Site Overlay

石灰化の部位が増える現象は乳がんと関係?

[管理番号:95]
性別:女性
年齢:50歳
2005年に最初に右房に石灰化がみつかり、経過観察で大きくなりませんでしたが、
2015年2月のマンモグラフィー検査と超音波検査で、新たな石灰がみつかりました。
 
乳腺科の先生が、石灰化の画像をみたときの反応は細胞診で良性か悪性が判断しなければならない(良性は95%程度)というものでしたが、同時に石灰化の増加は乳がんの可能性が高いともいわれました。
 
石灰化の増加は乳がんの可能性が高いのでしょうか?
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「乳腺の石灰化」特に私がこだわりをもっている分野です。
 「ステレオガイド下マンモトーム生検のできない施設で、石灰化の診療はすべきではない」石灰化診療の大原則です。
 それでは回答します。

回答

「石灰化の増加は乳がんの可能性が高いのでしょうか?」
⇒(もし、同じ乳管内と考えられるような増え方であれば)可能性は高いです。
 
典型的な乳癌の石灰化(壊死型石灰化)について説明します。
●これを理解するために重要なことは、石灰化を考える前に、「石灰化を起こした癌細胞」を先に想像することです。(癌細胞が原因、石灰化はあくまでも結果なのです)
 

  乳癌は、「乳管=ミルクが通る管」の細胞が癌化することが始まりでです。
        ↓
  「乳管にできた癌細胞」が、その管(乳管)の中で増殖を始めます。
        ↓
  「乳管の中でぎっしり詰まった癌細胞の中で細胞壊死を生じる=この細胞壊死にカルシウムが沈着する」=石灰化の出現
        ↓
  「乳管の中で癌細胞が増殖して癌細胞の範囲が広がると、至る所で細胞壊死=カルシウムの沈着」=石灰化の増加

 
◎これが、「石灰化の増加」=「癌の可能性」を考える理由です。
 
※一方で、「癌が原因でない石灰化」の場合は、そもそも「その組織は(癌の様には活発には)増殖しないので」石灰化も(癌のように、急速には)増加しません。
 

今回の状況

 ただし、今回は2005年から2015年まで「石灰化の増加」に10年もかかっています。
 私の経験では、「癌が原因の石灰化」は2年以内に増加することが殆どです。
 「10年での増加」が「癌の増殖を想像させるか?」と言われると、(マンモグラフィーを見ていないので、何とも言えませんが)やや疑問があります。
◎ひとつ確認が必要なのは、「同じ乳管内と考えられるような増加」なのかどうかです。
 全く別の部位に石灰化が出現しても増加とは言わないのです。
 

参考までに

 「石灰化」は「細胞診」では診断できません。
 ステレオガイド下マンモトーム生検で「確実に」診断すべきものです。
※ ステレオガイド下マンモトーム生検はトップページの「乳癌の検査」の「マンモトーム生検」を参照してください。
ステレオガイド下マンモトーム生検の無い施設で石灰化の診療をすべきでは無いのです。