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皆が気になる質問シリーズ -5- ~石灰化 vol2~

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石灰化所見とは、あくまでも「マンモグラフィーの所見」です。
これを「超音波検診」で指摘しようとするから間違いが生じるのです。

「超音波検診」で石灰化を指摘されたAさんが、E病院を受診するまでを好評の「会話形式」で紹介します。
 

Aさん 38歳。働く一児のママです。
B氏  40歳 Aさんのご主人。印刷会社の営業マン。子煩悩です。
C太  8歳男児。 野球が好きな男の子。小学校2年生です。
 

自宅にて

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Aさん
「パパ、明日会社の検診があるんだ。今年から『乳癌検診』もあるよ。」
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B氏
「そうか。じゃあ、明日は遅くなる? 俺は早く帰れるから、C太とご飯食べながら待ってるよ。」
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Aさん
「パパよろしくね。明日は検診だー。今日はお酒控えるぞー」

B氏
「ははは。お酒好きな君には、気の毒な話だね。まあ、その分俺が飲んでおくから、心配するな(笑)」
 
 

翌日 検診センターにて

Aさんは悩んでいます。
「超音波」と「マンモグラフィー」どちらにしようかしら。

係の人に聞くと、「若い方は超音波の方がいいと思いますよ。」

Aさん
「マンモグラフィーは挟むのが痛いっていうし、それなら超音波にします。」

超音波技師さんがAさんの「超音波」をしています。
左側は割と「簡単に終了」したのに、右側を検査し始めたとたんに、「明らかにゆっくりとなり」時々「写真を撮ったり」し始めました。終始無言です。
どきどきしたAさんは「何か、異常あるんですか?」と技師さんに聞きましたが、技師さんからは「私からは何も言えません。後で医師が判断します」の一点張りです。
Aさんは、とても不安になりました。
 
 

その夜 Aさん自宅にて

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Aさん
「ただいまー。お腹減ったわー。パパ、今日何食べたの?」
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B氏
「お帰り‐。ご苦労さん。今日はC太のリクエストでカレーハンバーグにしたよ。凄くおいしかったよ。なー。C太?」
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C太
「うまかったー! 俺の大好きなカレーとハンバーグ。両方一緒だもんな。幸せ‐。」
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Aさん
「あらあら、C太よかったねー。美味しそう。私も食べるね。」

B氏
「OK. ママの分もあるから食べてね。僕の自信作。さあ、召し上がれ。」
 

食後

B氏
「検診どうだった?」

Aさん
「えーとね。乳癌検診は超音波を選んだの。若いうちはマンモグラフィより超音波の方がいいってさ。」

B氏
「そうか。38歳だから、超音波の方がいいのかな?前に乳癌検診はマンモグラフィがいいって、何かに書いてあった気がしたけどな。注1」」

Aさん
「そうなの?マンモグラフィーは痛いんだってさ。結果は来週なんだけど…」

B氏
「どうしたの?何か気になることでもあった?」

Aさん
「超音波検査で、右側で明らかにおかしかったのよ。左に比べて明らかに時間がかかっていたし、写真も何枚も撮ったし…、(しかも検査技師さんは」私からは何も言えません。の一点張りだし。」

B氏
「それは、気になるな。でも来週の結果までは気にしないようにしようよ。」
と、いいながらB氏も心配そうな表情です。

数日後(自宅にて)

Aさん
「パパ。先日の検診結果が送られてきたよ。」

B氏
「何だって?大丈夫だった?」

Aさん
「それが… 『右乳腺、石灰化要精査』となっているの。ショックだなー」

B氏
「そうか。でも、石灰化ってなんだろう。石のことかな? ネットで調べてみよう。」

Aさん
「お願い。私はC太を寝かしつけてくるわ。よろしくね。」
 

B氏はネットで熱心に調べています。
最初、乳癌の可能性があることに、少なからずショックを受けましたが、調べていく内に『E川病院のT医師のブログ』に辿り着きました。
「石灰化はマンモグラフィーの所見であり、超音波の所見ではない」「乳腺に起こる石灰化の90%以上は乳癌と関係のない石灰化」「石灰化はマンモトーム生検の無い施設で診療すべきではない」

(C太を寝かしつけて、リビングに戻ってきた)Aさん
「どうだった?」

B氏(やや誇らしげに)
「大収穫だよ! 大分変ってきた。とにかく石灰化はそれほど珍しい事ではないらしい。それにE川区のE川病院のT医師のブログに詳しく書いてあるよ。ママも読んでみたらいいよ。」

Aさん
「そうね。どれどれ。へーE川区は、それほど遠くはないから、精密検査ここに行ってこようかしら。」

B氏
「それがいいよ。『早期発見に勝る治療なし』と言ってるくらいだから、積極的な診療をしてくれると思うよ。さっそく明日予約したらいいよ。」

Aさん
「そうするね。」
 

翌週、E川病院診察室にて

メディカル江戸川
Aさん
「こんにちは。会社の健康診断で『石灰化』を指摘されました。」
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T医師
「こんにちは。検診は初めてですね。確認ですけど、『超音波で石灰化所見』ですね。マンモグラフィーは、検診時には撮影していないのですね?」
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Aさん
「そうです。検診ではマンモグラフィーは撮影していません。今日ここで撮影したのが生まれて初めてです。痛かったなー。」

T医師(微笑みながら)
「痛かったですか。ご苦労様でした。でも『石灰化はマンモグラフィでしか解らない所見』ですから仕方が無いのです。」

Aさん(少し緊張しながら)
「どうでした? マンモグラフィで異常ありました?石灰化は?」

T医師
「マンモグラフィでは左右に石灰化がパラパラ(瀰漫性)ありますね。確かに右に少し多いけど、この石灰化所見は心配ありません。乳腺症などに伴うものですね。」

Aさん(ほっとしながらも)
「超音波での石灰化所見って、どういう意味なのですか? 先生のブログを見ましたけど、『石灰化はマンモグラフィの所見』って書いてありますよね?」

T医師
「私のブログを見ていただいて光栄です。それでは説明の前に診察させてください。触診と超音波です」
 

触診と超音波を終えて
T医師
「それでは説明します。」
「マンモグラフィーでは(先刻お話ししたように)左右に瀰漫性石灰化があるだけで異常所見はありません。
超音波検査では(検診で指摘されたように)確かに右に乳腺症所見の部分に(石灰化らしき)高エコースポット 注2)がありますが、乳腺症の所見です。
乳腺症は正常乳腺の女性ホルモンによる変化に過ぎず、治療の必要は全くありません。」

Aさん(ほっとしながらも)
「先生はブログでも、石灰化はマンモグラフィーの所見だと、お話ししてますが、それでは『超音波検診での石灰化要精査』って、どういう意味なのですか?」

T医師
「大変いいところをついています。私がもしも、超音波検診をしたならば、絶対に『石灰化要精査』などという(誤った)所見は出しません」
「そもそも『石灰化はマンモグラフィーの所見』であり、超音波検査の用語には(石灰化という所見はそもそも存在せず)『(石灰化を疑った場合には)高エコースポット』という表現を用いることになっています。」

Aさん
「それでは、そもそも今回の超音波検診の結果として『石灰化要精査』とは誤りなのですね。」

T医師
「その通りです。超音波で見るべき所見(腫瘤、嚢胞、乳管拡張)の中に『腫瘤非形成性病変』注3」があります。本来『高エコースポットとは、腫瘤非形成性病変の随伴所見』としての意味はありますが、それ以上の意味はないのです。」
「もう少し詳細しますと、超音波で解るのは『(今回のように)乳腺症に伴う石灰化』もしくは『(線維腺腫に伴う)粗大石灰化』であり、『癌を疑うべき(極小範囲の石灰化』は超音波では解りません。
★癌に伴う石灰化で超音波で解る場合には「腫瘤」もしくは「腫瘤非形成性病変」に伴う石灰化のみです。これは『(高エコースポットを指摘する前に)腫瘤もしくは腫瘤非形成性病変』を指摘すべきなのです。)

Aさん
「つまり、『超音波で(腫瘤もしくは、腫瘤非形成性病変を指摘せずに)石灰化だけの所見』だけをしてきすることは無意味ということですね。」

T医師
「その通りです。つまりAさんのように乳腺症を無駄に要精査とする『誤った検診』と言えます。」

Aさん
「わかりました。納得いく説明ありがとうございます。」

T医師
「今の内容は、結構沢山の方に参考になりますので、ブログの『良くある質問コーナーの石灰化vol.2』に掲載しておきますので、ご主人と家でもう一度確認してください。」

Aさん
「ありがとうございます。そうします。」
 

その日の夜(お腹いっぱいのC太が眠った後)

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B氏
「君が、C太を寝かしつけている間に、ブログ見てみたよ。なるほどねー。確かに『超音波検査でたまたま石灰化らしきものが見えたからって、要精査にしても意味がない』ことが良く解ったよ。」

Aさん
「そうなのよ。エコーとマンモグラフィーの意味をしっかり理解しないと、私みたいに『必要のない不安』を与えるだけなのよね。検診機関もしっかりしてもらわないとね。」

B氏
「そうだね。超音波でみるべきは『腫瘤や腫瘤非形成性病変であって、石灰化は随伴所見に過ぎない』このことを忘れないようにしよう。」

Aさん
「とにもかくにも、異常が無くて良かったわ。ビールでかんぱーい!」

B氏
「おいおい、お酒もほどほどにしないと。今度はγGTPでチェックされてしまうぞ(笑)」
 

これで「石灰化 vol.2」を終わります。
最後に、石灰化の「エコー所見」と「マンモ所見」を対比しながら掲載します。
結構解りにくいところですが、不明な点があれば「QandA」でいつでも質問してください。

江戸川病院 乳腺センター 田澤
 

注1)検診での有用性が証明されているのは実は「マンモグラフィーだけ」です。
超音波検診の有用性は未だ証明されていません(J-STARTという研究で確認中です)
 

注2)石灰化はあくまでも「マンモグラフィーでの用語」です。超音波では「高エコースポット」と表現します。※つまり「超音波ではあくまでも(石灰化らしき)所見」であり、随伴所見に過ぎないのです。
 

注3)トップページの「腫瘤非形成病変」を参照してもらいたいのですが、これは病名ではなく「エコー所見」です。『非浸潤性乳管癌が(壊死型石灰化の増加を伴い)増殖する過程で、未だ腫瘤を形成していない段階』も、「(高エコースポットを伴う)腫瘤非形成性病変」としてエコーでは表現されます。しかし「乳腺症も腫瘤非形成性病変としてエコーでは見える」のでその鑑別は困難であり、「針生検など組織診断が重要」です。
 
 

様々な疾患が「マンモ」と「超音波」で其々どのように見えるのか?

  1. (陳旧性)線維腺腫にできた(粗大な)「石灰化」
    • マンモでは?
      ⇒腫瘤と、その内部に「粗大な(大きな)」石灰化
    • 超音波では?
      ⇒腫瘤と、その内部に「粗大な(大きな)」石灰化

    ※この場合には、マンモと超音波で「ほぼ同じ所見」となります。
     

  2. 乳腺症にできた(微細な)「石灰化」
    • マンモでは?
      ⇒(通常は両側に)広範囲な「微細な」石灰化のみ(勿論腫瘤などの所見はありません)

    •  超音波では?
      ⇒乳腺症所見(乳腺症所見は正常範囲内なので敢えて記載せずに「正常」とする事が多い)
       ※乳腺症にできた石灰化は超音波で見えるのか?
       石灰化の多いタイプ(相当密度が高く、数も無数)であれば、石灰化が指摘できます。
       パラパラとした(密度が低く、数少ない)石灰化ならば、解らないと思います。

     

  3. 癌にできる(微細な)「石灰化」
    これは第1段階「乳管内に癌細胞が発生し、乳管内を増殖(非浸潤性乳管癌の状態)」
    ⇒第2段階(やがて乳管内の癌細胞の一部が壊死を起こし)「非浸潤癌の中に(微細)石灰化がある状態」
    ⇒第3段階(乳管内を増殖しながら、壊死の癌細胞も増加し)「広範に拡がった非浸潤癌の中に石灰化が増加している状態」
    ⇒第4段階(ついに、癌細胞が乳管を破って)「しこりを形成=(浸潤癌である)乳頭腺管癌」と名前が変わります。

    ※癌の場合は、これら4段階に分けて「マンモと超音波の所見」を考えなくてはならないのです。(ここまで来ると、かなり専門的ですが)

    癌の第1段階

    • マンモでは?
      ⇒見えません(所見なし)
    • 超音波では?
      ⇒見えません(所見なし)

    癌の第2段階

    • マンモでは?
      ⇒微細石灰化(集簇)として指摘されます(通常この段階ではカテゴリー3)
    • 超音波では?
      ⇒見えません(マンモを参考にして探しても見えません)

    癌の第3段階

    • マンモでは?
      ⇒微細石灰化(区域性:カテゴリー4、もしくは5)として指摘
    • 超音波では?
      ⇒「腫瘤非形成性病変+石灰化」
       「乳管拡張+石灰化」
       「多発嚢胞+石灰化」
       「多発小腫瘤+石灰化」
        などなど、
       ◎決して「石灰化単独の所見」はありえません。

       「腫瘤非形成性病変」とは、どんな所見か?
        ⇒1.(局所的な)乳管拡張、及び(拡張乳管内の)微小な「腫瘤」所見、
         2.一見ただの多発嚢胞にみえるが(実は乳管内の)「微小な腫瘤の集簇」所見
       (この所見が検診の場でしばしば多発嚢胞:良性と間違われてしまい)後日「ただの嚢胞と言われていたのに、急に大きな癌が発生」となるケースが散見されます。
        ★この場合には「乳管内に」微細石灰化も見えてきますが、「乳腺石灰化のような(石灰化単独の指摘)記載にはなりません」

    癌の第4段階

    • マンモでは?
      ⇒腫瘍がはっきり写ります(微細石灰化を伴う)
    • 超音波では?
      ⇒腫瘍がはっきり写ります(腫瘍内やその周辺に)高エコースポットもはっきりします。