「化学療法前の画像診断でリンパ節転移4個以上転移を疑う」場合には鎖骨上リンパ節も照射野に入れるべきなのです。
 ♯つまり「術前化学療法で(転移が消失しても)適応には考慮しないべき」なのです。
「主治医からは特に具体的にccrとは言われていませんがccr と考えてもよろしいのでしょうか?」
⇒画像所見はそのようです。
 ちなみにcCRとは clinical complete response(臨床的完全寛解=画像上完全寛解)です。
 そして、術後病理で浸潤癌の残存が無い場合(非浸潤癌の残存があっても構わない)pCR:pathological complete response(病理学的完全寛解)と表現します。
「 そして、また通常の腋窩リンパ節のレベル1 はエコーで確認できるのでしょうか?」
⇒その通りです。
 転移が存在してなくても「リンパ節はエコーで確認できる」ものです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
非常に分かりやすくご説明いただきありがとうございます。
放射線の範囲の事については私も少し疑問に感じていたところです。
主治医と相談してみます。
もう一つお尋ねですが、最終的には病理検査で顕微鏡等で診ないと癌細胞が残っているかどうかはわからないとは思いますが、田澤先生ほどのご経験をお持ちであれば、事前の画像診断及び術中の所見で、ある程度病理検査結果(pCR等)のおおよその予想はつくものでしょうか?
緊急性のない質問にもかかわらず続けてのご質問で大変申し訳ございません。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「事前の画像診断及び術中の所見で、ある程度病理検査結果(pCR等)のおおよその予想はつくものでしょうか?」
⇒これは、かなり難しいです。
 ただ、pCRではなくてもnear pCR(Grade 2b)かどうかは検討がつきます。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

いつもお世話になっております。
腋窩リンパ節に関するコラムを読ませていただきました。
エコーで正常なリンパ節か転移性リンパ節かの判断がつくようですが、転移してしまった腋窩リンパ節は術前化学療法後、
エコーで転移が消失したかどうかの判断はある程度つくのでしょうか?
(例えば二層性に戻る等で)
もう一つ質問ですが、ある報告で、「TNBC では薬剤治療後の癌遺残はMRI 等の画像診断でほぼ診断可能 」とありましたが、田澤先生のご経験からもそのような事は言えるのでしょうか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「転移してしまった腋窩リンパ節は術前化学療法後、エコーで転移が消失したかどうかの判断はある程度つくのでしょうか?(例えば二層性に戻る等で)」
⇒ある程度は解ります。
 ただし、主病巣で「pCRとnear pCRが区別できない」ように、「人間の視力には限界が存在」するのです。
 だから必ず郭清は必要なのです。
 ♯ちなみに、このケースで(センチネルリンパ節生検ではなく)「腋窩郭清が必要」な理由は、「転移したリンパ節の化学療法によるダメージ」により「正確なセンチネルリンパ節生検ができない可能性がある」からです。(本来転移しているリンパ節を素通りしてしまうなど)
「TNBC では薬剤治療後の癌遺残は MRI 等の画像診断でほぼ診断可能 」
⇒全く無意味です。
 この手のことに「サブタイプなど無関係」です。
 たんに、画像診断である程度の「識別は可能」だというだけです。