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病理結果について

[管理番号:4876]
性別:女性
年齢:38歳
はじめまして。
乳頭からの出血があり、
乳腺外来を受診し、針生検を実施しました。
そこで、非浸潤性乳管癌と診断されました。
そこの乳腺外来では、手術ができないため、手術のできる病院に紹介していただきました。
紹介先の病院でも、前病院で採取した細胞のプレパラート?を病理に出していただきました。
その結果、今回の検体では、良悪性の判断がつかないとのことで、今度はマンモトームをしました。
マンモトームの結果待ちです。
先生に質問です。
病理医によって、違う結果が出ることはよくあるのでしょうか。
今回いただいた病理報告書を記載いたします。
この報告を見て、先生はどのように思われますか。
良悪性の判断が困難との事ですが、どちらよりだと思われますか。
乳腺針生検検体
2本の検体が採取されており、いずれにも乳腺組織を認める。
一部の拡張乳管や小葉内で上皮が充
実性に増殖する。
上皮の核は繊細なクロマチンを
有し、核異形は弱い。
細胞密度が不均一(辺縁部
〈中央部)で、核に重なりがあったり、流れるような配列を示す。
免疫染色ではCK5/6(-)、
ER(+)、PgR(+)、HER2(細胞膜にわずかに陽性)を示す。
上記とは別に、乳管上皮が線管状に増殖する部位がある。
免疫染色では、p63およびCD10陽性の筋上皮細胞が付随して二相性は保たれている。
コメント
乳管や小葉内で、上皮が充実性に増殖する部分について、良悪性の判断が困難です。
組織像では、
epitheliosisのように見えますが、免疫染色で
CK5/6が陰性である点はモノクローナルな細胞増殖(腫瘍)の可能性を否定できません。
組織像と免疫形質に解離があり、解釈に困難のある所見です。
いずれにせよ、本標本のみで、ductal
carcinoma in situと確定はできず、上記診断にとどめます。
再生検もしくは切除生検をお願いいたします。
癌であることを受け入れ、治療を頑張ろうと思っていたのですが、今回の事で、また1からやり直しのような気がして困惑しています。
もちろん、癌で無かったとしたら、嬉しい事なのですが、また、モヤモヤした期間があると思うと、精神的に疲れてしまって。。
先生のご意見を聞かせていただけると、嬉しいです。
お忙しい中、お手数をお掛け致しますが、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「病理医によって、違う結果が出ることはよくあるのでしょうか。」
⇒「よく」あっては困りますが…
 時々はあります。
「この報告を見て、先生はどのように思われますか。」
「良悪性の判断が困難との事ですが、どちらよりだと思われますか。」

⇒私は(勿論)病理医出は無いので、コメントするのは難しいですが…
 ここに記載してあるように、焦点は『組織像と免疫形質に解離』です。
 組織像は大人しく癌ではない(良性より)ように見えるが、「CK5/6(-)」は(モノクローナル増殖をしている)癌の所見です。
 ☆あくまでも私の印象ですが、
  通常、「組織像が微妙」な際には(癌なのかどうかの館別目的で)「CK5/6」を追加オーダーします。⇒そこで(今回のように)「CK5/6陰性」とでると『免疫組織化学的に癌と証明されました』という最終病理結果となります。
  つまり、「癌の可能性が高い」と思います。
○しかし、病理医から「確定診断できない」とコメントが出た以上「そもそも(バネ式)針生検を2本しか採取していないこともあるし」、今回「マンモトーム生検を追加」したことは「極めて妥当」です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日は質問にご回答いただきまして、ありがとうございました。
マンモトーム生検の結果がきましたので、ご報告させていただきます。
今回も、良悪の識別が困難であるとのことで、Intraductal atypical leison とします。
との報告でした。
主治医は病理の先生とも話たが、
現状では、良悪の識別が困難であるので、予定していた手術は見送りとし、
フォローアップとしますとのことで、2ヶ月後の診察を予約してきました。
私が強く希望するのであれば、手術しますが、現状でおすすめはできません、とのことです。
手術は、全摘を予定していました。
現在は、触診でしこりは感じられず、あいかわらず乳頭からの出血が続いているといった状態です。
マンモでは何も見えず、エコーでもこれといった塊?が確認できるわけでもなく、乳腺が乱れている?不均一である?といった感じです。
先生に質問です。
1.下記の病理の結果については、先生はどのように思われますでしょうか。
2.乳がんの進行(特に初期のもの)はゆっくりなものだという認識がありますが、
今の私の状態から2か月後に診察したからといって何か違いがあるのでしょうか。
とはいえ、半年後にと言われればそれはそれでまた不安なのですが・・・。
3.2ヶ月前には癌とわからなかったものが、2ヶ月後にはっきりと癌であるとわかるようになった場合、
それは、進みが早いタイプの癌の可能性があるのでは、と心配してしまいますが、
考えすぎでしょうか。
4.主治医からすると、まだ癌になるかどうかわからない細胞なので、
経過観察し、癌になるまで待ちましょうといった感じなのでしょうか。
先生であれば、この後はどのように対応しますか。
———————————————————————–
【検体】Right breast
【採取法】needle biopsy
【診断】Intraductal atypical lesion(see findings)
所見
【中間報告】
右乳腺、マンモトーム生検、数片
乳腺実質を含む検体で、一部の乳管に腺上皮細胞の増殖性病変があり、管状、篩状、充実性構造を呈しています。
乳管の増殖性病変です。
免疫組織化学的にさらに検討する予定です。
【最終報告】
免疫組織化学的に検討した結果を記します。
腺上皮細胞の増殖性病変には免疫組織化学的にCK5/6にモザイク状に陽性像を示す領域Aと、概ね陰性の領域Bとを認めます。
領域Aでは、嚢胞壁との連続性が観察されますが、領域Bでは嚢胞壁との連続性が観察されず、間質との関係が不明です。
以下、領域A、B、その他の免疫染色の結果です。
〈領域A〉
CK5/6…陽性の腺上皮細胞がモザイク状に分布している
カルポニン…陽性の筋上皮細胞が基低膜上に連続性に分布している
p63…陽性の筋上皮細胞が基低膜上に連続性に分布している
ER…陽性(約60%、強発現)
PR…陽性(約30%、中発現)
〈領域B〉
CK5/6…陽性の細胞がごく少数散在性に分布している
カルポニン…陽性の筋上皮細胞がごく少数散在性に分布している
p63…陽性の筋上皮細胞ががごく少数散在性に分布している
ER…陽性(約95%、強発現)
PR…陽性(約95%、強発現)
以上と形態学的特徴より、領域Aの腺上皮細胞の増殖性病変は良性病変と考えられますが、
領域Bの腺上皮細胞の増殖性病変については、間質を含まない剥離上皮片であり、良悪の識別が困難です。
よって、針生検標本においては、Intraductal atypical leison とします。
———————————————————————–
お忙しいところお手数をおかけいたしますが、
ご確認いただけると幸いです。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
今回の質問者のメールを読むと、あたかも「境界病変の解釈」となりそうですが、質問者の前回のメールを読み返してみるともっと、「重要で、本質的なこと」に気付きます。
それは
『乳頭からの出血があり』
おそらく、「単孔性の血性分泌」なのでしょう。
そして質問者のメールには、『腫瘍の存在についての記載がない』ことにも気付きました。
針生検なり、マンモトーム生検をしているからには(明らかなシコリは存在しない様ですが)「ターゲットがある筈」です。(ターゲットが無くては針を刺し様がないからです)
 
○以上より、私が解釈すると…
 乳管内病変(少なくとも、エコーで所見が見える程度の大きさのもの)が存在し、そこから(血性)分泌がある
  そういうことです。
それであれば、(そもそも)「癌が否定できない程度の病変がある」ことが解っている「血性分泌を伴う」乳管内病変であれば、『経過観察など、とんでもない』きちんと(乳管造影をして)「乳管腺葉区域切除すべき」です。
「現在は、触診でしこりは感じられず、あいかわらず乳頭からの出血が続いているといった状態」
⇒乳管造影や乳管腺葉区域切除の話は出ないのですか??
 そんな診療レベルでは…
「1.下記の病理の結果については、先生はどのように思われますでしょうか。」
⇒乳管内病変です。
 おそらくatypical papilloma(異型を伴う乳管内乳頭腫)~ductal carcinoma in
situ:DCIS(非浸潤癌) でしょう。
 これは病変全体で評価しないと解らないレベルの話です。
「2.乳がんの進行(特に初期のもの)はゆっくりなものだという認識がありますが、今の私の状態から2か月後に診察したからといって何か違いがあるのでしょうか。」
⇒ありません。
 全く無駄な(経過観察と言う名の)「時間稼ぎ」です。
「2ヶ月前には癌とわからなかったものが、2ヶ月後にはっきりと癌であるとわかるようになった場合」
⇒そもそも…
 そんなことはありえません。
「4.主治医からすると、まだ癌になるかどうかわからない細胞なので、 経過観察し、癌になるまで待ちましょうといった感じなのでしょうか。」
⇒結局…
 分泌を伴う乳管内病変の診断の基本(乳管造影や、それに続く乳管腺葉区域切除)
を知らないから、「それしか、打つ手がない」ということなのでしょう。(このQandAでも、その手の医師は沢山登場します)
「 先生であれば、この後はどのように対応しますか。」
⇒血性分泌が続いているのですから…
 乳管腺葉区域切除します。
 ♯この場合には「乳管内病変(少なくとも異型のある)の存在は100%疑いようがない」ので、(乳管造影は省略して)「乳管腺葉区域切除」しても問題無いのです。