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アンスラサイクリン系抗がん剤の選択

[管理番号:960]
性別:女性
年齢:51歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:928「トリプルネガティブの術後化学療法」

 
 
本当にお忙しいのに、親身になってお答えくださって、なんと感謝の気持ちを表したらよいかわかりません。
ありがとうございました。
今朝、病院に行き、田澤先生のおっしゃっておられた、FEC+wPACにすることに決めました。
副作用がきついと聞いているので、耐えられるのかすごく心配で怖いですが、頑張ってみます。
先日の④のタキサンの件ですが、私が聞いた説明では、DOC(ドセタキセル)=タキソテールを4回か、
PAC(パクリタキセル)=タキソールを12回です。
田澤先生のおっしゃる、PTXが、パクリタキセルと同じとは知らずに、別のものだと思って質問してしまいました。
申し訳ありません。
先日の⑨でおっしゃっていたACと、AC療法は同じですか?
それと、FEC6回と、ACではなくEC6回では、やはりFECの方が、私には良いのでしょうか?
核異型度は1で、Ki67は41.6でした。
これは、数値が低ければTCも・・・とおっしゃっていた範囲でしょうか?核異型度は低いですが、Ki67は高いような気がしますが。
どうでしょうか?
先日の⑩のタキテールとタキソテールの件ですが、「運悪く再発したときのことを考えても、タキソテールが勧められる。
先にタキソールを使った場合、再発したときにアバスチンとの併用が難しくなってしまう。」と書いてある先生がおられますが、
どちらを選ぶのかすごく迷ってしまいます。
最強は、パクリタキセル=タキソールと田澤先生もおっしゃっておられましたので、
最強の方がいいと思うのですが、これを読むと心配になります。
お考えを聞かせていただけますか?
アドリアシン=ドキソルビシンと書いてあるのを見ましたが、私のやるアンスラサイクリンの中にもこれが入っていると思うのです。
これは、心毒性の副作用がきついらしく、心配です。心筋障害にならないのでしょうか?
EC療法で腫瘍が小さくなったのに、タキソールを使い出したら突然、腫瘍が大きくなったという報告があるそうです。
タキサン系薬剤はトリプルネガティブに使うことを疑問視と書いてありました。
田澤先生のご意見を聞かせてください。
お恥ずかしい話なのですが、昔、カプセルが気管の方に入ってしまいそうになり、それがトラウマで、カプセルや大きいサイズの薬が今でも
飲めません。
小さいのでもすごく大変なのです。今日、抗がん剤の前には吐き気止めなどでカプセルを飲んでもらうし、これからもたくさんの種類の薬を飲む
ことになると聞かされ、また心配ごとが増えてしまいました。カプセルは噛んでぐにゃぐにゃにしたらなんとか飲めるとは思いますが、
それは時間が計算されているのでダメだとどこかで聞きました。何か良いお知恵はありませんか?
また、質問だらけになってしまいました。
月曜日に病院に行くことになっています。また、無理を言いますが、それまでにご返答くださるとありがたいです。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 pT2, pN0, triple negative(TN)で前回いくつか回答した方ですね。

回答

「先日の⑨でおっしゃっていたACと、AC療法は同じですか?」
⇒この質問意味が不明なのですが…
 ACとはAC療法の事をいいます。(もし、勘違いがあるようなら、再質問してください)
 
「FEC6回と、ACではなくEC6回では、やはりFECの方が、私には良いのでしょうか?」
⇒FEC(100mg/m2)6回=AC(60mg/m2)4回と言う事を前回お話しました。
 
 FEC(100mg/m2)6回とEC(60mg/m2)4回の直接比較はないのですが、以下に示す2つの事実より(連立方程式のように)FEC(100mg/m2)6回=EC(90mg/m2)4回と考えています。
①FEC(100mg/m2)6回=AC(60mg/m2)4回
②CAF(50-60mg/m2)=CEF(90mg/m2)
以上①及び②よりFEC(100mg/m2)6回=EC(90mg/m2)4回
♯ mg/m2の表記は体表面積あたりのアントラサイクリン系薬剤(Aの場合はアドリアマイシン、Eの場合はエピルビシンのこと)の投与量です。
 ただFECは長期間使用されてきたため、エビデンスの蓄積が多い(信頼感が高い)事により、いまだにFECを選択する医師が多いのも事実です。
 私はFECよりもECの方が負担が小さいので「現在はFECは全く行わず、専らECのみ行っております」
 
「核異型度は1で、Ki67は41.6でした。これは、数値が低ければTCも・・・とおっしゃっていた範囲でしょうか?核異型度は低いですが、Ki67は高いような気がしますが。どうでしょうか?」
⇒私が選択するなら「アンスラタキサン」となります。
 「Ki67=41.6%」は特別高くはない数値ですが、低くも無い数値です。
 トリプルネガティブには「アンスラタキサンが標準」だと思っています。
 
「先にタキソールを使った場合、再発したときにアバスチンとの併用が難しくなってしまう」
⇒補助療法時に「再発した時のために残しておく」ような考えは私はしません。
 同じ薬剤でも「補助療法として(相手が限り無く小さい)用いる」ことと、「再発治療として(相手が目に見える位まで大きい)用いる」のでは「その効果の差が歴然」なのです。
 ○補助療法で「出し惜しみ」する必要はありません。
  補助療法にこそ「最善を尽くす」べきです。
 
「心毒性の副作用がきついらしく、心配です。心筋障害にならないのでしょうか?」
⇒心配ありません。
 
 アンスラサイクリン系の「心毒性は容量依存性」です。
 ドキソルビシンは450mg~500mg/m2
ファルモルビシンで800mg~900mg/m2 までは大丈夫です。
 ♯質問者が行う予定であるFEC(100mg/2)x6では600mg/m2しか投与されないので安全量なのです。(心筋障害の可能性がゼロとは言えませんが…)
 
「EC療法で腫瘍が小さくなったのに、タキソールを使い出したら突然、腫瘍が大きくなったという報告があるそう」
⇒「報告がある」と言う程の大げさな事ではありません。
 術前化学療法中に「抗がん剤が効かずに大きくなる」事など珍しくも何ともありません。
 だから私は「術前抗がん剤が確実に効果があるという前提で行うべきではない」といつもコメントしています。
 「術前抗がん剤には腫瘍が大きくなり、手術不能となってしまうリスク」がある事を承知しなくてはならないのです。
 ★話が脱線してしまいました。すみません
 つまり「ECで効いていてPTXで無効」なこともあれば「ECが効かなかったのでPTXに変更したら効いた」みたいに「いくらでもある事」です。
 
「タキサン系薬剤はトリプルネガティブに使うことを疑問視と書いてありました」
⇒誤りです。
 トリプルネガティブには「現時点でターゲットが無い」ので「アンスラタキサンが勧められる」のです。
 少数例の検討などで判断しては誤りなのです。
 
「カプセルや大きいサイズの薬が今でも飲めません。」
⇒これは薬剤師の方が詳しいと思いますが…
 「イメンドカプセル」という「とても重要な吐き気止め」があります。
 これが飲めない場合には「別系統の吐き気止め」を検討することになると思います。
 薬剤師との相談が必要でしょう。