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今週のコラム 21回目 肉芽腫性乳腺炎 「画像上は癌が疑わしい」し、「炎症と言っても、膿もでない」

みなさん。こんにちは。

年度末です。

同じ「末」がついても「年末」とは異なり「年度末」は「変化の時」ですね。

ご転勤やお子さんの入学など。

自分のことだったり、ご家族のことだったりで新生活が始まる方達もいらっしゃるかもしれません。

 

この時期、ドキドキするのが「番組の改編」です。

と、言っても私は今殆どテレビは見ていないので関心は専らFMです。

 

前にも紹介しましたが…

NISSAN 安部礼司 ~ BEYOND THE AVERAGE

安部礼二

昨日の放送で、改めて「4月からseason11(なんと、11年目に入るのです)に入る」ことが告知されました。

「あー、良かった。」今年も乗り切りました。

 

 

 

ワインを飲みながら、このFMを聞いている時。

「今は、これが1週間を支えている」そう感じます。

 

いつか、この番組が終わったら… ものごとに「永遠はない」 解ってはいます。

でも、今は考えずにおきましょう。

 

○ひとつだけ、「新年度」を迎えとても「嬉しいお知らせ」があります。

手術待ちが長くなりご迷惑をおかけしていましたが、4月より手術枠の増加が実現しました。 これで「週に8件」となりました。

ちょうど、2年前「ゼロだった」江戸川病院に赴任してきた私でしたが、僅か2年で「週8件」まで延ばす事ができたのも、皆様のおかげです。

今まで通り執刀は私一人ですので、ご心配なく。

 

 

さて、ここからが本題です。

「肉芽腫性乳腺炎 granulomatous mastitis」聞いたことありますか?

つい先日、典型的な経過(臨床経過及び、他院での誤った診療)を辿った方がいらっしゃいましたので(ご本人に了承を得た上で)紹介します。

この広い日本のどこかでは、今なお「誤った診療」をされて悩んでいる方がいる筈です。

この場が、その様な方達を救う一助になれば、誠に幸いに思います。

 

佐藤A子さん(仮名)40代女性

 

○特に注目して欲しいのは、その「時間的経過の早さ」です。

臨床経過)

★「某大学病院」受診

2016年1月 乳房痛、しこり出現。大学病院でマンモや超音波を施行して「異常無し」

その(僅か1カ月後の)2月。再度「痛みとしこり」を感じたため、再度大学病院を受診

診察した「大学病院の医師達」はざわめく。

これは「癌」です。「癌が疑わしい」

すぐに、「針生検」します。と、その場で「針生検」を施行されています。

 

○A子さんは、ここで怖くなりました。

1月に「検査して異常無」と言われたばかりなのに(その僅か1カ月後に)「癌に間違いない」と言われた訳です。(もしも癌ならば)『自分の癌は、とんでもなく進行が早いことになる。居ても立ってもいられない』

 

★そして「江戸川病院」受診

精神的に参った状態で、その数日後(ご夫婦揃って)江戸川病院を受診されました。

私は、その「急速過ぎる臨床経過」と「画像」から「ある疑い」を持ちました。

『画像は確かに癌でも矛盾しないが、臨床経過が急激すぎる』

むしろ、(臨床経過からは)「急激な経過を辿る乳腺症」ではないか?

そしてA子さんに言いました。

(その時点では某大学病院での針生検の結果が出ていませんでした)

「炎症の可能性が十分あります。そんな急速に進行する乳癌なんて無いので心配しなくて大丈夫。焦らずに、まずは(せっかく行った)大学病院での針生検結果を待ちましょう」

 

幾らか安心した様子でA子さんご夫婦は帰っていきました。

 

★「○研病院」受診

どうやら、親戚からのアドバイスで「それは心配よ。あの有名な○研病院に行くべきよ」ということになり、その数日後「○研病院」を受診したようです。

2月末、○研病院にて

診察するなり、複数の医師が集まってきて「これは癌だ。間違いない。進行している」

(癌だから)「当院へ転院」しなさい。

進行しているから「抗ガン剤投与を先にしましょう」まずはCTで全身をチェックします。

としてCTを撮影して帰宅。

 

★再度「某大学病院」

針生検の結果を聞きに受診します。 ここで自体が急展開します。

数日後、某大学病院を受診したところ、担当医から「針生検では炎症」でした。

ただ、「画像上は癌が疑わしい」し、「炎症と言っても、膿もでない」おかしいなー。

「針生検で、癌の部分がたまたま採れていなかっただけ」の可能性もある。

「まだまだ解りません。癌で無いとは言えません」という。

 

そこでA子さんが「実は、○研病院で診療を行っている」ことを話すと、その大学病院の医師達は、(安心した様に)「それなら安心だ」と、あっさり大学病院での診療は終了したのです。

 

  • ただし、その病理レポートには、しっかりと「肉芽腫性乳腺炎疑い」と記載があるのです。

「臨床経験が豊富な乳腺外科医」であれば、「あー、なるほど肉芽腫性乳腺炎か」それであれば、(急激な)「臨床経過」とも(癌を疑うほどの)「画像所見」とも一致することに納得する筈なのです。

それが、「膿が出ないからおかしい。」「癌でないとは言い切れない」みたいな診断しかできないところが(それらの医師の)悲しいところです。

 

A子さんは「肉芽腫性乳腺炎」と書いてある病理レポートを見て「それなら江戸川病院だわ」と、再度当院を受診することになります。

 

続きは「次回」とします。

 

 

○肉芽腫性乳腺炎が疑われて当院を受診することは「極めて正しい」と思いますが、「もしも癌ならば、このまま○研病院で診療しよう」と思っていたとしたら、少々悲しい事です。「臨床経過などから炎症の可能性も考えずに乳癌と決めつけている様な医師達と一緒にされる」こと自体、私は悲しく感じます。