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アメリカでの治療法について

[管理番号:6254]
性別:女性
年齢:54歳
田澤先生
はじめまして。
いつも参考にさせて頂いております。
アメリカ在住20年以上ですが、先日現地で左胸の乳癌と診断されて温存手術を終え、
腫瘍内科の先生に予約を取り待っている所です。
治療方法としては基本のレジメンが決まっているようですが、英語での診察となりますので、もし田澤先生に予めご意見を伺うことが出来れば医療用語も分かりやすいのではないかと思いご相談させて頂いております。
手術後の病理診断は下記の通りです。
INVASIVE DUCTAL CARCINOMA, GRADE 3
Histologic grade: Grade 3
Tubule score: 3
Nuclear score:3
Mitotic score:2
Size of invasive carcinoma:3.8cm
Lymphatic involvement: Present
Axillary lymph node:1/1
Total number of nodes examined(sentinel and non sentinel):1 Sentinel nodes
examined:1 Method of evaluation: H&E stained sections.
Nodes w/metastasis:1
Nodes w/macrometastases (>2mm):1
Nodes w/micrometastases (>0.2mm to 2mm):0 Nodes w/isolated tumor
cells(<0.2mm):0 Size of Largest metastasis :0.9cm Pathologic grade and
stage: G3, pT2,pN1a; stage IIB Special procedure:-ER positive(strong,100%),PR positive(moderate-strong,66%)
HER2 IHC negative(SQ18-29 52)
E-cadherin positive
1度目の手術で断片陽性5mmがあった為、追加切除を行いました。
2度目で取った箇所にも1mm陽性反応がありました。
手術担当の医師によると私の場合は見栄えの為に全摘・再建希望でない限りは全摘する必要はなく、追加で放射線治療を受ける事で再発・生存率は全摘と同等との事でした。
またリンパ節への転移も認められましたが、その部分を取っただけでリンパ郭清の必要はなく術後の治療で再発・生存率は同等になるとの事です。
ホルモン治療が効きやすいタイプですが顔つきの悪い癌である事と、リンパ節への転移があった為、抗がん剤治療は必須になる確率は高いとの見立てです。
(抗がん剤―放射線―ホルモン治療5年)
田澤先生も抗がん剤治療が必要なケースとお考えでしょうか?
全摘しておらずリンパ節郭清もしていない為、抗がん剤治療を受けること自体は仕方ないと考えておりますがそれで十分かどうかも少し心配な所です。
参考までに田澤先生でしたらこの様な場合はどのような治療方法が基本になるとお考えですか?
腫瘍内科で治療が始まる前にMRIや骨シンチの検査が必要となるかはまだ不明です。
大変お忙しい所申し訳ございませんが、今後の治療への診察の前にご意見を伺えましたら幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
注目したのは
1.抗癌剤の適応について
 Ki67の記載が無い事(調べていない?)と、(アメリカでは比較的一般的である)OncotypeDXをしていない(これから腫瘍内科を受診すると、勧められるかもしれませんね?)こと
2.腋窩リンパ節の取り扱について
 センチネルリンパ節を1個だけ取り「macrometastasis(この場合9mm)」となっているが、郭清はせず「術後照射で十分」としていること
  ♯これについては、もともとcN0(画像上、明らかな腋窩リンパ節腫大が無かった)であったため、予め「もしも陽性でも追加郭清はせず、(術後の)放射線照射の方針」となっていたのかもしれませんね。
   実際に「macrometastasisでの腋窩郭清群と腋窩照射群では差が無い」という臨床データもあります。(アメリカの方が郭清省略に積極的という背景もあるのでしょう)
「田澤先生も抗がん剤治療が必要なケースとお考えでしょうか?」
⇒上記1のように…
 そもそもKi67が測定されていないため、判断できません。
 「リンパ節転移があった」とか「グレード3」というのは、本来の「抗癌剤の適応には程遠い」ものです。
「参考までに田澤先生でしたらこの様な場合はどのような治療方法が基本になるとお考えですか?」
⇒私は「局所(リンパ節転移)」と「全身」は明確に分けて考えます。
 局所(リンパ節転移)に関しては「全身療法である抗癌剤をするから、いいや」というのは正しくなく、「局所は局所でかたをつける」べきと思っています。
 私であれば、macrometastasis=腋窩郭清とします。
 全身療法(抗癌剤をすべきか?)は、(郭清するかどうかとは全く無関係に)「抗癌剤が本当に効くのか(上乗せがあるのか?)」で決めます。
 その意味ではKi67が必須であり、(状況が許せば)「OncotypeDXを勧める」立場なのです。