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病理結果

[管理番号:321]
性別:女性
年齢:45歳

今月初旬に乳房部分切除をしました。
術前診断はほぼ非浸潤癌と言われてリンパへの転移はありませんでした。
現在病理診断待ちなのですが、今日抜糸に行くと遺伝子検査HER2を詳しく調べるため結果は連休明けになりますと言われました。
そこでえっと思い聞いたら一部浸潤があります。と言われました。

HER2陽性で+2でもう一度FISH法で調べるらしいのですが、陽性と出た場合どのような治療になるのでしょうか?
抗がん剤とハーセプチンとよく書かれているのを見ますがやはり髪の毛が抜けたり嘔吐したり副作用がきついのでしょうか?
もう頭が混乱してショックで何もする気になれなくなりました。
放射線も気になっていたのですが…これからどのような治療が予測されるのでしょうか?

宜しくお願いします。
(2015年4月の質問)
 

田澤先生からの回答

 おはようございます。田澤です。

 「術前診断では、ほぼ非浸潤癌」だと思っていたら「術後標本で浸潤部分がみつかった」という事だと思います。
 術前診断が(ボーリング調査である)「針生検」である以上、避けられない事ではあります。
それでは回答します。

回答

「HER2陽性で+2でもう一度FISH法で調べるらしいのですが、陽性と出た場合どのような治療になるのでしょうか?」
⇒これは浸潤部分の大きさ(最大浸潤径)によって異なります。
(我々、乳腺外科医が信頼している)NCCNのガイドラインによると
①浸潤径が5mm以下であれば⇒(ハーセプチンを含めた)化学療法は行いません。
②浸潤径が5mm以上であれば⇒(ハーセプチンを含めた)化学療法を行います。
 

「抗がん剤とハーセプチンとよく書かれているのを見ますがやはり髪の毛が抜けたり嘔吐したり副作用がきついのでしょうか?」
⇒HER2陽性乳癌の化学療法の実態ですが、通常行われている化学療法レジメンは以下の2つです。
①FEC(4回)⇒タキサン+ハーセプチン(4回)⇒ハーセプチン単剤(14回)
②TC(4回)⇒ハーセプチン単剤(18回)
※これらは全て3週間に1回のサイクルの点滴です。
 
 つまり、(ハーセプチン以外の)通常の化学療法+ハーセプチンとして(併用も単剤も併せて)18回となります。
 この通常の化学療法の際に副作用が出ます。(ハーセプチン単剤では自覚するような副作用は殆どありません:心機能障害についての定期チェックのみです)
 
①のFEC(4回)とタキサン4回の場合は、計8回(6ヵ月間) ②のTC(4回)の場合は3カ月間 「食欲不振、全身倦怠、脱毛、口内炎、発熱」などの副作用はあります。
※FECやタキサン、TCなどの薬剤についての説明は割愛します。
 
「これからどのような治療が予測されるのでしょうか?」
⇒HER2-FISHが陽性(増幅あり)で、浸潤径も5mm以上である場合となりますが、
 
 質問者の場合はリンパ節転移は無いと思いますので、(低リスクとして)上記②が選択されそうです。
 まずTC(4回)を行い⇒(術後放射線照射)⇒ハーセプチン単剤(18回)となります。
 この場合、最初のTC(4回)の3カ月だけ(上記)副作用がありますが、その後は「放射線もハーセプチンも」大した副作用はありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、先日はご丁寧な回答ありがとうございました。先生のようなドクターがお近くにおられたら・・・・といつも思っています。

昨日、結果が出ました。
切除標本割面径:1.0cm
組織型:乳頭腺菅癌
リンパ節転移:なし
脈菅侵襲:なし
組織学的悪性度:2
エストロゲン受容体:陽性
プロゲステロン受容体:陽性
HER2:疑陽性2+
FISH(ハーセプテスト疑陽性の場合)陰性
Ki67:5-10%
病期:TNM T(1)N(0)M(0) I期

それで治療方法としては放射線治療を25回してからホルモン治療5年となりました。主治医は悪性度はあるけれど比較的おとなしい癌 で進行は遅く抗がん剤は余り効かないタイプだ ということでした。そこで質問なのですが、この治療方法でいいのでしょうか?HER2の疑陽性でFISH法で陰性と出た場合は本来の陰性という事でいいのでしょうか?

お手数ですが、またご意見お聞かせ願えないでしょうか?よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。

 前回「HER2-FISHの結果待ち」という状態であったと思います。
 「FISH陰性」ということ、おめでとうございます。

回答

「放射線治療を25回してからホルモン治療5年」
⇒全く問題ありません。
 しいて言えば(大した違いはありませんが)私であれば、(放射線治療と同時に)ホルモン療法を始めてしましますが…(大した時間差ではありません)
●ホルモン療法と放射線治療は併用しても全く問題はありません。
 
「悪性度はあるけれど比較的おとなしい癌で進行は遅く抗がん剤は余り効かないタイプ」
⇒抗がん剤の必要は全くありません。
 
「悪性度はあるけれど」
⇒核異型度2を言っているのでしょうが(核異型度2は普通です)、「Ki67 5-10%」であれば、必要のない表現です。
 
「HER2の疑陽性でFISH法で陰性と出た場合は本来の陰性という事でいいのでしょうか?」
⇒陰性で間違いありません。
 本来HER2は「FISH法」で判断すべきものです。
 ただ、「全員に行うのは大変なのでHER2 2+の人だけに行う」ようにしているだけです。
 HER2遺伝子の増幅を調べているのは「FISH法」です。
 (免疫染色で)HER2 0でも1+でも2+(FISH陰性)でも、全く区別の必要はありません。
 
 pT1b, pN0, luminal A 大変いい結果です。
 ホルモン療法(タモキシフェン5年)を行ってください。

 
 

 

質問者様から 【質問3 】

管理番号321
性別:女性
年齢:50歳
病名:
症状:
投稿日:2020年6月19日

田澤先生、5年前に質問させて頂いたものです。
ホルモン療法としてタモキシフェンを5年服用しています。
何事もなくやっとこれで終わりと思っていたのですが、主治医から後5年続けた方がいいと言われました。
最近足のむくみがひどいので、と相談したら「ではやめますか?どちらでもいいですよ」と言われました。

続けるのとやめるのではどれだけのリスクの違いがあるのでしょうか?
続けるのであれば子宮体がんのリスクもあると聞いています。
正直主治医はとても聞きにくいタイプで、田澤先生どう思われますか?よろしくお願いします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

321 見返してみましたが…
pT1b=1.0cm, pN0 完璧な早期癌です。私なら「5年で終了ですね」とします。

『続けるのとやめるのではどれだけのリスクの違いがあるのでしょうか?』
⇒殆ど無いでしょう。

 (私見では)ステージ1は5年でいいのでは?と思っています。
 
○再発予防としての治療は「(期待される)効果」と「(それにより起こるかもしれない)有害事象」のバランスで成り立っています。
 ステージが高い人ほど、「前者の比重が増す」ので「後者の比重が減る」ので、10年投与が推奨されるのです。