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アポクリンがん、非浸潤がんの場合

[管理番号:2782]
性別:女性
年齢:56歳
人間ドッグで2月に要精密検査、3月に乳房造影MRI、吸引式組織生検で、先日、非浸潤性乳管がんと診断されました。
< MRI >3/10
高濃度乳房 背景乳腺の増強効果 : minimal
小結節状増強域 : 陰性
1. 右乳腺A領域に限局性non-mass enhancement 18×8×前後8mmを認め、内部はclumped
patternを呈している、DCISないし乳管内病変優位の浸潤癌を疑う所見。
鑑別に良性増殖性変化も考えられるが生検での評価が推奨される。
2. 左乳腺B域にfocus5mmがあり、漸増性に増強される。
線維腺腫など良性変化の疑い。
< 生検 >3/25
診断: Non-invasive ductal carcinoma.
組織所見: 3本のUS-VAB組織片。
組織学的には類円形核と好酸性細胞質を有するアポクリン化生性乳管上皮細胞が篩状、
管状を呈して増殖しています。
ER、PgR、HER2、CK5/6およびp63を染色したところ、浸潤
像は確認できず、apocrine DCISと診断します。
非浸潤部: DCIS; apocrin, cribriform, flat: NG2, calcification-, necrosis-.
免疫組織化学染色の結果、
ER+(1-2%, score 2), PgR+(1-2%, score 2);
HER2 score 3+[DCIS].
1)非浸潤がんに対する乳房温存術の45%で取り残しがあると聞きました。
全乳房切除術+再建の方が安全のように感じますが、先生は非浸潤性乳管がんの場合、
どういった手術をされることが多いのでしょうか?
2)温存手術+放射線後に再発した場合、はじめから全乳房切除術+再建よりも再建が
難しくなるのでしょうか?
3)3-4カ月手術を待っている間に、非浸潤性乳管がんが浸潤がんになる可能性はないのでしょうか?HER2陽性、アポクリンがんということも気になります。
4)乳房が小さめの場合、温存術では変形がかなりありそうでしょうか?
5)先生のところで手術をお願いする場合、いつ頃になりそうでしょうか?
お忙しいところ恐れ入りますが、お教えいただけますと大変幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「1)非浸潤がんに対する乳房温存術の45%で取り残しがあると聞きました。」
⇒どこかの施設のデータでしょうか?
 とても許容できる数字ではありません。
 そのような施設では(少なくとも非浸潤癌では)乳房温存は止めるべきです。
 
「全乳房切除術+再建の方が安全のように感じますが、先生は非浸潤性乳管がんの場合、どういった手術をされることが多いのでしょうか?」
⇒「非浸潤癌」と「浸潤癌」を区別はしません。
 画像上(MRIも含め)限局していれば、普通に「温存手術」を行います。
 
「2)温存手術+放射線後に再発した場合、はじめから全乳房切除術+再建よりも再建が難しくなるのでしょうか?」
⇒放射線照射することにより「皮膚が伸びにくくなる」という問題はあります。
 
「3)3-4カ月手術を待っている間に、非浸潤性乳管がんが浸潤がんになる可能性はないのでしょうか?」
⇒確率的には、かなり低いと思います。
 
「HER2陽性、アポクリンがんということも気になります。」
⇒非浸潤癌で(そもそも)HER2検査の適応はありません。全く無意味な事です。
 アポクリン癌は「大人しい」からむしろ「より安心」だと思います。
 
「4)乳房が小さめの場合、温存術では変形がかなりありそうでしょうか?」
⇒一般論ですが…
 A領域の18mmであれば「変形はあまり目立たない」と思います。
 
「5)先生のところで手術をお願いする場合、いつ頃になりそうでしょうか?」
⇒この場で「いつ頃」とは言えませんが…
 ○4月からの「手術枠増枠 週に8件」としたことで「2カ月待ち」程度に短縮されました。(以前の3カ月待ちの時には正直、お互いにつらい思いをしていました)